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義妹と旅する車中泊生活  作者: 桜井正宗
番外編C

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130/132

北海道へ行きたい義妹

春夏冬(あきなし)さん――春夏冬(あきなし) 歩花(あゆか)さん」


 病院の受け付けの待合室。

 歩花の名前を呼ばれ、ついにこの時を迎えた。


 信じられないほど顔を青くする歩花。その手は震え、絶望感しかなかった。



「…………」


「大丈夫だよ、歩花。すぐ終わる」

「で、でもぉ……」


 泣き出しそうなほど涙目になる歩花。

 気持ちはすごくよく分かる。


 だが、しかし乗り越えねばならない――。



 ・

 ・

 ・



 季節は十二月。

 いよいよ気温も本格的に下がり始め、少し吹雪き始めた頃。


 クリスマスも見えてきたような季節。


 突然、歩花は深刻な表情で俺に告白してきた。



「……あのね、お兄ちゃん」

「ん? どうした。なんか暗いぞ」


「歯が痛いの……」


「へ」


「虫歯かも」

「マジか。見せてみ」



 だが、歩花は恥ずかしそうに拒絶。いやいや、見ないと分らんって。


 なんとか説得して、俺は歩花の口を開けさせた。

 まあ、確かに女の子の口の中をジロジロ見るものではないな。だが、大切な義妹の体調管理も兄としての務め。


 それに、歯はとても大切だ。


 ボロボロになってからでは、取り返しがつかない。



「…………わかった」



 ついに、歩花は口をあけた。


 俺は歯をチェックした。


 普通に見ている分は、白くて綺麗な歯だったが――おや。



 奥歯というか、これは“親知らず”だな。

 その部分だけ虫歯が出来ていた。

 よくある症状だな。



「親知らずだね」

「え、親知らず?」


「簡単に言えば奥歯。正式名称は第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)っていうらしい」


 不要な歯だから抜く人が大半だ。という俺も、随分と前に下の親知らずを手術して抜いたっけな。



「抜くしかないな」

「えー…やだよぅ」


「大丈夫だよ。ちゃんと麻酔をしてもらえるし」

「やだやだ! 怖いもん!」


「俺がついていってやる」

「…………むりぃ」


 頭を抱え、とうとう逃げ出す歩花。めっちゃ怖がってるな。

 という俺も死ぬほど怖かったけどな。全身麻酔だったけど。


 あ、そういえば全身麻酔といえば一瞬で眠ってしまったなぁ。妙に気持ち良かったのを憶えている。気づけば一瞬で終わっていたが。



 さてはて、どうしたものかね。



【一週間後】



 なんとか説得して、歩花を歯科医院(デンタルクリニック)に連れていくことに成功した。

 無事に抜けたら、北海道に連れていくと約束したんだ。


 どうやら、歩花は函館(はこだて)だとか、五稜郭(ごりょうかく)を見て回りたいようだ。

 という俺も興味はあったが。



「がんばれ、歩花」

「う、うん…………行ってくるね」




 そして、ついに歩花は乗り越えた。


 三十分後には無事に戻ってきた。



「よ、歩花。生還したな」

「…………」



 ショックを受けているのか、歩花は呆然としていた。ですよね。



「どうだった?」

「地獄だった…………」



 俺は全身麻酔だったから分からなかったけど、普通に抜く場合は、意識がある状態で物理的に抜くようだからな。もちろん、麻酔はするけど。



「ペンチみたいのでグイグイ?」

「……うん。あんなの聞いてないよぅ!! ぐいぐいやられて死ぬかと思った!」


「でも、これでサッパリしたな」


「うん。もう大丈夫だと思う」



 一気に二本いったようだから、もう無事のようだ。幸い、下の方は抜歯の必要はないらし。幸運だったな。




 さて、こうなると約束通り『北海道』へ旅へ行かねばならない。


 冬休みを利用して旅行をしてみようか。



 網走(あばしり)監獄(かんごく)は見てみたいな。

◆短編完

北海道編もいつかやります!

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