たいしょく
すみません。
風邪を引きました。
質の悪い風邪で頭は痛いし熱があるわで、更新予定が狂いました。
11/11分の更新は異世界で家が三話ではなく二話となり、転生皇子は11/25日に延期させていただきます。
ついにメティスを・・・という場面ではあるが、夕食前だ。
まずはマティさんを迎えに行かなくてはならない。
キッチンから直接、マチリパトナムの事務所に転移した。朝、タペストリーを貼った部屋だ。
マティさんしかいないなら、執務室に直接でもいいが、人がいる可能性もある。一応の用心はしておこう。
「あら? 意外と早いですわね?」
執務室を覗くと、なにかの書類を読んでいたマティさんが顔を上げて、そんなことを言った。
・・・机と椅子、ちゃんと手に入ったようだ。
「まだ初日ですから、慣らし運転ですよ」
言ってから、この表現では伝わらないかな? と思ったが、マティさんは別に気にしたそぶりも見せずに聞き流した。
まあ、言いたいことは前後の言葉でなんとなくわかるだろう。
「そうですか。報告することがあるので、ちょうどよかったですわ」
「報告?」
「祖父・・・ギルド長とバララト支部長・・・直属の上司、の二人に手紙を送りました。本日付で、ギルドを辞めると」
さらりと言われて、すぐには理解できなかった。
元世界での話だが、仕事を辞める場合には二週間前までには、最低限伝える必要があるはずだ。
今日の今日に「辞めます」というのは不可能ではないが、社会通念上かなり礼を失した行為ととられるのではなかったか?
「そんなこと、できるんですか?」
っていうか、それでいいのか?
「もちろん、私の持っていた仕事の引継ぎはすべて終わらせましたし、書類上の手続きも済ませてあります」
引継ぎはしたって言っても・・・。
上司には副支部長の後任人事とか、困ることがあるだろうに。
あっけに取られていると、マティさんは自嘲の笑みを浮かべた。
「ギルド長の孫にして次期ギルド長候補最有力者の姪。しかもその叔母様からは非公式ながら敵認定されている。面倒な位置にいましたからね。直属の上司は、私が自分からいなくなることを諸手を挙げて歓迎してくださいますわ」
オレの気がかりが手に取るように理解できたと見えて、マティさんが解説をくれた。
そういえば、とある軍隊の上級士官には即時有効で辞任する権利があるって話を聞いたことがある。
代わりを務めたい士官は大勢いるのに、嫌がる者を無理やり留任させても効率が悪いだけって考え方だ。
合理的な判断ってことだ。
「私を居ないものとして、次席を実質的な副支部長として扱っていましたから業務への影響はないはずです」
ふん! と鼻を鳴らしてマティさん。
うっわ。
かなりうっぷんがたまっていたようだ。
「そんな扱いだったんですか?」
「ええ。そうでなければプールスさんに、『無理はするな』なんて言われたりしませんよ」
いろいろとパワハラを受けていたということか。
4,5日ぐらいなら、姿を消していても問題ないって言っていた本当の理由が、分かったような気がする。
「それに、いま辞めないと商人ギルドへの背任罪が適用されてしまいますので。これ以上は引き延ばせなかったというのもあります」
背任罪?
「商人ギルドの職員でありながら、別組織の立ち上げを行うことについてですか」
利益相反になるわけだ。
「正確には、二つの同種組織に同時に在籍はできない、ということですよ」
なるほど。
あれ?
「えっと・・・そうするとこの事務所作るのもマズくないですか?」
商人ギルドの職員が、他の組織のために事務所を設置しているのだけど?
「事務所? なんのことですか? わたしは知り合いから建物を借り受けただけですわよ? いまから何に使おうかと考えるところです」
へ、屁理屈だ・・・。
でも、限りなく灰色だけど、黒にはならない見事なグレーゾーンだ。問題にはならないのだろう。
「じゃぁ、マティさん。いまはもう商人ギルドの職員ではないんですか?」
「いいえ、まだ職員ですわ。今夜、日付が変わった時点で商人ギルドバララト支部副支部長職の離職とギルド職員の資格失効が成立します。先日帝都に行ったときに、時間指定で実効されるように手続きをしてきましたから」
「えっと・・・そういうのって誰かの承認とかいらないんですか?」
本人の意志だけで効力があるのか?
「他は知りませんけど、商人ギルドでは必要ないんですの。職員になるとか役員になるとかでは厳重な審査がありますけど、辞めるとなったら自己申告で充分・・・軽いものですわ。誰であれ、理由が何であれ、ライバルが減るのは歓迎っていう世界ですから」
ああ。
納得してしまった。
家族をすら追い落とす人間がいる組織だ。
去る者は追わず、ということだな。
「で、一日の空白時間をおいて明日の夜。日付が変わった時点で、『アルカノウム連合』が発足。わたくしが発起人となって、組織づくりを始めることになります。具体的には会長にハルカ様を、会長代理に自分を指名することになります。よろしいですわよね?」
会長としてオレを担ぎ、実際には代行のマティさんが組織を運営する形。
「ええ。それでいいと思います。副会長にはラカッソでも指名しますか?」
マチリパトナムを代表する人間が必要だ。
町長や村長では困る。
とりあえず、はじめはラカッソに任せておくのがいいだろう。
「その一人、ですわね。副会長は複数として、各協賛団体の代表者全員としようと思いますの。12人くらいまでは、ですけれど」
とすると・・・。
「プーレスさん、コレニ―、リーズン、ハダットさん、も副会長になるわけですか」
「そうなります」
12人くらいまでは・・・ということは。
「あと7人、副会長を立てるつもりというのは、当てがあってのことですか?」
「目星は付けておりますけど。当てはありません」
あらら。
「まだ、感触を確かめただけで本格的な交渉はしていませんので」
ああ、そりゃそうだ。
本格的な交渉を現時点で始めてしまっていたら、それこそ利益相反だ。
「明日は一日お休みをいただきまして、明後日からはバリバリ働きますわよ」
むん!
拳を握って肘を引き締める。
かわいらしくファイティングポーズをとって、マティさんは宣言した。
太刀魚の塩焼き青じそソース掛け、オクラとトマトの冷製スープ、ナスのマリネ。そこに普通のパン。
見た目は豪勢ではないが、メティスなんかに言わせると無駄に豪華なディナーをみんなで食べる。ダイニングテーブルの中央から緑色の光が放射されて、ほんのりと明るい中でのディナータイム。
これまでと変わらない日常の風景だ。
だけど、空気が変わっている。
メティスの周囲にだけ存在した、堅い空気が無くなっているのだ。
一人、必死に防御結界のごとく空気の壁を作っていたメティスが、結界を解除している。
もしかして無理をしてはいないだろうか?
奴隷として扱う、とは言いつつ。家族だとも思っている。
面従腹背よりは、「いやです」と避けられるほうがいい。
・・・タグを覗けば簡単なんだけどな。
わかっているが、それはしないことを自身に何度も確認している。
奴隷として人間を買うようなことをしてはいても、そこは譲れない。そこまで鬼畜になりたくはない。
だから、そっと様子をうかがった。
「・・・・・・」
と、メティスと目が合った。
なぜか、すごく優しいまなざしでオレを見つめていて、目があったとわかったとたん、頬を染めて目を逸らした。
そのまま見ていると、横目で確認してきて、目を合わせる。
二人、無言で見つめ合ってしまった。
・・・よかった。
いやいやじゃないようだ。
昼間言っていたことは本気なのだろう。
一人寂しく老いていくはずだった自分に訪れた、女の幸せ。
心理学的に言えば、パワハラを必要なことだと考えてしまうようなものと同種の心の病気や反応なのかもしれないが、少なくとも現時点でメティスが自分の身がオレのものだという事実を受け入れているならそれでいい。
錯覚でも、幻想でも、間違いだとしても、メティスが幸せを感じられるなら、治すことはない。
奴隷だという事実は、もう変わらないのだから。
「・・・わたくし、今夜は早めに寝かせていただきますわね。明日は朝食もいりません。昼までベッドから出ないという幸福をたっぷりと堪能しますから」
食事を終えたマティさんが、目を閉じてそう言った。
・・・目を閉じているのはなんでかなぁ・・・・・・?
なんとなく、背中や首筋が涼しい気がする。
だが、居候に気を使う理由はない。
これは家族の問題なのだ。
「一応言っておくと、メティスの序列は現時点では五位とする。この順位は探索メンバーを優先に付けていくことにするから、今後探索パーティに人が入れば一個ずつずれていくからそのつもりでな」
ちなみに、優先順位は迷宮探索メンバー、治療院スタッフ、メイドとなる。
なので、順番を付けると1、ミーレス。2、シャラーラ。3、アルターリア。4、リリム。5、メティス。6、フェリシダとなる。
「・・・順位は、気にしません。ご主人様・・・」
洗濯場に続くダイニングでメティスが神官着を脱いでいる。聖職者の正装から、解き放たれる不埒な肉体。
ふくよかな胸、くびれた腰つき、肉付きのいい臀部。それらが見事なバランスでお互いを引き立てつつ存在している。
透き通るような肌が、風呂の湯気とオレの視線にさらされて薄紅色に色づいていく。
胸を大きく上下させて、メティスが息を吐く。覚悟を決めたのか、淀みなく進みきてオレの前に座った。
一糸まとわぬ裸体が、目の前に。
初めての夜恒例、主人手づからのお清めが始まるのだ。
湯気に湿った金髪がしっとりと肩にかかり、逸らすまいとの意思を感じる蒼い瞳がまっすぐにオレに向けられている。
白く甘い乳房にピンクの突起。
可憐だ。
その肌に、泡立てた手ぬぐいを当てる。
「・・・っ・・・!」
漏れそうになった声を、堪えようというのだろうか。唇をキュッと結んだ表情が、妙に情欲を煽る。
声を漏らさせてみたくなる。
せめて吐息だけでも。
ゆっくり、ゆっくり。
肌を、双丘を、霊峰を、谷間を、柔らかな平原と金色の穂に守られた渓谷を、丁寧に拭き上げていく。前が終われば後ろもだ。うなじから背筋へ、臀部の割れ目、太ももの内側、足の裏、指の間まで洗う。
ここまで洗うだけで、メティスは息が上がりそうだ。
でも、まだ終わらない。
髪も洗う。
奴隷となる覚悟の決まらなかった時代を、メティスの全身から拭い去るかのように念入りに、細に入り微を穿つ勢いで拭き清めた。
「これでいいだろう」
存分に堪能したところで解放してやる。
「・・・ありがとう、ございました。ご主人様」
頭を下げてメティスが出ていこうとした。
ほえ?
「なんで出ていくの?」
「え? だって・・・奴隷が浴槽なんて・・・」
なにか言いかけるのを手招く。
横で待っていたミーレスたちが、各々体を洗い始めるのを横目に、メティスはオレの求めに応じて浴槽に入ってくる。
横に座らせて、細い肩を抱く。
お湯と、たぶん羞恥で火照ったピンク色の肌、温まって柔らかく、かつ、しっとりとした肌が心地いい。
「少し古めの神官着を、今日のところは夜着として着ておいてね。正式なものは・・・そのうち買いに行くから」
「・・・わ、わかりました」
本来、神聖な神官着を寝間着にする。
冒涜ともとられかねない行為だが、これも必要なことだ。奴隷に、主以外に敬うべき相手がいるというのはよくない。
それに、いきなり裸エプロンというのもつらいだろうし。
メティスがちょっとホッとしているのも、この頃のミーレスたちが寝るときに付けているエプロンを着なくてはならないのかと不安だったからではないだろうか。
そのあとは、普段通りだ。
ミーレス、シャラーラ、アルターリアにリリムとフェリシダも入ってくる。
さすがに7人ともなると、広い洗い場兼浴槽も狭い感じになるが、キツキツというわけでもない。
もう二、三人ならいけるだろう。
なんなら、オレが真ん中に入ってグルリと一周、女の子に囲ませてもいい。
さらに増えたら、外周と内周の二重にする。
そうすれば15,6人、ぎっしり入れれば20人は入る。
・・・ロマンだ。
風呂から上がれば、いよいよだ。
みんなで、ベッドに入る。
まずは、神官着姿のメティスを抱き寄せた。
その瞬間に気付いた。
メティスに理性が戻っていることに。
夕食時に覚悟を決め、風呂で一度羞恥心を捨ててオレに身を委ねた。それが、また素に戻っている。
だが、もう後戻りは許さない。
許されない。
「メティスさん、綺麗です」
リリムの称賛も、今のメティスには慰めにはならないかもしれない。
「っ・・・」
メティスの顔がみるみるうちに赤くなる。
性に関して初心すぎたメティスに、衆人環視のもとで初体験というのは・・・やはり無理があるかもな。
奴隷として教育を受けた者たちは、周囲に人がいる状況で痴態を晒すのにも慣れてしまっているが、メティスはそういう教育を一切受けないまま奴隷になったのだから当然だ。
フェリシダの場合は、性的な経験値があったから受け入れられた。
教育はなしで、しかも初めて。
受け入れられる女性がいるとは思えない。
「メティス」
「は、はい」
呼びかけると、予想以上に「ビクッ!」となってオレに顔を向けてくる。
瞳を潤ませて、縋り付くような表情だ。
「二択だ」
「・・・」
ベッドの上に膝立ちして人差し指を立てて注意を引く。
メティスは黙ってうなずいた。
「1、このまま全員に見られながらする。2、メティスのベッドで見られずにする。どっちがいい? オレはどちらでも構わないよ」
1を選ぶなら、言った通りミーレスたちに細部までじっくりと見られながら、絶対人目に触れないはずの行為をすることになる。
2なら、子供のころから愛用のベッドで、もしかしたら母親やクレアと寝たこともあったかもしれないベッドでオレに抱かれることになる。
どちらにしても、メティスの中で価値観がいくつか壊れる。
しかも、それを本人に決めさせようというわけだ。
我ながら意地悪だとは思うが、ちゃんと「その時が来たら、激しいかもしれないよ」とか「無理難題を吹っかけるかもしれないから覚悟しておいてね」と警告はしてある。本人も「そのつもり、いつまでもうじうじ言うつもりはないわ」と言っている。
それを思い出してもらおう。
「え・・・」
困ったように目を泳がせるメティス。
「答えを言い辛いなら・・・1を選ぶなら、そのまま仰向けに。2を選ぶなら・・・オレにキスしてもらおうかな」
キスぐらいなら、衆人環視でもしてくれるだろう。
たぶん2を選ぶだろうと予想して、少しハードルを上げてみた。
高くなったハードルを越えてまでも見られながらを回避するか、キスをして秘め事とするか。
「・・・っ・・・」
息を呑んたメティスが、青い目を揺らす。そして・・・。
柔らかな唇が、オレの唇に触れた。
本当の意味で、触れただけのキスだ。が、それで十分だ。
トマトかと思うような真っ赤な顔を見れたのだから。
「じゃ、行こうか」
手を取って、部屋の隅っこのメティスのベッドまで手をつないで歩く。
さっきまで居た寝床と比べると、ずいぶんと小さなベットだ。二人で並んで寝るなら狭いかもしれない。でも、エッチをするには十分だ。
「いいかい?」
あとで思い出したら恥ずかしくて頭を掻きむしりたくなるんじゃないかと思うほど、甘い口調で問いかけた。
その声に反応するように、メティスがオレを見た。
オレの目をただ見ている。
わずかな間。
メティスの表情が、ふっと柔らかくなった。
そして、なにかを思い返すかのように、メティスは一瞬目を閉じる。
目を再び開けた時には、メティスは覚悟の決まった顔をしていた。
「私は・・・ご主人様の、奴隷・・・・・・」
次の瞬間、メティスは自分の服のボタンに手をかけた。
両手で服のボタンを一つ一つ外していく。
服のボタンを半分ほど外し終え、すでに胸元の肌色がわずかに見え始めている。
そして、ついに。メティス自身の手で、最後の防御が取り払われ。完全降伏し、オレに支配されることが定まった山河が、目前に差し出された。
必死に声も吐息も抑えるメティスを、時に気遣い、時に意地悪をしながら可愛がって上り詰めさせる。
待たされた反動か、ちょっと念入りに堪能しすぎてしまった。
肉感がすごく柔らかくて熱くて・・・メティスの身体はとても美味だったのだ。
なので、あとは興奮が限界のシャラーラを満足させるだけにとどめて寝てしまった。
ちなみに、メティスは寝るのもいつものベッドだ。
治療院を構える治癒魔法士としては、フェリシダ同様にオレたちと一緒に寝るというわけにはいかない、とのことだった。
真夜中や朝方、急患が来るかもしれないというのが理由だ。
ありえない話ではないのだろうと思う。
特別扱いになっちゃうかな? と思ったが、意外にもミーレスたちも推奨したので、寝るベッドは別々でいいことにした。
なんでだろうって考えたが、答えは意外に簡単に出た。
フェリシダのときと同じだ。
オレが命のミーレスやシャラーラ、リリムにしてみれば、オレの寝るベッドに寝るのは・・・オレと添い寝するのは自分たちだけの特権ということで、ベッドを別にすることに、ほんのちょっとの独占欲を満たせるのだろう。
ほんのちょっとだし、こんなことで不仲になられても困るから、この譲歩はありがたい。
欲を言えば、全員を一つのベッドというか寝床に侍らせてみたいとも思うが、現実問題としてオレは腕が二本しかない。
一度に抱きしめられるのは二人が限度。
布団代わりに女の子の腹の上に寝るなんてできないし、掛布団にするのも無理。
最大限無理しても、誰かの腹を枕にするぐらいしかできない。
なら、同じベッドで寝ることにこだわる意味はない。
「ぁ・・・」
小さな吐息。
弾力のあるミーレスの胸に顔を埋めて、オレは眠りについた。
ミーレスの鼓動が、安眠に誘ってくれる。




