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ひらめいたことを試してみた

 ゴブリンの巣穴に誘い込んだ人間達はボブゴブリンにあっさりと倒された後そいつらの晩飯として残さず綺麗に召し上がられましたとさ。


 残さず食べて偉いね君たち・・・じゃねぇよ!


 仕方なく残った残骸などは俺が美味しく取り込ませて貰ったが、それでもボブゴブリンを倒すにも寄生するにも体積が全然足りない。


 ただのゴブリンでさえ寄生するのに体積の半分も使ってしまう。

 上位種やボブゴブリン、ましてやゴブリンキングになんて到底寄生出来そうにない。


 とは言え、このまま何時迄も此処で息を潜めて過ごすと言うのも嫌だな。

 

 とりあえず打倒ボブゴブリンを目指して再度俺は巣穴を出て森の中をうねり歩いた。


 近くに俺の寄生したゴブリンが歩いていたのでそいつの肩に乗っかってゴブリンの視線の高さを堪能しながら対処法を模索していた。


 ただ倒すだけにしても寄生して利用するにしても現状のままではどちらも出来そうにない。

 奇襲して締め殺そうとしてもあの怪力では俺のスライムボディがもたないだろうし、寄生して体を利用しようにも体内に侵入した途端奴の体内細胞に俺の体が耐えられるとは思えない。


 正にどん詰まり状態だった。

 今でこそ巣穴の中にいる女達を使って手駒を増やしているが、ぶっちゃけそんなのやった所で光明が見えるはずなどない。


 言ってしまえば現実逃避のそれと同じだ。

 このまま悪戯にゴブリンだけを増やしたところで所詮はゴブリン。

 数だけ揃っててもボブゴブリンに蹂躙される未来しか見えない。


 やはり一番の理想としてはボブゴブリンを全て支配下に納める事だな。

 その為にも現状を打破する方法を編み出さなければ。


「何か良い案はないかぁ?」


「俺に聞くなよ。俺もお前なんだし」


「そりゃそうだ」


 まるで自分の手と会話してる気分だ。

 仕方なく一人でもんもんと考えてたんだが、結局良い案など浮かばず、それどころかない頭を使い過ぎたせいで俺のスライムボディが液状になって地面に落ちてしまった。


「おいおい、何やってんだよ?」


「悪い、考え事してたら疲れた」


「ったく、これだから・・・ん?」


 ふと、ゴブリンに寄生した俺が何かに気づいた。

 スライムの俺のボディが地面の色に溶け込んでいくのがゴブリンの目に映っていた。


「無色透明だから色が透き通ってるだけ? いや、違う! そんなもんじゃない! これは、もしかして擬態って奴か?」


 その言葉を呟いた俺はある事を閃いた。

 もし、このひらめきが的中すれば一気に問題解決に繋がることになる。



***



 早速ひらめいた内容の実践に移る事とした。

 今回の標的は洞窟内でのんきにうたた寝しているボブゴブリンの一体。

 

 本来なら倒すことも寄生することも無理な相手だが、俺のこのひらめきが効果を発揮すれば或いはどうにか出来るかも知れない。


 早速俺はスライムの体を伸ばし、先端を鋭利に尖らせて眠っているボブゴブリンのうなじにそれを突き刺した。


 頭脳を食う為なら素直に頭に直接打ち込みたいところなのだが今の俺では頭蓋を貫通するのに時間がかかり過ぎる為にこうして脳髄に近いうなじ辺りに俺の体をおよそ大さじ一杯分流し込んだ。


 本来ならばたったこれだけの体積では即座にボブゴブリンの体内細胞に食い尽くされてしまうところなのだが、今回はそうはいかないつもりだ。


(ボブゴブリンの体液の構造をスライムの体に記憶させて、俺の体を奴の体液に擬態させれば・・・おぉっ!!)


 俺のひらめきは正に的中した。

 スライムの体をボブゴブリンの体液に擬態させたところ、さっきまで攻撃態勢を取っていたボブゴブリンの体組織達が霧散して行ってしまった。

 

 どうやら上手く擬態出来た俺の体をボブゴブリンの体液と誤解してくれたようだ。

 これは正に大発見と言えることだろう。


 何せ、この擬態のお陰で本来よりも遥かに少ない体積で寄生が出来るようになるのだから。


(いやぁ、こりゃ良いなぁ。後は血流の流れに乗ってれば脳髄まで自動で連れてってくれるんだから楽なもんだな)


 魔物に寄生する際に難点となってるのが脳髄までの道筋だ。

 今までは脳髄まで肉を溶かして進み、進んだ分だけ体積を切り離して溶かした部分を結合させるなどかなり面倒な手順を踏んでいた。


 その為に必要な堆積も増す一方だったし何より効率が悪すぎる。

 だが、最弱スライムでしかない俺が生き残る為には他者の体を利用する他にない。


 そんな中でこの擬態能力は非常にありがたかった。


 これでスライムの体を体液に擬態させてれば後は血の流れに乗ってるだけで勝手に脳髄まで運んでくれると言う結果になった。


 脳髄にまで辿り着ければ後はこっちの物。

 ひたすら脳髄を食い尽くして、増えた体積を全て使って脳に擬態すれば寄生は完了する。


 目を開くと、俺の意志はボブゴブリンのそれを完全に掌握した感覚を感じ取っていた。


「くくく・・・まさかこんな便利な能力があったなんてな」


 自由に動き回るボブゴブリンの体をスライムの俺が眺めて狂気の笑みを浮かべたくなって来た。


 今の今まで問題となっていた寄生の要領に関する問題が完全に解決したのだから、これは笑いたくもなる。


 その日の夜、俺は巣穴の中に滞在していたボブゴブリン全てを同じ手法で寄生し、翌朝には巣穴の中に居たボブゴブリンは全て俺になっていた。


 後はゴブリンキングを残すのみ。

 俺の手足は確実に増え続けていた。

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