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異世界で家を買いました。  作者: 月下美人
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よそく


 「ご主人様、お昼の用意が・・・わあっ!?」

 ちょうどいいタイミングで、昼の用意が整ったらしい。

 オレを呼びに来たミーレスが、トイレの中を覗き込んで歓声を上げた。

 「いいだろ? 気持ちよく使ってくれ」

 「素敵です!」

 いつかのように、二人で手を取り合い軽く飛び跳ねた。

 ついでにバードキスの応酬を少しだけして、ダイニングへと向かう。

 「なに、はしゃいでるのよ」

 声が聞こえたらしい。

 メティスが眉を寄せている。

 「トイレの壁をリニューアルしたんだ。変なとこもあるけど、まぁよしとしてくれ」

 「そう・・・明るくなっていたものね」

 半分だけとはいえ、以前に比べれば明るくなっていたのは間違いない。それが、壁全部に広がれば、かなり明るくなる。

 自分の実家がリフォームされていくというのは複雑なのかもしれないが、な。

 食事を終えるとフェリシダが皿洗いをする間に、メティス以外の全員がトイレを見に行っていた。

 ミーレスもオレにコーヒーを淹れたあとで、もう一度見に行っていたからかなり気に入ったのだと思う。

シャラーラやリリムともどもはしゃいだ声を上げているのが、リビングにいても聞こえていた。膝の上には読みかけの本もある。

 異世界での暮らしもだいぶ板についてきたように思う。

 優雅なひと時だ。

 そこで、呼び鈴が鳴った。

 客らしい。珍しいこともあるものだ。

 コーヒーの入った蒼天のカップをテーブルに置いて立った。

 ダイニングで手を拭くためにタオルに手を伸ばそうとしていたフェリシダを留めて、玄関に出る。

 すぐにミーレスも来そうだが、どのみちこの家に用がある人間が会いに来る相手はオレかメティスだ。そして、たいていは結局のところオレの判断が必要になるだろうから。先に出てきても、リビングで待っても、あまり変わりはしない。

 「こんにちは、ハルカさん」

 ドアを開けると、そこには笑顔のクレアがいた。

 「や、やぁ、クレア。数日ぶりだな・・・」

 「はい、あれから忙しくて。・・・夕食すっぽかしてしまってすみませんでした」

 背中が見えそうなほどの深いお辞儀をしてくる。

 「そ、そうか。まあそんなことはいいんだが」

 クレアの分の夕食はシャラーラとマローネ、それにリリムで片付けてくれたし。

 あとで気づいたのだが、クレアと夕食を一緒にしたとして、ミーレスたちをどう紹介したものかという問題があったのだ。

 もちろん、迷宮の探索メンバーだと言えばいい。

 でも、女ばかりなことは一目瞭然。

 奴隷だということもクレミーたちがいる以上即刻バレる。

 そうなったら、当然ながらメティスもいる家の中で、奴隷を五人も囲って何をしているのか。ということになるのは確実だ。

 オレの言訳の仕方によっては「ハーレムを作ろうとかしている不誠実な人と、私の大切なお姉ちゃんを一緒になんて置いておけません!」とか言ってくるかもしれない。

 ド正論だ。

 クレアはメティスのことが、それはもう大好きだ。

 シスコンなんじゃないかってぐらい大好きだ。

 現実を知ったら、マジで斬られるかも。

 不安を持つオレには気付く様子もなく、クレアはダイニングの方を覗き込むようにしながら聞いてきた。

 「お姉ちゃんは、今いますか?」

 「あ、いや。治療院の方だ」

 「そうですか」

 クレアはそれだけ聞くと、視線を戻す。

 それからスゥッと息を吸うと、オレに見せつけるような深い溜め息を吐き、しぶしぶといった雰囲気で口を開いた。

 「お姉ちゃんがいない今のうちに言っておきますね、大事なことなので。・・・私、確信しました。お姉ちゃんはハルカさんのこと好きです。間違いないです」

 「・・・そうか?」

 いきなり何を言うかと思えば。

 いや、でも貴重な意見だ。

 奴隷だからと言っていやいや抱かれるのも、・・・まあ嫌いじゃないが。長く付き合うならやはり好かれたい。

 好きになってもらえるならそれが一番いいに決まっている。

 「本当です。手紙の内容と、先日のハルカさんを見ていて確信したんです。お姉ちゃんの性格を誰よりも知っている、妹のこの私が保証します」

 クレアの判断では、オレは好かれているらしい。

 「それを伝えてないのは、私のことで迷惑や心配をかけたくないからだと思うんですよ。それでも一緒にいるのは、好きだからだって思うんです」

 少し目線を伏せながら、そう言うクレア。

 ただ、その判断には致命的な問題がある。

 クレアの考えは前提を間違えているのだ。

 「まぁとにかく、私は奥手なお姉ちゃんの恋が成就するように応援しています、ということです。そうじゃないと、お姉ちゃんて嫁き遅れそうですし」

 ともかく、メティスがどう思っているかが、クレアの最優先の行動原理ということか。

 判断の根幹が間違っているんだけどね。

 「・・・って、えーと。それを言いにわざわざ来たのか?」

 「あ、いえ。鎧を預けっぱなしなので回収に来たんです。あと、ウンクラウルススの件は報告したっていう報告をしに。もう二日も前に死体の回収も済んでるんでいまさらですけど」

 あー、それか。

 クレアの鎧なら、ミーレスが完璧に整備し直して、すぐ隣の空き部屋に置いてある。

 にしても、ウンクラウルススの死体の回収か、忘れてたな。

 じつは、ふっとばされたクレアの腕と足は回収済みだ。

 転移して戻ってくる時に一緒に転移させておいて、空間保管庫の空き空間に入れてある。

 昔のテレビドラマでやっていた光景が、クレアの斬り飛ばされた腕を見ていて思い出されたからだ。

 人の爪の欠片を種として、全身を培養。一人の人間を再現して自分のモノとして飼いならすっていう話だ。

 ドラマ上では、その培養した相手に殺され、同じように培養されて復活。つまらないことで相手を殺し・・・の連鎖がエンドレスで続くっていうもやもや感が満載のストーリーだった。

 肉体損壊も治すマクシムムサナーレ。

 それは、脳や心臓のある本体から失われた部位を再生するだけのものなのか。逆に、本体から切り離された部位から脳や心臓まで再生できてしまうのか。

 その実験をやってみたかった。

 普通に考えれば、切り取られた腕から他の身体を再現するのは治療ではない。

 でも、腕をなくした人間の身体に治癒魔法をかけて元に戻すのは治療に分類されている。

 この二つの現象の差ってなんなのか?

 どちらも、存在している部位から、失われた部位を再現するという点では同じだ。

 DNAを基にしてクローンが作れることから考えれば、腕であれ爪であれ、DNA情報が失われてさえいなければ、いわゆる生活反応の残っているうちなら、全体の再現も可能なのではないか? と。

 ・・・いますることじゃないんだけどな。

 リリムのときの経験から言っても、かなりの魔力を使うことになるだろう。

 今はまだ、挑戦できる体制が整っていない。

 とりあえず保留だ。

 空間保管庫の中は時間停止状態だから、腐敗するとか劣化の心配もないし。

 「あとは・・・あ、そうそう。騎士仲間の一人が話してるのチラッと聞いたんですが、ハルカさんって実はお金持ちなんだそうですね?」

 金持ち、か。

 まあ、どっかの貴族のお坊ちゃんの治療だなんだで少し褒賞をもらったりしているからな。そう言えなくもない。

 あと、奴隷を何人も連れているっていうのもクレミーたちから伝わったりもしているのだろう。

 否定も肯定もしにくいので、聞き流した。

 移動部屋から、装備を一式出してやる。

 そこが装備の保管庫とメンテナンス部屋をも兼ねているのだ。

 「おお!? 丁寧に手入れがされている! ありがとうございます」

 出してやった装備を早速身に着け、クレアは騎士が時々やっている敬礼を一つくれて戻っていった。

「さて、迷宮に行こうか」

 ダイニングのほうに気配を感じて、そう呼び掛けた。

 迷宮だ。

 迷宮が呼んでいる。

 そそくさと準備すると、苦笑顔のミーレスたちを連れて転移した。


 14階層ではいきなり初顔と対面した。

 『エンペラドル』。茶色で全体に不規則な網の目状の模様が広がっている。

 名前はなんか絢爛豪華そうな響きだが、意外と地味だ。

 で、相変わらずのモアイ。

 ただ・・・。

 バチバチッ!

 「うぉっ?!」

 飛び出していったシャラーラが急ブレーキをかけて立ち止まる。

 モアイの全身(?)から、エネルギーフィールドぽいもの、が放出されたのだ。

 赤い電撃っぽいなにかのエネルギーが、モアイを球形のバリアなのかシールドなのか、それっぽいなにかで囲んでいる。

 これでは迂闊に近寄れない。

 「なら、近寄らなきゃいい」

 簡単に答えを出して、指さした。

 「『フルメンファルクス』!」

 エネルギーにはエネルギー。

 アルターリアの魔法が炸裂した。

 モアイごと一撃で葬り・・・去るのは無理だったが、エネルギーフィールドは消滅した。エネルギーフィールドがなければただのモアイである。

 カロンのお昼ごはんになるのに時間はかからなかった。

 『ドロップアイテム』は『エンペラ―ドール ダーク300角』。モアイの模様とまったく同じ石のタイルだ。

 その後はこれまで通り、既出のモアイを撃破しながら進む。

 ドロップアイテムの種類はまた増えた。

 白系の『フィオール デペスコ300角』。青・黒系の『ポルトーロ300角』。緑系の『セルバグリーン300角』といった具合に。

 違いは確かにあるんだけど、柄の微妙な違いでしかないので、言葉にはしにくい。

 「違う石です」。と言われて見れば「あー、そうなんだ」と納得できるが、何も言われずに並べられたら個体差としか思わない感じだ。

 「午前中のと今のとで、違いとかわかるか?」

 『アラベス』を倒して、二つ目の『フィオール デペスコ300角』を持ってくるミーレスに聞いた。

 小首を傾げてまじまじとミーレスは手に持ったタイルを見て一言。

 「色と線の雰囲気が・・・そう言われると違うかもしれません」

 うん。そんなとこだろう。

 タグで名称の違いを読めるオレにしか、違いがはっきりと分からないようだ。

 並べて貼れば違うと判別できるのだろうが、間に別のタイルを挟んだりしたらわからなくなるんじゃないかな。

 石材に精通した職人とかのこだわりがある人なら、まったく同じもので統一したくなるのだろうが・・・。

 オレはいいな。

 色味だけ合わせて、柄はばらばらに使ってしまおう。

 この時点で、オレはそう結論付けた。

 家の壁を全部同じタイルで統一とか考えたら、この迷宮の同じ階層だけをぐるぐる回るはめになる。

 そんなことをする気はない。

 あるいは、これも迷宮の攻略を進ませないための罠なのかもしれない。

 だとしたら、自ら罠に嵌ってやることはない。

 各モアイに三回か四回ずつ出くわしたあと、ゲートキーパーが見つかった。

 『ジョゼフ』。全裸に豪奢なマントを羽織り、武骨な棍棒を持って立つ髭面の男だ。

 「ニコラ・クストー作『ヘラクレス』か!」

 やっぱり見覚えのある像が思い出されたのでツッコんだ。

 原型は確かに大理石だが、復刻されて展示されているのはブロンズ像のはずだぞ。

 ズドン!

 頭の中だけでツッコミを入れていると、ミーレスの棒が突っ込まれていた。

 股間に。

 棒を突っ込むなら尻にして!

 ・・・いやいや。

 見ていると、自分のことのように股間が寒くなるので、逃避しただけだ。

 あ、いや、でも・・・。

 ミーレスかアルターリアになら・・・・。

 服の下のアクセサリーなんてものがあるんだから、もしかしてペニバンなんかも・・・。

 コホン!

 ともかく、男の敵は潰えた。

 『ドロップアイテム』は『ロッソレバント300角×15』だ。

 黒と言っていいくらい濃い紫色の石で、白い帯状の線が縦横に走っている。

 割と好きな石かもしれない。

 ただし、シートではなくタイルになった。

 シートならそのまま貼れるが、タイルになると目地を塗ったり接着剤使ったりと大変だ。その大変さを省いているという点でシートが『レアドロップアイテム』なのだと思っていたのに、タイルになったわけだ。

これは、あれだろうか?

 「石の勉強してすでに3階層上がった。もう素人じゃないのだから、タイルぐらいちゃんと貼れ!」ということなのか?

 ×15の、増えた5枚はそのことへの代償のつもりか?

 オレにとっては、シートもタイルもあまり変わらないからどうでもいいが。

 この迷宮を作った神様は、手順通りに作業させる、まさに職人気質なのかもしれない。

 15階層に入った。

 現れたのは『アズール』だ。

 青・黒系の石が手に入るはずで、まさにその通りだった。

 手に入った『ドロップアイテム』は『ベルジャン ブルーストーン300角』。ブルーストーンと言いながら、重厚感のある漆黒の石だ。

 出てくる魔物は同じでも、手に入る『ドロップアイテム』は階層ごとにかわるのだろうか? 全部で何種類用意されているのかと気が遠くなってきた。

 『アラベス』、『インペリアル ダンピー300角』。

 『ベルデ』、『グリーン マーブル300角』。

 『エンペラドル』、『エンペラ―ドール ライト300角』。

 うん。色合いや模様が微妙に違っている。

 違っているが、取り立てて言うほどの差があるかというと、これまた微妙な感じがした。

 15階層の魔物はと言えば、『トラバーチン』。赤いモアイだった。

 シャラーラが接近すると火を吐いてきたが、直後に加速したシャラーラの動きについてこれず、火は何もない空間を通り過ぎるだけで役には立たなかった。

 倒すと、『レッド トラバーチン300角』というドロップアイテムを残した。

 魔物の見た目的にも、名前的にも容易に予想できたが、赤い大理石だ。

 ゲートキーパーは・・・またしても前を隠さない男の象だ。

 『ミシェル』。などという名前になっているが、オレにはレオシャレス作『ベルヴェデーレのアポロン』にしか見えない。

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 もはや、シャラーラとミーレスは無言で叩き潰してくれる。

 『レアドロップアイテム』は『ライトオニックス300角』。初めて出てきた黄色の大理石だ。

 はっきり言おう。

 ここまでで、オレは少し緊張感をなくしかけていた。

 敵はモアイばかりだし、ゲートキーパーは羞恥心のない雄ばかり。

 自爆する魔物で少しあせらされた以外は、順調だ。

 気も緩む。

 しかし、16階層に入ったところで、ちょっと引きつった。

 モアイじゃなくなったのだ。

 11階層以降に現れたゲートキーパーがうろついていた。

 正確には『ダヴィデ』だ。

 ここはクレタ島か!?

 いや、クレタ島を守っていたのはタロスだ。タロスは青銅だった。大理石じゃない。

 「だから、前くらい隠せよ!」

 思わず叫んでしまった。

 「んだ! つまんねぇ飾りもんに用はねぇだよ!」

 「ご主人様のほうがずっとずっと素敵です!」

 「めざわりです!」

 シャラーラ、ミーレス、アルターリアの容赦ない攻撃が石像を破壊していく。

 オレのそばには三人もメディアがいた・・・ようだ。

 タロスを殺すには、やはり美しい魔法使いが一番ということか。

 いや、だから、タロスじゃないって!

 タロスはヘファイストス――鍛冶神――の管轄だ。

 建築じゃない。

 『ドロップアイテム』は・・・。

 「カプセルか、なんで?」

 『デスモボロス』の迷宮ではもはやおなじみの魔法のカプセルの中に、タイルが三枚入っている。『スノーホワイト300角』だ。

 階層が上がったので3枚に増えたのだろうが、それにしたってカプセルに入っている理由がよくわからない。『レアドロップアイテム』として15枚のタイルがドロップしたときですらカプセルなんて便利なものに入っていたりはしなかったのだ。

納得できる理由を思いつけず、首を傾げてしまう。

 「ご主人様!」

 ミーレスの声で振り向くと、新たな敵がいた。

 『ジョゼフ』君だ。

 もうすでにシャラーラが接近して、サンドバッグとして使い始めている。

 そこに、ミーレスがすかさず参加して、見事な彫像を完璧な石くれに変えていく。

 こともなげに粉砕して、ミーレスが『ドロップアイテム』を持ってきてくれた。

 「あれ?」

 思わず声が出た。

 「あの、なにか問題がありますか?」

 うつむいて上目遣いになったミーレスが聞いてくる。

 年上なうえにとっても強い美人にこんな態度を取られると、本当に困る。抱きしめてキスしたくなってしまうからだ。

 まだ迷宮にいるというのに。

 「あ、いや! 問題はない。ちょっと『ドロップアイテム』が意外だっただけだ。気にするな」

 本当だ。

 弁解しながら、カプセルをリュックサックに放り込む。

 『ダヴィデ』君のときと同じ、タイルが3枚入ったカプセルだ。

 カプセルになっているので、多少乱暴に扱っても割る心配はない。

 それはいい。

 意外だと言ったのは、その三枚のタイルが『スノーホワイト300角』だったからだ。

 これまでは、敵が変わればドロップするアイテムも変わっていた。それが、敵は変わっているのに、アイテムは同じという今までにない現象が起きている。

 そこに驚いてしまったのだ。

 今度は、階層が同じなら敵が違っていても同じ『ドロップアイテム』しか出ないという仕様に変わったのだろうか?

 こういう疑問も、リティアさんの全面協力を得られれば無意味になるのだろうと思うと、本当に残念だ。冒険者ギルドがさっさと、クビにしてくれますように、そんな祈りを捧げたくなってしまう。

 その後、『サンタ・マロン』なんかも倒しながら進む。

 ゲートキーパーが見つかった。

 「ほお!」

 思わず前のめりになってしまった。

 無防備な女性がいる。

 と言っても、もちろん大理石製だ。

 裸体に腰布を巻き付け、両手で髪を整えている美女。

 ジャン・パティスト・カルポー作『水浴びするビーナス』だ。

 ビーナスの名がつくだけあって、当然のごとく美女である。

 あ、いや。

 タグの中での名前は『イサベル』になっているから、ビーナスとは関係ないかもしれない。『水浴びする ビーナス』というのはあくまで、オレの主観だからな。

 それが、髪を振り乱して襲い掛かってくる。

 せめて、鬼の形相にでもなってくれればいいのに。

 無表情のまま、髪を振り乱して両手を突き出しながら突進してこられると、ものすっごく怖い!

 「・・・」

 無言のミーレスが、滑らかに動いて・・・。

 「うげっ!」

 『イサベル』の顔を叩き割った。

 すかさず、シャラーラの鉄拳が両の乳房を砕く。

 オレのそばを、スッと風が動いたかと思うとアルターリアが伸ばした腕の先で、鉄の棒が胸をえぐっていた。

 わずかな硬直のあとで、美女だったものは爆破されたかのように魔素となって弾けた。

 カロンが、すかさず吸い尽くす。

 一瞬の連携で、美女は顔を失い、胸を潰され、破壊された。

 本当に怖いのは生きている女性である。

 肝に銘じよう。

 ドロップアイテムは『ゴールデン マーブル300角×15』。

 ゴールデンと名がついているが、実際には黄色っぽい茶色で表面がごつごつしいる感じに見える。触ると少しザラザラした感触があった。

 カプセルには入っていない。

 なんでだよ!

 15枚のタイルをばらばらとリュックサックに入れる者の身にもなれ!

 3枚をカプセルに入れるのなら、15枚も入れてくれるくらいの親切心があってもいいんじゃないのか?!

 『ドロップアイテム』の出現の仕方には、常々不条理を感じてきたが、今回は本気で訳が分からない。

神というのは、本当に何を考えているのやら・・・。




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