[前編] 義妹をホテルへ連れていく話
軽キャンピングカー『インディ272』は定期メンテナンスで、車屋のオータムへ出して使えない。
困ったことに車中泊が困難になってしまった。
家でゆっくりするのも、なんだか時間がもったいない気がしていた。
暇を持て余している歩花は、ソファで生足を晒してゆっくりしていた。退屈そうだ。
「……お兄ちゃん、車中泊したいよぉ」
「すまん、歩花。車はメンテナンスで使えないんだ」
「え~」
むくぅと膨れる歩花。不機嫌な猫のように可愛くてキュンときた。
そうだな、どこかへ行きたいところだ。
俺はスマホでどこか行ける場所がないか探る。そんな間にも歩花は、生足を俺の膝に乗せたり足を絡めてきた。
暇だからってお兄ちゃんを劣情を煽るんじゃありませんっ。
どこか観光地は――いや、車の受け取りもあるから遠征はちとキツいな。
となると……お!
ホテル予約サイト『しゃらん』を発見。そういや、ここは宿を探せるサイトで有名だな。そうだな、たまにはホテルへ行くか!
大学のある教授が“ホテル暮らし”をしているんだよな。
環境が整っているし、掃除はしなくていいから楽だと言っていたっけな。そうだな、たまにはホテルでまったりするのもいいだろう。
「歩花、ホテルなんてどうだ?」
「まさか……ラブホテル!?」
「ちょ!! ふ、普通のホテルだって……」
びっくりした。歩花がまさかラブホテルなんて言い出すなんて。多分、最近ご無沙汰なので行きたいのかもしれないな。
「そっか~。そういえば、市内に結構いいホテルあるよね」
「ああ。この季節だから値段も安いし、10階とか取れれば夜景もキレイだぞ」
「いいねいいね! ホテル行こっか!」
決まりだな。
俺はさっそく『しゃらん』でホテルを探す。
お、すぐに見つかった。
料金も一泊で6,000円で悪くない値段だ。
「このホテルにしよう」
「駅からちょっと遠いね」
「ああ、バスで行こうと思う。歩花、荷造りをしてくれ」
「うん! タブレットとか、ゲームとか持っていくねっ」
「着替えも忘れずにな」
「そうだった!」
歩花はソファから立ち上がって機嫌よく部屋の奥へ。俺も準備を進めよう。
◆
駅前のバス停からホテルへ向かった。
片道10分程度らしい。
しかし、バスの中は混雑しているな。しばらくは立っているしかなさそうだ。
「たまにはバスも悪くないな」
「……うん」
ん、あれ。
歩花の反応が鈍いような気がした。
やっぱりホテルは微妙だったかな? いや、そうでもないはずだ。出かける前はあんな乗り気だったし。
「大丈夫か? 体調悪い?」
「ち、違うよ。えっと……」
なぜか歩花はソワソワしている。
耳が少し赤いようにも見えた。
なぜか呼吸も荒いような。
な、なんだ……なにが起きている?
おかしい。明らかにおかしいと俺は周囲を見渡――え。
歩花の背後に不審なおっさんが立っていた。混みあっているから違和感がなかったが、明らかに動きが怪しい。
視線を下に向けると。
……!
この男、歩花のお尻に触れていやがる! 痴漢じゃないかッ!
一気に怒りが込み上げて、俺はそのおっさんの手を掴んだ。
「やめろッ!」
「くっ……! な、なにを!」
「なにをじゃない。痴漢の現行犯だ! みなさん、コイツ痴漢です!!」
おっさんはその場で複数人に取り押さえられた。
「違う、違うんだ!」
「なにが違うんだよ。馬鹿野郎!」
バスはすぐに停車。
運転手におっさんの痴漢を報告。警察が直ぐに来てくれることになった。
丁度、巡回していたパトカーが直ぐに駆けつけてくれた。歩花が被害を訴え、おっさんはあえなく逮捕。連行されていった。
おっさんは、歩花があまりに可愛かったから痴漢してしまったという。ふざけんな!
「ごめんな、歩花」
「お兄ちゃんは悪くないよ。助けてくれてありがとねっ」
「いや、止められなかった」
「いいよいいよ。歩花ね、電車に乗ってもよくされるし……なんでかなぁ」
「え!?」
「あ、その時は紺ちゃんが助けてくれるから」
マジかよ。歩花ってそんな狙われやすいのかよ。知らなかったな……。
そもそも、歩花は容姿がアイドルを超えているし、細身で巨乳と宝具をお持ちだからなぁ。あと毎度ながらスカートが短い。ジャージでも穿かせればよかったかな。
「とにかく、バスはもういい。ここからなら徒歩で行けるさ」
「うん。乗り物はちょっと怖いな」
歩花は、まだちょっと震えていたし、顔も青かった。
ここは通りも多いけど構うものか。
俺は、歩花をそっと抱きしめた。
「落ち着いたら言ってくれ」
「ありがと、お兄ちゃん」
◆
トラブルがあったものの、ようやくホテルに到着。
歩花も落ち着きを取り戻し、手を繋いでここまで歩いてきた。
チェックインを済ませ、カードキーを受け取った。指定の部屋まで向かう。
幸いにも最上階。ラッキー!
エレベーターで上がって、10階の部屋へ。きっと眺めがいいぞ。
今回、ダブルベッドにしたので歩花と一緒だ。
最初は別々にしようとしたが、歩花がお兄ちゃんと一緒がいいと聞かなかった。ので、俺はダブルベッドを選択。
部屋に入ると、広々とした空間が出迎えてくれた。
「おー、さすがに広いな」
「ベッドでかすぎ~!」
清潔感のある一般的なビジネスホテルだが、なかなかオシャレな内装だな。
40型だろうか、デカいテレビも備え付けられていた。
ミニ冷蔵庫やポッドもあるな。
カーテンを開けると、眺めも最高だった。街並みが見渡せるじゃないか!
「いい部屋を取れたな」
「うん、最高だねっ」
荷物を降ろし、部屋内を探索。
ユニットバスは、なかなか広い。風呂は一人なら十分すぎる。
大体の把握が終わり、ベッドへ。
「ふぅ、落ち着くな」
「ベッドの寝心地良すぎて寝ちゃいそう~」
「ああ、自由にしたらいい。今日はその為に一泊しに来たからね」
「じゃあ、さっそくゲームしよー!」
「いいね。大きなテレビが備え付けられているし、HDMIも使えるようだ」
家から持ってきた歩花のゲーム機がある。
最近『万太郎電鉄』という最新作のゲームにハマっていた。
サイコロを振って“全世界”にある駅を駆け巡る。土地を買ったりして億万長者を目指す、そんなゲームだ。
さっそくテレビに繋げてゲームをはじめる。
三年モードが丁度よく終われて楽だ。
俺、歩花、そしてCOMを一名追加。基本的にCOMをフルボッコしてストレスフリーで楽しむが一番だ。貧乏神の仕様が昔と大きく異なり、鬼畜仕様だからなぁ。
そうして、ゲームを楽しんでいく。




