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義妹と旅する車中泊生活  作者: 桜井正宗
静岡・弁天島編

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119/132

ヤンデレ義妹と旅するえっちな車中泊生活

 熱海城はとても近代的だった。

 地下一階にゲームセンター、一階に売店や足湯。二階以降から資料館となっており、六階で展望台となっていた。

 思った以上に楽しめてビックリだった。


 展望台である天守閣から望む風景は、最高だった。

 これほど熱海市の街と大海原が一望できるとは思わなかった。



「う~ん、青空と青い海……凄いね!」

「そうだな、歩花。こんなに青々している風景が見られるなんて感激だ」


 熱海を眺めていると、紺が俺の腕に絡みついてきた。


「回お兄さんっ」

「こ、紺……」


 ま、まずい……歩花がブチギレ……てない?

 あれ。いつもなら殺す勢いでにらんでくるのに。なんだか王者の風格というか、余裕があった。


 あ、まさか。


 昨晩大人の階段をのぼったからかな。

 思い出してきたら、ちょっと興奮してきた……。いかん、こんなところで。



「おかしいですね」

「ん?」

「歩花ちゃんに覇気がないというか」

「あ、ああ……そういう日もあるのかもな」

「へえ~。じゃ、あたしが回お兄さんを独り占めしても問題ないんですね!?」

「それはどうかな~」



 正直、紺からこう求められるのは嬉しかった。けど、もう決着はついてしまった。俺の気持ちを紺にも伝えねばならないかもしれない。

 いつまでも曖昧な態度はよろしくない。


 そうだな……せめて地元の相模原に到着してからにしておくか。

 これがせめてもの優しさか。



 ◆



 熱海城を満喫すること二時間。

 十分すぎるほどに歩き回った。これで熱海観光は終了となった。


「アルフレッドさん、いよいよ相模原へ向かいます」

「分かりました、回様。こちらはいつも通りついていきます」

「お願いします」


 俺と歩花は軽キャンピングカーへ向かう。

 運転席に乗り込み、歩花も助手席へ。すると、いきなり歩花は俺の方へ体を寄せ、対面座位の体勢で抱きついてきた。


 ……こ、これは!


「お兄ちゃん……」

「ちょ、ちょ。歩花、腰……振ってる」

「だって我慢できないんだもん」


 か、可愛い。なんて可愛いんだ。

 だがもう直ぐ出発しないと。


「夜まで我慢するんだ。ちゃんと可愛がってあげるから」

「でもぉ……」

「じゃあ、キスだけ」


 俺からキスをして歩花の唇を奪った。

 柔らかくて、甘くて、愛を感じた。

 ずっとこうしていたい。けれど、紺たちを待たせるわけにはいかない。自然と離れた。


「続きはまた夜ね」

「もちろんだよ、歩花」



 車を走らせ、帰路を目指す。

 熱海城から相模原は約一時間半とナビで表示された。



 熱海ビーチラインを走り続け、気づけば『海老名』まで来ていた。


 もう“神奈川県”に入ってしまった。

 ここまであっと言う間だったな。


 ほぼ休むことなく一直線。

 ここまで来たら、どこかへ寄っていく必要もない。歩花と思い出話に話を咲かせながら、どんどん進む。



「今頃、安曇野さんや飛騨さんは何をやっているのかな」



 歩花が少し懐かしいような、心配するような表情で言った。



「二人とも元気だよ。連絡先交換してるし、SNSに写真投稿とかしてるしさ」

「あ、そうだった!」


 そう、今の時代ならネットで繋がっている。いつでもどこまで連絡が取り合え、SNSで近況が分かるのだ。良い時代になったものだ。

 だから寂しくなんてない。


 またきっといつか……会える。いや、会いに行く。

 今年の冬に。



 ◆ ◆ ◆



 相模原駅。

 その付近にある一軒家。そこが俺と歩花の家だ。

 両親はそろそろ海外旅行から帰ってくる頃合いだろうか。そや、ドバイへ行ったっきりだったかな。連絡もロクに取っていなかった。


 家の駐車場にインディを止め、車から降りた。


 家の前には紺とアルフレッドさんのX-VAN。ずっと紺のバイクを乗せてここまで来た。そうだ、思えば紺は前半までバイクで移動していたんだ。俺たちに追いつき、けれど途中で断念してX-VANにトランポしたんだ。


 そして、最後まで一緒に旅を共にしてくれた。



「お疲れ様です、回お兄さん」

「ああ、紺。お疲れ。ここまでがんばったな」

「できればバイクで一周したかったです。でも、やっぱり125ccでは限界がありますね」


 寂しそうにハンタークロスカブを見つめる紺。


「いやいや、凄かったよ。女子高生では普通は出来ないからね」


 そもそも、AT小型限定普通二輪免許を持っている時点で十分に凄いのだ。お金も手間も掛かるが、紺の場合は一発試験で取ったようだ。才能ありすぎ。



「今度は冬でリベンジします!」

「おいおい、冬のバイクは超危険だぞ。すっげー滑るし。でも、シグナス(125cc)で積雪の長野を走行していた動画を見たことあるけどな」


「バイクは難しいですかね。あ、でも来年は普通免許を取れますし!」


 そういえば、もう高校三年生になるわけか。歩花もな。

 となれば免許を取ってよい時期となる。高校生で免許を取り、そのまま就職する人もいるからな。


「まあ、冬は俺のキャンピングカーに乗ればいいさ」

「え、いいんですか!?」

「北海道にするかもしれないし」

「おー! この前のあたしの意見ですね。汲んでくれるんですねっ」

「もちろんだよ。検討しておく」

「お願いします! じゃあ、あたしは帰りますね」

「おう」



 その前に紺は、歩花の前に。



「歩花ちゃん。夏休みの旅……すっごく楽しかった。ちょっとギスギスすることもあったけど……でもね。大切な夏の思い出になったよ。ありがとう」


「うん、紺ちゃん。わたしもこんなにワクワクしたの初めて。また一緒にどこかへ行こうね」



 二人とも手を繋ぎ、そして抱き合っていた。

 なんだかんだありながらも、二人の友情は固いようだ。



 紺とアルフレッドさんは家へ帰った。



 俺たちも家へ。

 玄関の前に立ち、俺と歩花は同時に言った。



「「ただいま」」



 到着。

 これが本当に旅の終わり。


 長い長い夏休みの旅。軽キャンピングカー『インディ272』で長野、岐阜、静岡と巡った長い旅。

 出会いと別れ。そして、俺と歩花のこれから。


 この旅で学んだことも多い。

 課題も多く感じた。


 これが終わりではない。


 そう、まだ俺たちの旅は始まったばかり。


 ……なんて、打ち切り漫画みたいな終わり方はしないぜ。



「「おかえりなさい。回、歩花」」



 玄関が開くと、親父と母さんが立っていた。もうドバイから帰っていたんだな。



「二人とも!」

「久しぶりだな、回。おぉ、たくましくなったな! 歩花とラブラブのようだし、なにかあったんか?」



 歩花は俺の腕に絡みついていた。ので、ただならぬ関係を親父は悟ったらしい。顔を赤くする歩花は、俺から素早く離れた。



「ち、違うもん。お義父さんの……ばかっ!」



 ぷんすか怒って歩花は奥へと消えた。



「も~、お父さんってば歩花ちゃん、難しい年頃なのよ」

「すまんすまん、母さん! でもな、回が成長したと思わんか?」

「そうね。数週間前に比べてたくましくなったかも」



 二人は俺をジロジロ見てくる。

 なんだよ、俺はそんなに変わってねぇぞ。少し日焼けしたくらいだ。



「そんな見るなって。それより、親父。話がある」

「あん?」



 玄関の外へ呼びだし、俺はこれまでの旅の事を話した。



「――というわけで宝くじで当たった。あと婆ちゃんにも挨拶したし、歩花と付き合うことにした」


「…………」



 親父は唖然としていた。いや、脳の処理が追い付いていないようで思考停止していた。そうだよな、こんな話、信じられないよな。



「全部本当だ」

「そうか。まあ、お前の人生だ。お前が決めろ」

「いいのか。ちなみに、宝くじの分け前は渡さんぞ」

「いらんいらん。その金はお前と歩花で使えばいい。あ、でも少しくらい親孝行しろよ」

「分かってる。あとでちまちま渡すよ。大胆に渡すと贈与税が掛かるからな」

「お、分かっているじゃないか、回」



 親父は、俺と歩花の関係も認めてくれた。

 きっとそうなるだろうと予想もしていたようだ。義理の関係なのだから、結婚も別に問題ないとしてくれた。いいのかよ。ありがたいけど!



 部屋に戻ると歩花の姿がなかった。

 あれ、どこへ。


 そこら中探してもいなかった。

 もしかして……。



 インディ272へ向かうと、明かりがついていた。やっぱり中にいた。



「歩花」

「お兄ちゃん」


「寂しいよな」

「うん。もう夏終わっちゃうね」

「そうだな。でも思い出は常に心の中にある。これからも作り続ける」

「……だ、だからね。お兄ちゃん」


「ん?」


「また思い出……作ろ。今度は……赤ちゃんできちゃってもいいから……」

「ちょ、歩花!」

「お兄ちゃんの子供欲しい……」


「まだ早いって。今は愛し合うだけでいいだろ」

「でも~」



 もうダメだ。歩花にここまで求められると……俺は我慢できない。

 責任取るしかないよな!




【三年後 - Three years later】



 四国一周の旅を終えた頃……春夏冬(あきなし) (あき)が誕生した。可愛い女の子だ。

 今度は我が子を連れて全国一周、車中泊の旅だ――!



- 完 -

◆ありがとうございました!

『ヤンデレ義妹と旅するえっちな車中泊生活』を応援していただき、本当にありがとうございました。

 二年以上に及ぶ超大作となりましたが、これにて無事に『完結』とさせていただきます! 寂しくもありますが、どうしても放置だけは避けたかったので、多少強引でも終わりまで進めました。

 文字数にして二十六万文字にもなり、ラノベ約3巻分相当となりました。ここまで続けられたのは皆さまの応援のおかげです。


◆今後について

①不定期になりますが『番外編』をいくつか予定しています!

②北海道編もいつかやりたいです


気長にお待ち下さいw

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