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憂さ晴らしをしてみた

結構間が空いてしまいました。申し訳ありませんです。

可能な限り不気味な主人公を表現してみました。

暑い夏をこれで乗り切れれば幸いと思います。

 苦心の末に失敗したボスモンスターを苦闘の末に倒した(つもりになってる)騎士団の皆様。

 勿論、たかが剣を突き立てられた程度で俺が作ったモンスターが死ぬなんて事ある訳がない。

 だが、そこは演出として倒されたフリをしておく。

 すると騎士団の奴らの中で一番偉そうな奴が奥の部屋へと駆けて行った。

 いよいよ姫様との感動の再会だ。視聴者はハンカチの用意をお忘れなく。


 因みに、残っていた他の騎士たちはあまりにも無防備だったんで背後からうねうねを伸ばして全員漏れなく寄生させておいた。

 いやぁ、やっぱり人間は寄生しやすくて良いね。

 魔物と違って体内で擬態する必要がないから簡単に体を奪える。

 おっと、そろそろお姫様との再会シーンだな。

 

「フィオナ姫!!」


 勢い良く部屋へと辿り着くなり大声で名前を呼んで来た。

 その視線の先には簡素な布切れのような衣服に身を包んだフィオナ姫(中身俺)が座っていた。


「だ、誰?」


 一応俺なりに姫らしくしてみた。ここまで来てバレてしまったらこれまでの苦労が水の泡になってしまう。

 緊張の瞬間だったが、どうやらその心配はなさそうだった。


「お忘れですか? 私です! ジークです!」


「ジーク・・・ジーク!! あなたなの!?」


 無論、そんな奴知らない。

 ただ、姫様の記憶の中に確かにその名はあった。

 何でも幼い頃に結婚を誓い合った仲だと言うそうだ。

 なるほどね。愛する人の為にわざわざ死地を乗り越えてここまで来たって訳か。

 ご苦労なこった。


 無駄足だとも知らずにーーー



「さぁ、王国へ帰りましょう」


「・・・・・・」


 手を伸ばして来るそれに対し、俺は少し焦らしてみる事にした。

 折角の感動の場面なんだから簡単に終わってはつまらないだろう。

 ここはもう少しだけ盛り上げていくとしようか。


「姫?」


「ごめんなさい。もう、私はあなたの手を取る資格がないのです」


「一体どう言う事ですか?」


「言葉の通りよジーク。盗賊に馬車を襲われ、侍女たちと命がながら逃れた後、私たちはここを住処としているゴブリンどもに捕まってしまったの。そして、わたしは・・・わたしはーーー」


 そう言って顔を両手で覆って泣いて見せる。

 あたかも【ゴブリンに慰み者にされて汚された】風を装う為だ。

 まぁ、事実ではあるんだけどな。


「あなたがここに来るまでに、私は何匹もの魔物の子を産み落としたわ。私はもう汚れてしまった。あなたの知っているフィオナは、もうこの世に存在していないの!」


「そんな・・・・・・なんてことだ!!」


 衝撃の事実に膝が崩れる騎士様。

 さて、問題はこの後だな。

 トチ狂って切り掛かって来てくれでもすれば手間も省けるんだが。

 しかし、どう見てもそんな空気は感じられない。

 それどころかこの騎士様、姫様の現状に同情して泣いてないか?

 仕方ない。もう一芝居打つとするか。


「ジーク、私の最後の願いを聞き入れてくれますか?」


「何なりとお申し付けください」


 強引に滲み出た涙を拭い取り、忠誠を誓う座り方で頭を下げる騎士様。

 それでこそ騎士の鏡ってもんだな。

 その忠誠を誓ってるのが麗しの姫君ではなく、雑魚モンスターなのは見てて笑えるんだけどな。


「あなたの剣で、わたしを浄化して下さい」


「そ、それは!!」


「既に、私の身体は魔物達によって穢されました。この上は愛するあなたの手で・・・」


「・・・・・・」


 姫様の懇願に黙り込む騎士様。最後のダメ押しとばかりに俺は姫様の両手を握らせて祈りの姿勢をとらせた。

 どう見ても覚悟を決めて祈りを捧げてるようにしか見えない。

 後は騎士様がひと思いに切り裂いてくれるのを待つだけ。


「申し訳ありません。その願いだけは聞き入れることは出来ません」


「え!?」


 なん・・・だと!?

 おいおい、マジで言ってんのか騎士様。

 その腰に挿してる剣は飾りか何かか!?

 あてが外れてしまいどうしたもんかと思考を巡らせてた俺だったが、その後の騎士様の行動の後でも良いかとことの成り行きを見守る事にした。


「あなたは汚れてなどいません。身に付けてるものこそ粗末なものでしょうが、あなた自身は全く汚れてなどいない。麗しの姫君のままです!」


「ジーク・・・ですが、わたしは・・・」


 言葉を続けようとした姫の体を、騎士様は強く抱きしめた。

 お〜お〜。騎士様もやっぱり男なんだねぇ。

 愛する女を前にして本能を抑えられないってか?


「姫・・・」


「ジーク・・・」


 互いに見つめ合う二人。そのまま、互いの距離は縮まっていき、二人の唇が重なり合った。

 なんともドラマティックなシーンだろうか。

 思わず俺も声を失ってしまった。

 まぁ、スライムなんで声なんてでないんだけどね。


「・・・・・・うっ!! ゴボッ!!」


 そんなシーンをぶち壊したのは他でもない騎士様本人だった。

 突然姫様を突き飛ばすと、しきりに何かを吐き出していた。


「な、なんなんだ!? これは!!」


 吐き出された跡から出て来たのは不気味に蠢くスライム。まぁ、要するに俺の一部だった。

 折角のドラマティックなシーンだったんでこのままの勢いで騎士様にも寄生してやろうと姫様の体を通じて俺の一部を送り込もうとしたのだけれども、どうやら騎士様が本能的に危険を察知して吐き出してしまったようだ。


「す、スライムだと!?」


 驚きの後に騎士様の胸中を支配したのは怒りだった。

 その怒りに任せて地面で蠢いてる俺の一部を踏み潰してしまった。

 なんて勿体無いことを。あんな程度の量でも人に寄生するには十分だと言うのにーーー


「な、何故スライムが・・・ひ、姫!!」


 思わず突き飛ばしてしまった姫を見て、騎士様は青ざめてしまった。

 相当力を入れて突き飛ばしたからだろう。

 姫の華奢な身体は岩場に叩きつけられてしまい、首の骨が折れて頭がダランと垂れ下がってしまっていた。

 どう見たって即死だ。

 しかし、それは姫の体な訳であって中で操ってる俺には何の影響もない。

 即座に内部から折れた骨を補強し、垂れ下がってた首を強引に手で押し上げて定位置に戻す。

 変に癖がつくと治し辛いからね。


「やれやれ、後少しだったんだがなぁ」


「き、貴様・・・何者だ!!」


 怒りを露わに腰の剣を抜き放つ。

 最初からそうすれば良いものを。手間取らせてくれる。


「見ての通りだ。この女の体。フィオナ姫だったかな? 都合が良かったんで利用させて貰ってるよ。あぁ、他にも侍女らしき女達がいたが、あいつらは使い物にならなかったんで俺の養分になって貰ったがな」


 そう言って不気味な笑みを浮かべる。その顔はさっきまでの姫とは似ても似つかない凶悪さが滲み出ていた。


「この・・・・・・化け物がぁぁーーー!!」


 怒声を張り上げて切り掛かって来る。

 勿論、ただ斬られるつもりなどない。

 ここまで面倒なお膳立てをやらされたんだ。せめて鬱憤ばらしでもしなければ帳尻が合わない。

 切り掛かって来る騎士様に向かい、俺の操る姫様は一気に距離を詰めた。

 それに驚く騎士様。そこへ間髪入れずに騎士様の腕を掴むとそのまま岩場へ投げ飛ばした。


「ガハッ!!」


 思い切り投げ飛ばしたからだろう。背中から叩きつけられた騎士様の口から血が吹き出る。

 死にはしないだろうが、もう少しは痛めつけても良いだろう。

 

「な、なんて力なんだ!?」


「言い忘れてたな。この女の体は俺が取り憑いた際に色々と手を加えたもんでな。お前さんの知る華奢な姫さんと思ったら大間違いだぞ。まぁ、その姫さんとやらはもうこの世にはいないんだけどな」


「き、きさまぁぁぁーーーー!!」


 怒り狂ってるのが良くわかる。

 さっきまでのイケメン顔が怒りで鬼みたいになっている。

 その鬼の形相で切り掛かってくるんだろうが、怒り狂って思考が置いてけぼりになってるのだろう。

 見え見えの大振り攻撃ばかり繰り出してくるか有様だった。

 

「いやぁん! ジークってばそんな怖い顔しないで〜」


「黙れ! これ以上姫様を侮辱するな! 殺してやる! 殺してやるぞこの畜生がーーー!!」


 軽いジャブ的な感覚で姫っぽい言葉を放ったのだがそれが更に奴の怒りを増幅させたらしく、更に大振りな攻撃を繰り出して来た。

 勿論、そんな大振りな攻撃が当たるはずもなく、簡単にかわしていく。

 

「くそ! この! ぐぎぎぎ!」


「何度やっても同じだぞ。そんな大振りなんて当たるわけ無いだろうが」


「うるさい! 魔物風情が一端に説教するんじゃない!」


「やれやれ、期待外れだな」


 初めて姿を見た時はかなり出来る奴かと思ったのだが、実際はただの脳筋野郎だったみたいだ。

 もうこの男に対する興味は俺の中では完全に消え失せたので、そろそろ終わらせるとしよう。


「姫様の、仇ぃぃぃぃぃ!!」


「うるさい」


 無策に突っ込んで来る騎士様の股下に向かい突き上げるように蹴りを叩き込んだ。

 何かがつぶれる感触が伝わって来る。

 恐らくは破裂でもしたんだろう。


「ガッ! アァ・・・・・・」


「おやおや、騎士様が随分と情けない声をあげるんだなぁ? たかが◯玉が潰れたくらいでそれじゃ、姫様も部下達も浮かばれないなぁ」


「なん・・・だと!?」


 脂汗を滲ませて息を荒げながらも奴は睨みつけてそう問いかけて来た。

 全く、最初に見つけた時には骨のありそうな奴と思ったのだがとんだ期待外れだったみたいだな。

 俺の操る姫が指で合図を送ると、騎士様の来た方から見覚えのある男達がやって来た。


「お、お前達! 来てくれたのか!?」


 途端に騎士様の顔に希望の色が浮かぶ。

 窮地に駆けつけて来た仲間の助力を借りて形勢逆転。

 そのつもりだったのだろう。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「ど、どうしたんだ? お前達!?」


 明らかに異質な二人を見て戸惑う騎士様。

 そりゃそうだろう。

 何せ、もうそいつらはお前の知ってる奴らじゃないのだから。


「俺たちをお呼びかい? 騎士様」


「な!?」


「くくく、残念だったな。お前の連れて来てくれた頼みの部下達なら既に俺の手足も同然だぞ」


 そう言って部下達の口から俺の一部が伸び出て来た。

 軽い脅かしのつもりだったのだが、今の騎士様には効果抜群だったようだ。

 

「そんな・・・そんな事があってたまるか・・・」


「現実をよく見るべきだなぁ。もうあんたを助けてくれる頼もしき味方は何処にもいない」


「愛する姫様ももういない」


「そして、お前が生きてここから出られる可能性もない」


 部下達二人と姫様が揃って狂ったように笑い出す。

 これも俺が内部で操作しての事だ。

 一昔前に見たホラー映画の真似事をしてみたかったのでやってみたと言った感じだ。

 なんともB級ホラー感のある演出なのだが、それを見せられてる騎士様は顔面蒼白な上、立つ気力も失せてしまったようだ。


「あぁ、可愛そうなジーク。せめて私の胸の中へおいで」


 そう言って姫が両手を広げて騎士様を煽ると、何もかも諦めた騎士様は姫様に飛びつくなり濃厚なキスをしてきた。


「ぐぶっ! ごぶぶっ!!」


 お望みとあらばそうしよう。

 今度は逃すまいと姫の両手で騎士様をガッチリと抱き抱え、濃厚なキスをしながら騎士様の中へ俺の一部を流し込んでいく。


(姫様、例え畜生に成り下がろうとも、生涯貴方のおそ・・・・・・ば・・・・・・ぬぅぅぃぃぃ・・・・・・・・・)


 何の抵抗をする意思も見せず、身を任せる形で騎士様の体の中へと俺の一部は流れ込んでいく。

 喉を通り脳へと到達し、その脳を食い尽くして擬態する。

 そうしてこの騎士様もまた俺の手足となった。


「思ったよりも簡単に寄生できたな」


「やはり人間は寄生し易い。この調子でもっと多くの人間に寄生するのも悪くないな」


「それもそうだな。いつまでもこんなカビ臭い洞穴にいたのでは気が滅入ってしまう」


 寄生した人間の脳内を調べて見ると、奴らがやって来た国の情報を読み取る事ができた。

 それなりに大きな王国のようだ。

 年老いた国王。王妃は既に没しており、一人娘の姫を溺愛していたと言う。

 隣国との関係も良好で稀に見る善良な国王なのだとか。

 そんな国王の統治の元にいる民衆もまた平和な日々を謳歌しているみたいだ。


「なかなか良い国みたいだな」


「そのようだな」


「なら、この国をすべていただくとしようか」


「意義なし」


 俺だけの今後の方針会議は終わり、次に向かうは人間どもの多く住う王国だ。

 さぁ、すべてを喰らい尽くしてやろう。

 不気味な笑みを姫と部下達、そして騎士様にさせた。

こんな転生スライムには絶対会いたくないですねww

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