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相談してみた(俺1人だけで)

話が急展開になっちゃいました。まぁダラダラやるより良いかな?

 季節は巡り、木々の葉は茜色に染まり出して来ていた。

 

 地面には落ちた葉が枯れ果て古い物は腐敗し地面へと戻っていく。

 異世界でも春夏秋冬の風景に変わりはないようだ。


 木々の上を一匹のリスが駆ける。

 姿形こそ元いた世界のリスとあまり変わりはない様子だ。

 丸まった尻尾に縦にそろった三色の毛並み。

 つぶらな瞳と小さな耳と、そこだけ見れば誰もが目を奪われるであろう可愛らしい小動物を彷彿とさせた。

 

 そんなリスが地面に落ちた木の身を手に取り齧り付いていた時、枯れた木の葉を踏み締める音がリスの耳に届く。

 

 視線を向けると、其処には一匹の狼が口から涎を垂らして近づいて来ていた。

 まなく冬が訪れる。完全な冬になる前に栄養を蓄えようと必死なのが伺えていた。


 目の前の狼は呑気に木の実を齧っていたリスを馬鹿な獲物だと嘲笑っていたのだろうが、しかし、それは一瞬のうちに覆されてしまった。

 

 リスが大きく口を開くと、その中からゲル状の何かが突如飛び出して来て無数のクダを伸ばして狼に襲い掛かって来たのだった。


 突然の光景に仰天する狼ではこれに対応する事など出来るはずもなく、体中にクダの先端を突き刺されて其処から何かを流し込まれた。

 時間からしてほんの数秒の出来事ではあったが、狼に刺さったクダは役目を終えると一斉にリスの口の中へと戻って行く。


 リスの目の前に映るのは、皮だけの存在となった狼と思わしき生き物の亡骸がその場に転がってるのみであった。

 

 そんな狼の成れの果てを見ていたリスの顔は、何処となく邪悪な笑みを浮かべてる様にも見られた。



***



 寄生は順調に進んでいた。

 既にゴブリンの巣穴は俺の手により制圧され、あの忌まわしきゴブリンキングでさえ今では俺が自由に動かせる手駒となっていた。

 

 安住の拠点を得た次の目標として、俺はこの森全体の制圧に乗り出す事とした。

 

 それは魔物に限らず生き物という生き物全てに俺を寄生させると言う字面にして表すと途方もない事のようにも思えた。

 

 だが、それもこのスライムボディが成せる擬態の前では簡単に成し得てしまうことだ。


 へ? どうやって獲物を探すのかだって?

 ははは、そんな回りくどい手段なんて取るはずがないじゃないか。


 大体俺スライムだよ。スライムがその辺を走り回る生き物に追い付けるはずがないでしょうが。


 もっと簡単に、かつ効率良く全体に寄生させる方法を俺は思いついていたんだよ。


 それは、この森の中にある一際大きな湖を利用する事だ。

 この湖は空の色と同じように青く澄んでいてそのままでも飲めそうな見た目をしていて、現に今でも多数の生き物や魔物達がその喉を潤す為に湖の水を美味そうに飲んでいた。


 ここまで言えばもう分かるだろ?


 何!?まだ分からない? しょうがないな。では答え合わせだ。


 俺は即座に湖の中にスライムの体を沈める。

 勿論スライムなので窒息なんて無縁の話だ。

 湖に入って早速俺はスライムの体を細かく切り分けた。


 スライムの特技の一つで分裂と言うやつのようだ。

 いやぁ何か他にできる事ないかと体を動かしていたら偶然発見出来たので早速試してみたくなってこうして湖の中まで来た次第なのだよ諸君。


 俺の体はどんどん細かく分かれて行き、最終的には細胞レベルにまで体を分けることに成功出来た。

 後はひたすら水を取り込んで体積を増やして行き、ついには湖の水全てが俺と言う状態にまでなった。


 勿論怪しまれないように水に擬態してるのも忘れてない。


 そうとは知らずに多種多様な生き物や魔物達が喉を鳴らしながら美味そうにそれを飲んでいく。


 ククク、お前らが飲んでるのは水じゃなくて水に擬態したスライムだとも気づかずにご苦労な話だ。


 こうして、この森に生きる全ての生き物や魔物達に寄生した俺は早速奴らの脳髄を食い尽くし脳へと擬態、後は怪しまれない様に普段通りの生活をすると言った段取りだ。


 勿論テストも兼ねて襲って来た不届き物を襲撃するのも忘れない。

 こう言う事をするときに小動物の体は非常に重宝する。


 何せ、見た目が可愛いリスやウサギなのだから、肉食性の生き物や魔物達を釣るにはもってこいだと言う訳だ。


 そんな訳で、今またこうしてリスに擬態した俺を喰らおうとやって来た哀れな捕食者の亡骸が転がる事となった。


「もうこの森の生き物の殆どは俺の支配下に入ったみたいだな」


「そのようだな」


 茂みの中から現れたのは錆びた剣を腰に刺した犬顔の魔物だった。


 コボルトと言うらしいが、こいつも既に俺に寄生されていて今では俺の手足も同然だ。


「またオオカミの毛皮が手に入ったぞ」


「そのようだな。まぁ、皮なんぞいくら手に入っても使い道なんてないんだがな」


 そもそもスライムである俺たちに寒さや暑さと言った概念はない。

 だが、寄生してる体が環境の影響によって不都合があっては困る。


 なのでこうして毛皮など利用できる物は加工の出来る魔物に回収させて加工させてる。

 体内から肉だけを溶かして吸い尽くすので剥ぎ取る必要もなく皮だけ残るので非常に楽なので良いのだが。


「人間の方はどうだ?」


「一応餌は与えている。体内の俺が内蔵機関などを強化してるから早々傷むこともないだろうが全て俺で賄うのは面倒だし体積【コスト】もかかる。なるべく体外から摂取できるエネルギーで賄わせているところだ」


「全く、この体は面倒だな。一週間飲まず食わずでいただけて運動能力がかなり落ちた時には驚かされたぞ」


「本当に不便な奴らだな。俺たちスライムとは違って」


「全くだな」


 初めこそは最弱の魔物と思い落胆していたが、使いこなしてみればなんと便利でかつ強い魔物であろうか。


 どうして世間ではスライムは弱い魔物だなどと言われているのだろうか?

 甚だ疑問だ。


「そりゃそうだろう。本来のスライムと言ったら体積を集めてぶつかるか窒息させるかしかしないんだぞ」


「なんでそんな面倒な事を? 体内に体を流し込んで内部から溶かせば良いだろうに?」


「そこまでの知恵がないからだろ。連中に知識と呼べるものなんぞある筈がないだろうに」


「それもそうだな」


 最早、前世の俺が人間だったかなどどうでも良くなっていた。

 ただ、この便利で強い体がとても気に入ってしまったのだ。

 もう今から人間の体になんて戻りたいとも思わなくなった。

 スライム最高! スライム万歳!


 なんて自画自賛している時だった。


「おい! この森に人間の一団が近づいて来てるぞ!」


 鷹に擬態した俺が舞い降りて来てそんな事を言って来た。

 人間の一団なんて前にゴブリンの巣で全滅した冒険者の奴ら以来だな。


「今からさっき見た光景をお前らにも見せる」


 鷹の脳に寄生した俺から他の俺たちに電気信号として先程の光景が映し込まれて来た。


 映し出される映像を見ながらも、俺は「やっぱりスライムって超便利」と内心笑みが絶えなかった。


「今度の人間は先の奴らと比べて身なりは整ってるな」


「あぁ、しかも全員鉄製の鎧を着込んでいる。冒険者とかではないだろうな」


「音声は拾えなかったのか?」


「そちらも抜かりはない。ちょっと待て」


 俺が脳内で映像に音声を入れて再度再生させた。


『馬車の具合から見ても、姫様が族に捕まったとは考えられません!』


『恐らく、護衛の者達が身を挺して逃したかと?』


『だが、この先は魔物が蔓延る魔の森だ。そんな魔の森にフィオナ姫様が向かったとなれば、一刻も早く救出せねば!』


 どうやら誰かを探しに来たみたいだ。

 にしてもフィオナ姫? そんな人間会った事ないぞ。

 なんて思っていたら、俺の脳内に備蓄してた捕食者達の記憶の中にフィオナ姫の記憶があった。

 

「あぁ、フィオナ姫ってあのゴブリン製造機に使ってた奴か!?」


「マジか!? あの女姫様だったのか!? その割には体頑丈だったよなぁ」


「あぁ、あの体で一体今まで何匹魔物を作った事か」


 どうやらこいつらの探してるファオナ姫とは俺が最初に寄生した人間の女のことだった様だ。

 んで、話の中には2人の侍女も居たと言うそうだが、それって寄生した時に近くに転がってた死に掛けの女達の事か?


 あいつらって確か使い物にならないって事で処分も兼ねて中身だけ食って外側はゴミとして捨ててたな。


 今頃土に帰ってる事だろうな。南無南無ーーー


 しかし、これはいい事を聞いたかも知れない。

 既にこの森一体は制圧してしまい次なるステップへ踏み出そうとしていた所だった。


 そこへ舞い込んでくるかの様にやって来た人間どもの一団。

 

 俺と俺たちは互いに邪悪な笑みを浮かべあった。


「皆の衆、折角俺たちの縄張りに来て頂いたんだ。丁重にもてなそうじゃないか。そう・・・丁重に、な」


 俺の指示を受け、他の俺たちは動き出した。

 向こうからやって来てくれたのはこちらとしてら大変好都合な事。

 折角だ、次は人間達もいただくとしようか。

果たしてやって来た人間たちの運命や如何に・・・大方予想通りになると思いますよ。

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