c11 約束
あくる日もあくる日も、モリランドロップは現れなかった。
雨の降った日は傘をさして、塾の勧誘が校門前に現れてもそれを無視して、私は校門でモリランドロップが来るのを待った。
ずっと待った。
それでも来なくて、彼女には会わないようにしてたけど、結局寂しくなって公園に来た。いた。
「久しぶり」
「最近どうして来ないの」
「部活が忙しくて、大会近いし」
「そ」
会話が4回で終わってしまった。
ぎこちない。
どうして・・・ちょっと会わないだけで、こんな感じになっちゃうの?いや、モリランドロップは怒っているんだ。
「もしかして怒ってる」
「何が」
「公園来ない事」
「別に」
「絶対怒ってるじゃん」
「まぁそうかな。性格悪いよ」
「そんな言い方ないんじゃ」
「私、毎日ここに来てるんだよ」
「へぇ」
「驚いてよ普通」
「ってかモリランドロップが学校来ればいいじゃん」
「簡単にいけるなら苦労しない」
「私だって毎日朝早くから校門で待ってるんだよ?」
「へぇ」
「なによそれ。モリランドロップの事全然わかんない。秘密が多い」
「言いたく無い事だってある」
「この前たまたま見かけたの。そしたらお父さんと歩いてるじゃん、モリランドロップ。なんでお父さん死んだとか嘘ついたの?」
「あれは違う」
「お父さんじゃ無いの?」
「うん」
「じゃあ誰」
「ロリコン」
「は?」
「ミヨリカメごめん、私前にモデルやってるってあれは半分嘘」
「え?」
「本当は水着着て、近距離でロリコンに写真撮られてるだけ」
「へぇ」
「たぶんミヨリカメには分からないし、無縁の世界」
「水着?グラビアアイドルってこと?」
「ジュニアアイドル」
「へぇ」
「驚かないの?引かないの?」
「なんでモリランドロップに引かなきゃいけないの」
「え?」
「キモいのはロリコンでしょ」
「うん」
私はお父さんにニヤニヤされるだけでも嫌なのに、モリランドロップは水着着て、ロリコン達にパシャパシャ写真を撮られてるって事か。
私には絶対無理。
「なーんだ、言ってよ」
「言えないよ」
「モリランドロップ。胸ないもんね」
「ロリコンは私の股間ばっかり写真撮るの」
「へぇ。みんなおっぱい撮ると思ってた」
「ほんとロリコンキモい」
そっか。
あの日、この公園に現れた変態の股間を蹴ったのは、全国のロリコンに対する憎しみだったのか。
「モリランドロップ凄いね」
「何が」
「仕事してるから」
「やらされてるだけ」
「写真見せてよ股間の」
「殴るよ」
「じゃあ私の見せようか?」
「興味アンド価値なし」
「傷ついた」
「ねぇ、ミヨリカメ」
「なに」
「明日頑張ってみる」
「学校?」
「うん」
「待ってる」
「うん」
「明日じゃなくても」
「明日にする。なんかミヨリカメに言えて吹っ切れた」
「そう」
「え、今いい所だったのに」
「そうなの」
「うん」
「お腹すいた」
「枯葉食べよ」
「おかし食べたい」
「じゃあ明日駄菓子屋よってこ」
「そうする」
「じゃ、明日ね」
「うん」
私は信じた。
そういう言葉は交わさなかったけど、明日、モリランドロップは来ると思う。
【chapter.11 約束】