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c9 イタイケな少女


翌日。いつもより早くピーナツバターを塗る私。

「学校は行く」

お母さんは着替えながら、私の言葉を耳に入れる。

「好きにしていいのよ」

そう言って気まずそうに、そしてプンスカと頭から何かが噴き出しながら玄関へ向かった。

昨日の事、怒ったままのようだ。

オンナって面倒な生き物だね。


【chapter.09 イタイケな少女】


その日は、通学路にモリランドロップはいなかった。言わば好都合だった。そのおかげで学校には行ける。

学校に行って、そうしたら放課後ヘンタイウン公園に行けば会える。

そんな気がしていたので、時間を巻き戻して放課後。部活はまたサボって、私は公園へ向かった。


「おはよう」

「夕方だよ」

「なんでシャボン玉?」

モリランドロップは魚の形をした銃のおもちゃを持っていた。

引き金を引くと、シャボン玉が連発されるシロモノだ。

「イタイケな少女を演じてた」

「イタイケ?」

「ミヨリカメみたいな可愛い女の子のこと」

「へぇ」

シャボン液をお魚の口に突っ込み、引き金を引き、それを私の顔に撃ち込んでくるモリランドロップ。パチパチ、と顔面で弾ける。

人生初かも。シャボン玉が弾けるのを顔で感じたのは。

「私もやりたい」

「ミヨリカメって怒らないの」

「なんで?」

「顔にシャボン玉されたら嫌じゃないの」

「嫌じゃないよ」

今度は私が魚の口にシャボン液を突っ込み、引き金を引いて、モリランドロップの顔に撃ち込んだ。

「ほんとだ」

「不思議な感じだよね」

私は自分で自分にシャボン玉を撃ってみた。


「今日はどんな1日だったの」


「誰かの鞄が水浸しになってた」

「なにそれ」

「いじめ」

「酷いね」

「レベル低すぎ」

「私、学校行ったらイジメられるかな」

モリランドロップの不登校の理由のひとつが出てきた。

「大丈夫」

「そうかな」

「うん。可愛いもん」

「可愛いと虐められないの?」

「そうでも無いかも」

可愛いのに性格が悪くてハブられてたモブ美の事を思い出した。

「大丈夫じゃないじゃん」

「大丈夫な可愛さだよモリランドロップは」

「なにそれ」

「私が守るから」

「強いの?」

「そういう強さじゃないけど」

「ふぅん」

「モリランドロップ、学校いってみない?」

「やっぱり怖い」

「きっと楽しいよ 学校」

「怖いよ」

「ミヨリカメ、言ってる事違う」

「え?」

「学校は退屈って前に」

「そうだね」

そこで少し間が空いた。

「ごめん。やっぱ学校つまんない。でも」

「でも?」


「モリランドロップがいたら楽しいかも」


カシュ、カシュ、と引き金を引く音だけが響いた。しゃぼんが飛んで、弾けて消える。


「毎日、行こうとして失敗する」

「だから、一緒に行こーよ」

「不登校児みたいだから嫌」

「うーん」

「でも学校行けたら一緒にいて欲しい」

「クラス違うよ」

「授業時間は大丈夫」

「いいよ。ついでにバド部入ってよ」

「学校行けたら考える」

「そだね」

「私、ちょっと頑張ってみる」

「それなら毎日ギリギリまで校門で待ってる」

「ほんと?」

「うん」



それから毎日。


私はお父さんよりも早く家を出て、早く登校した。

校門の前に立って、みんなに指差されたりしても、授業開始のチャイムが鳴るまではずっと待っていた。

結局そのせいで毎朝遅刻扱いになってたけど、どうせ、私ってそんなもんだし。


最初の方は、その日の放課後にヘンタイウン公園でモリランドロップと会って話をしていたけど、私は学校の事は喋らなかった。


それから何日も私は待った。

途中から、わざと公園に行かない事にして、モリンドロップに会うことをやめてみた。

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