プロローグ
彼女が魔法少女だった。
もし友達にそう伝えたならば。
「やべーな、お前、どうした?」
多分、そう一蹴されて終わる。
だけど現実に、俺の彼女は魔法少女だ。
彼女と付き合い始めて一年。
彼女がそれだと知ったのは、付き合ってから
半年程立ってからの事。
非現実な体験から半年の期間を経てようやく、
彼女は魔法少女だったのだと俺は理解する事ができた。
そうして理解した今の俺は、なんと言っていいものか。
『どうしよう?』
何の考えも浮かばぬまま、自分の部屋の布団に横たわっている。
自分の中でそれが確証されてしまってからというもの。
疑問や推測が後を絶たず、常に頭の中で思考がぐるぐると回っている。
そうして疲れた俺は、そのまま布団に入る。
考える事をやめ眠りにつく。
それが最近の俺の日常となってしまった。
これが小説やドラマと言ったフィクションなら、客観的に楽しめるのだろう。
だけど実際に、自分の彼女が魔法少女だったとしたら。
自分の現実世界に、非現実が入ってくる。
その事実があるだけで、俺の世界はもはや混沌としてしまった。
考えること、彼女に聞きたい事は山程ある。
だけど、そうしてしまっては駄目だ、駄目なのだ。
彼女は、俺に自分が魔法少女であることを黙っている。
今までの流れを考えれば、この先もずっと教えるつもりはないのだろう。
そして、俺は彼女の事が好きだ。
下手をして別れるなんて事には絶対になりたくない。
彼女が教えるつもりなんてない事を、俺が根掘り葉掘り聞くなんてできない。
ちょっとしたきっかけさえあれば、恋愛なんてきっと上手くいかなくなる。
そう考えると。
俺は知らぬ存ぜぬを通す事に、決めざるを得なかった。
だけど俺は思うんだ。
それで幸せになれるのか。
非現実な世界を送る、彼女の生き様を知らない。
それで果たして俺達は幸せになれるのだろうか。
高校二年の夏。
俺は、魔法少女の彼女との恋愛について悩みを抱えていた。