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色々試してみた

主人公が人間の外見を見ないのは別に気にしてないからだと思われます。所詮スライムですからね

 あれから更に一ヶ月が経過した。

 現状の成果を確認すると、あれから更に2匹の赤子が誕生した。

 どちらにも俺が定着している為、俺の勢力は無事に増え続けてて有難い事だ。

 それで赤子のゴブリンだが、寄生したゴブリンに比べて能力がかなり上乗せされてる事が判明した。


 最初に判ったのは第一子と共に狩りをした時の事だ。

 最初に寄生したゴブリンとでコンビを組んで狩りに行かせた際に赤子から産まれた個体の方が強かった事だ。

 死角から襲いかかって来たオオカミを片手で掴んでそのまま首をへし折った時は同じ俺とは言え驚かされた。

 どうやら赤子の時に寄生する事でスライム体の俺がある程度体を弄り強化が出来るみたいだ。

 それに気づき次の個体が定着した際に思い切ってかなり強化してみたのだが、その個体は生まれる前に母体の中で壊死してしまった。

 

 どうやら強化もし過ぎると赤子の個体が耐えられないみたいだ。

 仕方ないので死に絶えた個体は中で俺が食ったので母体に影響はない。

 今後は少しずつ強化をしつつ個体を増やすとしよう。


 次に体の一部を別の魔物の中に寄生させる方法だが、これは完全に失敗に終わった。

 試しに巣の中の数匹のゴブリン達に俺の一部を流し込んでみたのだが、定着する前に消化吸収されてそれまでだった。

 しかし、それだと何故人間の女の時には一部だけの寄生が出来たのだろうか?


 考えられる可能性としては元よりスライムを食い続けていた為に人間よりもスライムを消化吸収するのに適しているのが原因なのかのしれない。

 日本人が海藻を消化吸収出来るのと同じ理由だと今は仮説しておくとしよう。

 そうなると人間の方が寄生した後の定着が簡単な事は分かった。

 しかし寄生がしやすいのはモンスターの方なんだよなぁ。

 そもそも人間にスライムを食べる習慣はないだろうし、人間への寄生方法を色々と考えないといけないな。


 それともう一つ、外に狩りに行っていた時に、偶然森の中を歩いていた人間の女を発見し、捕獲に成功した。

 捕獲した女達にも俺の一部を寄生させてみたところ、なんの問題もなく寄生が出来た。

 やはり人間の方が寄生する際のコストが少なくて済むみたいだ。

 今後も人間が居たら捕獲して寄生させてくのが良いだろう。


 それと、巣の中のゴブリンを寄生するのはコスト的にキツいので餌用確定だな。

 と言ってもいきなり数が減ったのでは変に怪しまれるので他の奴らが狩に出た時にこっそりゴブリンの俺たちが仕留めて食らって埋めてしまえば頭の悪い奴らの事だ。


 【どうせ狩りにしくじった】と思う事だろう。


 その調子で少しずつ巣の中のゴブリンを俺が寄生したゴブリンにすり替えて行けば最終的にこの巣は俺の物に出来る。


 問題はこの巣の中にいる亜種と上位種、更にはボスの存在だな。

 出来る事なら俺の手駒にも上位種や亜種が欲しいとこだな。

 しかし寄生して手に入れるのは無理だろうな。

 ゴブリンでさえ定着させるのに体積の半分を使う訳だし、上位種や亜種になると更に体積を使うだろうしボスに至っては現状ではほぼ不可能だろう。


 最悪俺全てを使って寄生をすると言う手もあるがそれで失敗するとボスの養分になるのがオチだ。試すにしてもリスクの方がデカ過ぎる。

 どうにかして赤子から生まれた個体で上位種を作れないものか。

 試行錯誤はまだ続きそうだ。

 やれやれ、やる事が多いと言うのは大変だが退屈しなくて済むのはありがたいな。


「こんなところか」


「まだ戦力的には少ないな」


「モンスターに寄生出来れば楽なんだが、使う体積が多く掛かるってのがなぁ」


 今俺と俺達は巣の中の繁殖場にて女の俺の3人とゴブリンの俺5匹とで円を組んで報告会と今後の相談をしていた。

 俺が俺に話しかけると言う事実に少し頭がおかしくなりそうになるがまぁ慣れるしかないな。


「いっそ上位種や亜種と交わればその個体が手に入るんじゃないか?」


「いや、それが上位種になると下位種に比べて性欲がなくなるみたいだ」


「亜種も似たようなもんだ。食欲や戦闘欲が旺盛になる代わりに性欲が抑えられるみたいだな。ゼロって訳じゃないみたいだがほぼ年に1、2回程度しかしないみたいだな」


「効率悪いな。待てばなんとかなるだろうが今は早急に数を増やしたいからなぁ」


「いっそ寄生した俺達を他のモンスターに喰わせるとかはどうだ?」


「う〜ん、折角作った個体をそんな事に使うのは勿体ない気もするなぁ」


 ゴブリンを他のモンスターに食わすと言う方法はいけない訳でもない。

 所詮はゴブリン。結局は更に強いモンスターの餌になる運命なのは自然の摂理って奴だ。


 しかし折角作った手駒をわざわざ餌として使うのは少々勿体ない気がする。

 

 母体が増えたとは言え赤子1匹産むのに最低でも2、3月は掛かる。

 出来れば手駒を使わずに済む方法が欲しいところなのだが。


「手駒を使いたくないなら餌を使えばどうだ? 寄生しないのなら中身を食い尽くしてある程度の体積を確保したのちに死体に偽装させれば野生のモンスターなら食いつくかも知れない」


 女の俺の提案に俺一同が納得した。

 確かに巣の中にいる餌どもなら失敗しても俺の体積が少し減る程度で済むし、それで成功すれば大儲けだ。

 ゴブリンを釣り餌にして更に上位のモンスターに寄生する。


「流石は俺だ。中々いい案を出してくれるな」


「ならば今後は狩りに出たゴブリンを食った後その死体の中に潜んで他のモンスターがそれを喰らうのを待つって事で良いな」


「他にも真新しい死体があったら活用するのもアリだな」


「よし、早速実践してみるとしよう。くれぐれも巣の中では怪しまれないようにな」


 こうして、俺と俺達の今後の方針を決める話し合いは終わった。

 暫くはいつも通りにしつつ巣の中を少しずつ浸食していき、いずれはこの巣を手に入れる。その為にもゴブリンのみでなく他のモンスターにも寄生して手駒にしていかないとな。

 

 それから数日が経ち、外で狩りをしつつ死体を探していたゴブリンの俺達は森の中を歩く人間の集団を見つけた。

 しかもこの人間達は皆様々な武装をした戦闘集団でもあった。


(異世界風に言うなら冒険者の類か・・・)


 人間が現れたのは好都合だが武装した人間は初めてだ。

 この世界の人間がどれほどの力を有しているのかまだ把握していない以上迂闊に手を出すのは不味いか。

 なら少し様子を見ようと数匹のゴブリンをそいつらの後方からつけさせる事にした。


「ここら辺りで間違い無いのか?」


「その筈だ。近隣の情報によるとここら近辺でゴブリンの異常発生が確認されてるそうだ」


「にしたって未だに1匹もゴブリンと出会ってねぇぞ?」


 どうやらこいつらはゴブリン討伐で来ていたようだ。

 危ない危ない。こいつらの存在に気付かずに狩りに行ってたら真っ先に狩られてたな。

 しかしゴブリンの異常発生とは。

 一応俺の手駒は順調に増えてる訳だし他にもゴブリンのコロニーがあるのならそこで異常発生してると見るべきだろうか。

 俺がそんな思案にくれてるとそいつらの前に数匹のゴブリンが姿を現してきた。


 奴らは俺の手駒じゃない。それに巣の奴らでもない。恐らくは別のコロニーの個体だろう。


「居たぞ!」


「やっとおでましか」


 ゴブリンを確認するやいなや即座に武器を構える人間達。

 これは好都合だ。奴らとの戦闘を見学させて貰おう。

 もし奴らがそれなりの力量を有しているのならこちらにとっても利用しやすい。


 人間達の戦闘は一言で言うなら組織化された動きだった。

 皆が決められた役割の元に動き的確にゴブリンを倒していく。

 盾持ちの人間が攻撃を防ぎ、両手に武器を持った人間が隙を突いて切り裂き、杖を持った人間が後方から援護する。

 成る程、それなりの実力はあるみたいだ。

 たかがゴブリンとは言えものの数分で蹴散らしたこいつらに俺は素直に感心していた。

 こいつらなら利用しても良いかもな。

 俺は思った。こいつらを巣に誘導して上位種や亜種と戦わせてやろう。そしてあわよくばボスも倒してくれればまさに御の字だ。

 

 その為にはまずこいつらを巣に誘導してやる必要があった。

 多少リスキーだが俺は監視用につけさせてたゴブリンを敢えて奴らの前に現せた。


「また出たぞ!」


「今度は1匹か?」


 奴らが俺を視認したと確認するや俺は一目散に逃げ出した。

 奴らと正面から戦うなんて馬鹿げた事誰がするものか。


「逃げたぞ!」


「追いかけよう!」


 ククク、そうだそうだ。追いかけて来い。

 精々俺の役に立ってくれよ。

 馬鹿な人間ども。


 逃げた俺を追いかけてくる人間達を上手く巣の入り口前に誘導した後、俺は急ぎ巣の内部へと入った。勿論人間達に俺が中に入る姿もちゃんと見せている。


「洞窟?」


「此処が奴らの寝床ってところか」


「ならさっさと潰しちまおうぜ」


 人間達はいずれもやる気に満ち溢れていた。

 良いぞ良いぞ。その調子で巣の中にいる邪魔者を蹴散らしていってくれ。

 俺はほくそ笑みながらそう思った。

 巣の中に避難した俺は中にいたゴブリン達に人間達が襲撃に来たと報告した。

 すると奴らは大慌てで戦闘態勢に入り出した。

 人間の襲撃と聞いて普段はあまり動かない上位種や亜種の奴らも忙しなくなり出していた。


 これでよし。後は人間とゴブリン達の潰し合いを見学させて貰うとしよう。

 これは面白くなってきたぞ。果たして勝つのはどちらか。人間か? それともゴブリンか?


 まぁ、どちらが勝ったにせよ最終的には皆俺がいただくだけだがな。

 それまで精々楽しませてくれよ。

 俺は慌てふためくゴブリン達を尻目に巣の奥へと消えた。

 戦闘には参加しないのかって?

 する訳がない。そもそも俺が参加する理由がないからだ。

 巣の中にはまだ俺の手駒じゃないゴブリンが多く居る。奴らの間引きをしてもらうには絶好の機会だ。

 それに戦うのなら正面からではなく不意打ちや闇討ちで倒す方が効率的だ。

 正々堂々?

 なにを馬鹿なの事を言ってる。

 それは小説や漫画の世界での話だ。

 ここでは死んだらそれまでの世界なんだ。馬鹿正直に真正面から喧嘩を売るなんて真似誰がするものか。

 それに俺は最弱なスライム。そんな俺が挑んだところで勝ち目がないのは目に見えている。

 ならばこそ利用できるものはなんでも利用する。

 そして美味いとこだけ俺が根こそぎいただく。

 今後もその方針は変わらない。変えるつもりはない。

 最後に笑うのは俺だけで良いからな。

人間 対 ゴブリン。


 果たして勝つのはどちらか?


 まぁ、どちらが勝っても主人公には関係なさそうですけどねw

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