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附子

作者: Twilight

狂言「附子ぶす


・人物

あるじ

太郎冠者たろうかじゃ

次郎冠者じろうかじゃ


・あらすじ

ある家の主が、「附子という猛毒が入っている桶には近づくな」と使用人である太郎冠者たろうかじゃ次郎冠者じろうかじゃに言いつけて外出する。留守番を言い付かった太郎冠者と次郎冠者は、附子のことが気になって……。


主「これはこの辺りに住まひ致す者でござる。某、ちと所要あって、山一つあなたへ参らうと存ずる。まづ両人の者を呼び出だし、留守の程を申しつけうと存ずる。ヤイヤイ両人の者、居るかやい」


太郎冠者・次郎冠者「ハアーッ。」


主「ゐたか」


太郎冠者「両人の者、


太郎冠者・次郎冠者「お前に居りまする」


主「念なう早かった。汝らを呼び出だすは別なることでもない。某、ちと所要あって、山一つあなたへ行くほどに、汝らよう留守をせい」


太郎「イヤ、私、お供に参りませうほどに、 次郎冠者をお留守におかれませ」


次郎 「イヤイヤ、私、お供に参りませうほどに、太郎冠者をお留守におかれませ」


主「イヤイヤ、今日は思ふ子細あって両人とも供はいらぬ。しばらくそれに待て。」


太郎次郎「畏まってござる」


主(舞台後方から葛桶かずらおけを持って出て、舞台前方に置く) 「ヤイヤイ、これは附子ぢゃほどに、念を入れてよう番をせい。」


太郎「その儀でござれば両人とも、ナア、


次郎「オウ、


太郎次郎「お供に参りませう。」


主「それはまたなぜに。」


太郎「ハテ、あの者がお留守を致せば、ほかにお留守は、ナア、


次郎「オウ、


太郎次郎「いりまするまい。」


主「それは汝らの聞きやうが悪しい。彼らに言ひ付くるは留守、これはまた附子というて、 向かうから吹く風に当たってさへ、たちまち滅却するほどの太の毒ちゃなどに、さう心得てよう番をせい。」


太郎「その儀でござれば畏まってござる。」


次郎(主を)「ちと御不審を申し上げまする。」


主「何ごとぢゃ。」


次郎「向かうから吹く風に当たってさへ滅却するほどの大の毒を、頼うだお方には何としてお取り扱ひなされまするぞ。」


太郎(次郎冠者に)「よい御不審を申し上げた。」


次郎(太郎冠者に)「その通りぢゃ。」


主「不審尤もぢゃ。これを主を思ふ物で、その主が持て扱へば苦しうない。また汝らがそっとでも寄ったならば、必ず破却するほどに、さう心得てよう番をせい。」


太郎「その儀でござれば、


太郎次郎「畏まってござる。」


主「身共はもはや行くであらう。」


太郎次郎「まうお出でなされまするか。」


主「留守の程を頼むぞ。」


太郎「留守の程はそっともお気遣ひなされずに、御ゆるりと、


太郎次郎「頼むぞ頼むぞ (橋がかりへ行き、狂言座に座る)」


太郎(主を見送りながら) 「イヤ申し、頼うだお方。 」


次郎(同じく)「頼うだ人。」


太郎「ホ、とっとと行かせられた。」


次郎「まことに、とっとと行かせられた。」


太郎「まづ、下におゐやれ。」


次郎「心得た。」


太郎次郎「エイエイ、ヤットナ。(両人、大小前に座る)」


太郎「さて、最前両人ともお供に参らうと言うたは偽り、まことは、このやうにお内にゐてお留守をするほど楽なことはないぞ、な。」


次郎「おしゃる通り、このやうな気楽なことはおりない。」


太郎(急に立ち上がって橋がかりへ逃げながら)ちゃっと避け、ちゃっと退け 」


次郎(あとを追いながら「何とした、何とした。」


太郎「今、附子の方から、ひいやりとした風が吹いた。」


次郎「それ気味のようないことぢゃ、」


太郎「ちと間を隔ててみよう。」


次郎「それがよからう。」


太郎「この辺りがよからう。」


次郎「心得た。(両人、再び本舞台にはいり、地謡座寄りに座る)」


太郎次郎「エイエイ、ヤットナ。」


次郎「さて、最前身共が申し上ぐる通り、いかに主を思ふ物でも、向かうから吹く風に当たってさへ滅却するほどの大の毒を頼うだお方には何としてお取り扱ひなさるることぢゃ知らぬ。」


太郎 「おしゃる通り、何とも合点の行かぬことぢゃ。」


次郎(これもまた急に立ち上がって橋がかりへ逃げながら) 「ちゃっと退け、ちゃっと退け。」


太郎(あとを追いながら「何とした、何とした。」


次郎「今また附子の方から、なま暖かい風が吹いた。」


太郎「さてさて、それは気味のようないことちゃ。さて身共が思ふには、あの附子をそと見うと思ふが何とあらうぞ。」


次郎「イヤここな者が。向かうから吹く風に当たってさへ滅却するほどの大の毒を何として見らるるものか。」


太郎「向かうから吹く風を、この方から扇ぎ返いて、その隙にそと見うではないか。」


次郎 「それは一段とよからう。」


太郎 「それならば我御料わごりよ精を出いて扇いでおくりゃれ。」


次郎「心得た。」


太郎「扇げ扇げ。(扇を使いながら葛桶に近づく)」


次郎 「扇ぐ扇ぐぞ。(あとに続きながらあおぐ)」


太郎「扇げ扇げ。」


次郎「扇ぐ扇ぐぞ。」


太郎(葛桶のそばへ寄ったところで) 「イヤなうなう、今紐を解くほどに、精を出て扇いでおくりゃれ」


次郎「心得た心得た。」


太郎 「扇げ扇げ。」


次郎「扇ぐ扇ぐぞ。」


太郎(葛桶のそばへ寄ったところで)「イヤなうなう、今紐を解くほどに、精を出いて扇いでおくりゃれ。」


次郎「心得た心得た。」


太郎 「扇げ扇げ。」


次郎「扇ぐ扇ぐぞ。(幾度も繰り返す。 だんだん調子を速める。そのうち太郎冠者、ひもを解いて)」


太郎「ちゃっと退け、ちゃっと退け」


次郎 「何とした、何とした。(両人、逃げて橋がかりへ行く)」


太郎「まんまと紐を解いた。そなた行て蓋を取って来ておくりゃれ。(以下のセリフの間も、両人とも無意識のうちに扇を使っている)」


次郎「ついでちゃ、我御料行て取って来ておくりゃれ。」


太郎 「イヤイヤ、このやうなことは代はる代はるがよい。是非ともそなた行て取って来ておくりゃれ。」


次郎 「それならば身共が行て取って来うほどに、我御料わごりよ精を出いて扇いでおくりゃれ。」


太郎「心得た。」


次郎「扇げ扇げ。(先ほどの太郎冠者と同様、 あおぎながら葛桶に近づく)」


太郎 「扇ぐぞ扇ぐぞ。(あとに続きながらあおぐ)」


次郎「扇げ扇げ。」


太郎 「扇ぐぞ扇ぐぞ。」


次郎(葛桶のそばへ寄ったところで) 「イヤならなら、今、蓋を取るほどに精を出いて扇いでおくりゃれ。」


太郎 「心得た心得た。」


次郎「扇げ扇げ。」


太郎 「扇ぐぞ扇ぐぞ。(幾度も繰り返す。 調子が速くなること前と同様) 」


次郎(ふたをとり) 「ちゃっと退け、ちゃっと退け。」


太郎「何とした、何とした。(両人、また橋がかりへ逃げる)」


次郎 「まんまと蓋を取った。(以下、両人とも無意識のうちに扇を使うこと、前と同様)」


太郎「それで落ち着いた。」


次郎「落ち着いたとは。」


太郎「生き物ならばとって出うが、まづは生き物ではないと見えた。」


次郎 「だますかも知れぬ。」


太郎「恐物こはものながら見届けて参らう。」


次郎 「それがよからう。」


大郎「また精を出いて扇いでおくりゃれ。」


次郎「心得た。」


太郎 「扇げ扇げ。(以下の動きは前二回と同様)」


次郎 「扇ぐ扇ぐぞ。」


太郎「扇げ扇げ。」


次郎 「扇ぐぞ扇ぐぞ。」


太郎「イヤなうなう、今中を見るほどに、精を出いて扇いでおくりゃれ。」


次郎 「心得た心得た。」


太郎 「扇げ扇げ。」


次郎 「扇ぐぞ扇ぐぞ」


太郎「扇げ扇げ。」


次郎 「扇ぐぞ扇ぐぞ。」


太郎(葛桶の中をのぞいて) 「ちゃっと退け、ちゃっと退け。」


次郎「何とした、何とした。(両人、また橋がかりへ逃げる)」


太郎「まづは黒うどんみりとして、うまさうな物ぢゃ。」


次郎 「何ぢゃ、うまさうな物ぢゃ。」


太郎「なかなか。」


次郎「それならば身共も見て来うほどに、また精を出いて蹴いでおくりゃれ。」


太郎「心得た。」


次郎「扇げ扇げ」


太郎 「扇ぐ扇ぐぞ」


次郎「扇げ扇げ。」


太郎 「扇ぐ扇ぐぞ。」


次郎(葛桶の中をのぞいて) 「ちゃっと退け、ちゃっと退け。」


太郎「何とした、何とした。(両人、橋がかりへ逃げる)」


次郎「おしゃる通り、黒うどんみりとして、うまさうな物ぢゃ。(両人、扇をたたみ、腰にさす)」


太郎「身共はあの附子が食ひたうなった。行て食て来う。」


次郎「イヤここな者が。向かうから吹く風に当たってさへ滅却するほどの大の毒を、何として食はるるものか。」


太郎「身共はあの附子にりゃうぜられたかして、しきりに食ひたうなった。行て食て来う。」


次郎「身共が側にゐるからは、やることはならぬ。(太郎冠者の袖を取る)」


太郎「ここを放っておくりゃれ。」


次郎「放すことはならぬ。」


太郎「放せと言ふに。」


次郎「ならぬと言ふに。」


太郎「名残の裾を振り切りて、(次郎冠者の押えている袖を振り放し) 附子の側にぞ寄りにける。(謡いながら葛桶に近づく)」


次郎 「アリャ、附子の側へ寄りをった。おのれ、今に滅却せうぞ。」


太郎(扇を取り出し、それを飴棒のように使って葛桶の中の物を食べる) 「アムアムアムアム。」


次郎「アリャ、附子を食ふわ食ふわ。おのれ、今に滅却せうぞ。」


太郎(左手で顔を押えて)「アア、たまらぬ、たまらぬ。」


次郎「そりゃ滅却した。(我を忘れて太郎冠者のそばへ駆け寄り、肩を貸し) ヤイヤイ太郎冠者、気をはったと持て、気をはったと持て。」


太郎「たれちゃたれちゃ。」


次郎「身共ぢゃわいやい、身共ぢゃわいやい。」


太郎(気がついて)「エイ次郎冠者。」


次郎「何とした。」


太郎 「うまうてたまらぬ。」


次郎「何ぢゃ、『うまうてたまらぬ』。」


太郎「なかなか。」


次郎「して、附子は何ぢゃ。」


太郎 「こりゃ見よ、砂糖ぢゃ。」


次郎(葛桶の中を見て)「どれどれ、まことに砂糖ぢゃ」


太郎「サアサア食へ食へ。」


次郎「心得た心得た。」


「アムアムアムアム。(両人食べる)」


太郎「何と何と、うまい物ではないか。」


次郎 「おしゃる通り、うまい物ぢゃ。」


太郎「このやうなうまい物ちゃによって、そちや身共に食はすまいと思うて、附子ちゃの、

次郎「毒ちゃの。(両人笑)」


太郎 「憎さも憎し、アムアムアム。」


次郎 「ただ食へ、ただ食へ、アムアムアム。」


太郎 「おとがいが落つるやうな、アムアムアム。(葛痛を自分の手もとに引き寄せ、一人じめして食べる)」


次郎(それをそっと取り返し) 「手の放さるることではない、アムアムアム。」


太郎(気がついて) 「ヤイヤイ、身共にもちと食はさぬか。」


次郎「そちがあまり我慢に食ふによって、身共も食はねばならぬ。」


太郎「身共も食はねばならぬ。こちへおこせ。」


次郎「こちおこせ。」


太郎次郎「こちへおこせ、こちへおこせ。(両人、葛桶を奪い合う)」


太郎「それならば、両人仲よう真ん中に置いて食はう。」


次郎「それがよからう。(葛桶を中ほどへ置き、かわるがわる食べる)」


太郎「サアサア食へ食へ、アムアムアム。」


次郎「心得た心得た、アムアムアム。」


太郎「このやうなうまい物はつひに食うたことがない、アムアムアム。」


次郎「頤が落つるやうな。 アムアムアム。」


太郎「ただ食へ、ただ食へ、アムアムアム。(葛桶の中の砂糖が残り少なになったのを知り、そっと葛桶のそばを離れる)」


次郎「手の放さるることではない、アムアムアム。(食べ続けるうちに、砂糖がなくなったのに気づいて)ヨウ、イヤなうなら、附子が皆になった。」


太郎「ヨウ。 よいことをおしやったの。」


次郎「よいことをした、とは。」


太郎 「ハテ、あの附子はそちや身共に食はすまいと思うて、附子ぢゃの毒ぢゃのと仰せられたものを。あのやうに皆食うたならば、よいとは仰せらるるまい。お帰りなされたならば、この通りまっすぐに申し上げう。」


次郎「アアこれこれ、この附子を見初めたも食ひ初めたも、皆そちぢゃ。お帰りなされたならばこの通りまっすぐに申し上げう。」


太郎「アアこれこれ、今のはちと戯れごとでおりゃる。」


次郎「そのやうな悪い戯れごとは言はぬものぢゃ。して、言ひ訳は何とする。」


太郎(脇柱のほうをさしながら) 「あのお掛け物を破れ。


次郎 「ハア、これを破れば言い訳になるか。」


太郎 「オオなるとも、なるとも。」


次郎「それならば破らう。(脇柱の前へ行き) サラリサラリ、バッサリ。(掛け物を破る) サア破った。」


太郎「ヨウ。またよいことをおしやったの。」


次郎「またよいことをした、とは。」


太郎「ハテ、あの附子は身共が見初めたにも食ひめたにもさしめ。あのお掛け物は御秘蔵ごひさうのお掛け物ちゃによって、あのやうに破ったならば、よいとは仰せらるるまい。お帰りなされたならば、この通りまっすぐに申し上げう。」


次郎「アアこれこれ、これもそちが破れと言うたによって破った。お帰りなされたならば、この通りまっすぐに申し上げう。」


太郎「アアこれこれ、これもまた戯れごとでおりゃる。」


次郎「またしてもまたしても、そのやうな悪い戯れごとは言はぬものぢゃ。して、言ひ訳は何とする。」


太郎(目付柱のほうをさし) 「あの台天目を打ち割れ。」


次郎「身共はもはや嫌ちゃ。」


太郎「それはまたなぜに。」


次郎(太郎冠者の顔を見つめながら) 「また申し上げう、でな。(両人笑う)」


太郎「それならば、両人一緒に打ち割らう。」


次郎 「それがよからう。」


太郎 「これへ寄らしめ。」


次郎「心得た。(両人、目付柱のそばへ行く)」


太郎次郎「エイエイ、ヤットナ。(両人して天目を持ち上げる)」


太郎「さて、これには声を三つかけ、三つ目に打ち割らう。」


次郎「それがよからう。」


太郎次郎「イーヤア、エイ。太郎「一つよ。」


太郎次郎「イーヤア、エイ。次郎「二つよ。」


太郎「今度が大事ぢゃ。 出し抜くまいぞ。」


次郎「出し抜くことではない。」


太郎次郎「イーヤア、エイ。(岡人、手を放す)」


太郎「グッラリン。次郎「チーン。」


太郎「数が多うなった。」


次郎「微塵になった。(両人笑う)」


次郎「して、言ひ訳は何とする。」


太郎 「さてさて、そちは気の弱い者ぢゃ。今にもお帰りなされたならば、しきりに泣け。」


次郎「ハア、泣けば言ひ訳になるか。」


太郎「オオ、なるとも、なるとも。(橋がかりのほうを見やり) ハハア、もはやお帰りに間もあるまい。まづこれへ寄っておゐやれ。」


次郎「心得た。」


燃「エイエイ、ヤットナ。(大小前に座る)」


主(立ち、一の松まで出て)「やうやう用のことをしまうてござる。 両人の者に留守の程を申し付けてはござれども、心もとなうござるによって、急いで戻らと存ずる。(本舞台にはいり)イヤ何かと申すうち、はや戻った。」


太郎「そりゃお帰りちゃ。 泣け。(両人泣く)」


主 「ヤイヤイ両人の者、今戻ったぞ、今戻ったぞ。(両人泣き続ける)これはいかなこと、某が戻ったを喜びはせいで、なぜそのやうに落涙するぞ。」


太郎「次郎冠者、申し上げてくれい。」


次郎 「太郎冠者、申し上げてくれい。(両人とも泣き続ける)」


主「ヤイヤイ、心もとない。どちらからなりとも早う言へ。」


太郎 「それならば私から申し上げませう。大事のお留守でござるによって、眠ってはなるまいと存じ、次郎冠者と相撲を取ってござれば、次郎冠者が強うござって、私を目より高う差し上げ、既に投げうと致しましたによって、投げられてはなるまいと存じ、あのお掛け物に取りついてござれば、(脇柱のほうをさし) あれ、あのやうに破れました。(泣く)」


主 「これはいかなこと、秘蔵の掛け物を散々にしをった。」


次郎「それを取って返すとて、台天目の上へズデイドウ。(目付柱のほうをさし) あれ、あのやうに微塵になりました。(両人、激しく泣く)」


主 「南無三宝なむさんぽう、秘蔵の台天目まで微塵にしをった。おのれら両人生けておく奴ではないぞ。」


太郎「とても生けてはおかれまするまいと存じ、附子なと食て死なうと思うて、(次郎冠者に) なう 次郎冠者、


次郎 「オオ。」


主(葛桶の中を見て)「これはいかなこと、附子まで皆にしをった。さてもさても憎い奴でござる。(肩衣かたぎぬの片袖を脱ぐ)」


太郎「一口食へども死なれもせず、

次郎「二口食へどもまだ死なず、

太郎「三口四口、

次郎「五口

太郎「十日余り、(このあたりから両人立ち、舞い始める)」


太郎次郎「皆になるまで食うたれども、死なれぬことのめでたさよ。アラ頭固かしらがたやんにゃ。(両人、舞いながら主の頭を扇で打って、大笑いする)」


主「何の頭固やんにゃ。(扇を振り上げる)」


太郎「アア、許させられい。

太郎次郎「許させられい、許させられい。(逃げ入る)」


主「おのれ、どちへ行く。あの横着者、誰そ捕らへてくれい。やるまいぞやるまいぞ、やるまいぞやるまいぞ。(追い込む)」


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