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異世界で家を買いました。  作者: 月下美人
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ディナー

 「くっくくっ・・・まぁ、最悪の事態になったときでも引き取り手があるというのは安心よね。で? 何か用があってきたの? 昨日言ってたディナーのお誘い?」

 「ああ、そうそう。実は買い物をしたかったんですよ。もちろんディナーの誘いもですけどね」

 「買い物?」

 不思議そうに首を傾げられた。

 「『移動のタペストリー』、ここで買えるって聞きました」

 「あ、そういうこと。確かに買えるけど、『どこの』が欲しいの?」

 「どこのでもいいです。行き先で値段が違うのなら安いところのをいくつか見繕ってください。とりあえず五枚は欲しいんですけど?」

 そう言うと、リティアさんは頭の痛そうな顔でオレを見つめ、実際に頭を抱えて溜息をついた。

 「はぁぁぁぁ、あんたは! ほんとにっ! 会うたびに小一時間問い詰めたくなることを言ってくれるわよねっ!!」

 何か怒られてしまった。

 「やっぱり、変ですかね?」

 「ったりまえでしょ?! 行き先はどうでもいいから『移動のタペストリー』が欲しい。それって矢はないけど弓をくれっていうようなことよ?」

 そのものの存在価値と目的が合致しないものになる、と言いたいわけだ。

 『移動のタペストリー』は目的地に行くためのもの。弓は矢を射るためのもの。それなのに、行き先はどこでもいいとなったら、射る矢はないとなったら、どうなるか・・・。

 普通なら価値がなくなる。

 「まぁいいわ。深くは追及しないでおいてあげる。どこのでもいいのね? 五枚?」

 「はい、お願いします」

 部屋を出ていくリティアさんに小さく頭を下げて、オレは財布代わりの布袋を取り出した。と、ここで ちょっと血の気が引いた。

 ・・・値段聞いてないんだけど・・・。

 「み、ミーレス。『移動のタペストリー』がいくらくらいかなんて知らないよな?」

 知らないとは思うが一応聞いてみる。

 「私の知る限りでは最高値が150万ダラダ、最安値は5000ダラダです」

 知ってた!

 じゃないっ!!

 なにその差?!

 「ず、ずいぶん差があるね?」

 「通常、『移動のタペストリー』というのは軍の管轄です。いつでもどこにでも行けるというのは治安を守る側からすると最悪の悪夢なので」

 それは、当然そうだろうな。

 レーダーにも衛星カメラにも映らずに他国の領域に入り込める爆撃機とか、無音で航行可能な潜水艦。警備をかいくぐれるテロリスト。

 そんなものがあるなら、治安を守るものにとっては悪夢以外の何物でもない。

 「それは商人ギルドにも言えます。儲けの出る街との商業ルートは各商人の生命線であり、ギルドの占有特権です。ですから、商人ギルドは『移動のタペストリー』を持っていても絶対に売りに出すようなことはありません」

 それも、もっともだ。

 誰もが自分と同じ商品を、同じ販路で売っていれば、その販路内の物価が変動して、価値を落としていく。

 それを避けるため、扱う商品の種類と、売り歩く場所とは何となくではあっても住みわけがなされるものだ。

 『移動のタペストリー』を売るということは、その住みわけが崩れる可能性にもなりかねない。売り物にはしたくないだろうな。

 移動時に通行料を徴収できなくもなるし。

 「そんななか、冒険者ギルドが『移動のタペストリー』を販売するのには訳があります」

 「それは?」

 「帝国軍による緊急動員が掛けられた時のため、いくつかの地点へのルートを確保しておく必要があるからです」

 つまり、災害や他国からの軍事介入。そういったことが起こりやすい地域に対して、人員派遣の要請が来ることがある。そのため、そう言った地域へのルートを常時確保しているのが冒険者ギルドなのだ。

 リティアさんに何度か説明されたように、高い魔法力を維持している職種と言えばダントツで冒険者、被災地や戦地に物資を緊急に搬送しなくてはならない、なんてときにいの一番に駆り出されるのが彼らなのは当然だ。

 冒険者が、商人ギルドで運送業の副業をしているのは、そういったことが下地にあるからでもある。

 「ですが、常時確保しているというのは維持が大変なので、欲しい人がいれば売るようになった、ということなのです」

 「で、移動先の重要度や必要度によって金額が変わる、と?」

 「そういうことです。それに、冒険者ギルドが所有する『移動のタペストリー』というのは、そのギルドの近隣にある支部と迷宮。そして、さっき申しましたいくつかの地点のものです。戦争や災害時には大量に必要でたくさん作ったものの、今はめったに使わない、などというものはかなり安くなっていると思います」

 それもわかる。

 災害直後は必要で必死に作られる仮設住宅、それなのにその末路はひどいものだ。

 「私が昔いた場所のものも、たぶんここにあるはずです。それならもしかすると1000ダラダぐらいで買えるかもしれません」

 昔いた場所・・・安くなる・・・。

 戦場にいたってことなんだろうなぁ。

 やはり貴族で軍人だったのだ。それもかなり高い地位の。

 「もってきたわよ」

 さらに深く聞くべきかどうか、一瞬考えそうになったところにリティアさんが戻ってきた。ナイスタイミングだ。

 「どこのでもいいのなら、7枚とも同じでいいでしょ」

 ・・・おい。

 「5枚と言った気がするのですが?」

 「5枚『は』欲しいと言ったわよね? それはつまり『最低』5枚ってことで、2枚増えたぐらいでグダグダ言わない! 一枚1200ダラダのところを7枚で8500にしてあげるから」

 それなら・・・て。

 まて!

 「100ダラダ増えてますよね?!」

 「チッ・・・バレたか」

 「100ダラダ誤魔化そうとするなんて・・・」

 思いっきり憐みの瞳で見つめてあげる。

 「じょ、冗談よ! 本気なわけないでしょうが!」

 わかっている。

 実際には、リティアさんが持ってきたのは9枚だ。

 「1000ダラダのが7枚と1500ダラダのが2枚で金貨一枚!」

 どうだ?!

 とばかりにテーブルの上に広げられた。

 「5枚と言っていたのに何で9枚になるんですか?」

 「地下で埃かぶってたのが9枚だったからよ! 仕事取られたから、奥の倉庫の掃除してて見つけたものなの。文句ある?!」

 ああ。

 倉庫整理してたのか。

 仕事がないと自分で探しちゃうタイプなんだ。

 リティアさん、根はまじめな人なんだなぁ。

 そうでなきゃ、あんな分厚い図鑑作ったりしないよな。

 でも、物欲主義は健在のようだ。

 たぶん、誰も管理していなくて忘れ去られていたのを発見。廃棄処分かなぁと思いつつ置いておいた。そこにオレが来たんで売りつけようってことなのだろう。

 五枚はあったはず、と取りに行ったら九枚あったんで全部売りつけようってことか。

 「文句はありません。いいですよ。それで買い取らせていただきます」

 それはつまり、金貨一枚はギルドではなく、リティアさんの懐に入るということ。

 オレは気分良く支払った。

 「それはそうと、そういうことですと暇ですよね? 綺麗になるのは好きですか?」

 リティアさんが金貨をしまうのを待って、聞いてみた。

 綺麗になるのが嫌いな女性なんかいない。さっきはそう考えたが、ミーレスに落ち込まれて考え直した。

偏見というか男の独善的な考え方だった、と。

 そもそも「綺麗」の定義が違う可能性がある。

 オレのクラスメイトの女子にもいた。

 いつでもきっちりと髪をまとめて後ろで縛っていた子だ。

 その髪型のせいで老けて見えるし、冷たい印象を受けてしまうのだが、その子も期間限定で髪を下ろすことがあった。

 梅雨の時期になると湿度で髪が縮れるので、どうやってもきっちりとならない。

 そうなると縛るのをやめるのだ。

 結果、いい感じにウェーブがかかった髪型となって、綺麗なお姉さん的な風貌となる。

 友人の女子連中が、絶対下ろしてる方がかわいいっ! と何度も言っていたが、「きっちりしてるほうが好きなんだもの」と言って梅雨が終わるとまた元に戻していた。

 宝の持ち腐れ、と男女ともに嘆いていたが、本人には迷惑な話だったろう。

 人によって美意識は異なる。

 自分にとっての「綺麗」を他人に押し付けるべきではない。

 「綺麗ねぇ。それって、その子みたいにってことでしょう?」

 ミーレスを指さして聞いてくる。

 最高にメイクアップしたミーレスを。

 「そういうことです」

 オレは頷いた。

 「いいの?」

 なんか、スッゴイ笑顔で聞いてくる。

 「えっと・・・なにがでしょうか?」

 金がかかると思われているのかな?

 そんな風に考えていると、リティアさんがずいっと顔を近付けてきた。

 「私がメイクなんかしたら、あなた、私の虜になっちゃうかもよ?」

 ああ!

 男を惑わす女妖怪の血が流れているんだった。

 ただでさえ、男をその気にさせちゃう人が本気のメイクなんかしたら、それはそれはすごいことになるわけだ。

 「み、ミーレス? オレがリティアさんの虜になっちゃったら、取り戻せる?」

 「え?!」

 真っ青な顔でオレを見る。

 「じ、自信はありませんが、絶対に取り戻しますっ!」

 悲壮感を漂わせて宣言した。

 「と、いうことなんで、大丈夫です」

 「あはははは! そっかそっか、なら、いいわよ。ラブティスの店でしょ?」

 楽しそうに笑って、リティアさんはこともなげに店を当てて見せた。

 「わかりますか?」

 「もちろんよ。帝都に住んでいるんだもの、流行りくらい押さえてるっつうの」

 ミーレスが聞きこんできたように、帝都では今流行最先端の店だったようだ。

 なら話が早い。

 着替えのためにリティアさんが部屋を出て、オレたちも反対側の出入り口からロビーへと出た。

 「ご主人様」

 と、ミーレスに手を引かれた。

 何事かと見れば、ミーレスが目を向けている先に、アルターリアとマティさんの姿があった。予想していたより早く、手続きとやらが終わったらしい。

 「わぁ! 本格的なメイクをしていらっしゃいますね」

 合流したマティさんの第一声がこれだった。

 驚いた、というか・・・羨望?

 「マティさんにもしてもらうつもりなんですけど?」

 「え? な、なぜですの?」

 目をパチパチさせて、首を傾げられてしまった。

 「いえ、えーと。ミーレスたちがみんなするので、マティさんもしないかなぁ、と。興味、ありませんか?」

 そういえば、マティさんもほぼすっぴんだ。

 メイクは嫌いなのだろうか?

 「興味はございますわ。ただ、している時間がありませんので、したことはないですね」

 忙しいからあえてしていなかったと。

 「今夜はちょっとしてみましょうよ」

 誘導してみる。

 「ハルカ様に言われると、反発する気になれないですわね」

 「他の男だとダメなんですか?」

 「ダメとは言いませんが、相手にイヤな思いをさせずに受け流す方法をまず考えてしまうと思いますわ。職業病かもしれません」

 人との付き合いが、そのまま仕事であることの弊害ということだ。相手の誘いにいちいち付き合っていたら、身が持たないもんな。

 「おまたせー!」

 赤ではなく深緑色のベレー帽をかぶって、リティアさんも戻ってきたので、全員でラブティスの店へと向かった。

 ラブティスの店では、ちょうどフェリシダもメイクアップが終わったところだった。

 「次はアルターリアな。で、マティさん。最後がリティアさんで頼みます」

 店の隅にシャラーラとリリム、メティスと一緒にいたラブティスに頼む。彼女はリティアさんを見て、目を輝かせていた。

 人生最高の喜び、なんて言葉も出ていたから相当のものだ。

 もっとも、その言葉はオレのものでもある。

 モデルや女優にだってここまでの人は数える程度しかいない。それほどのレベルの女性が、オレを取り巻いている。

 「我が人生に一片の悔いなし」

 ちょっと呟いてみる。

 でも、なぜか違和感があって、即座に首を振って打ち消した。

 まだまだだ。これでゴールとはしたくない。

 「これからもよろしくな」

 ミーレス、シャラーラ、リリム、アルターリア、フェリシダに向かって言った。メティスがちょっと寂しそうだったのはオレの勘違いだろうか?

 「はい。ご主人様!」

 ミーレスたちが嬉しそうだったので、良しとしよう。

 化粧台に向かうアルターリアの背中を、オレは見送った。


 結論から言うと、オレはリティアさんの虜にはならなかった。

 もちろん、メイクノリが素晴らしくて、リアル女神だったのは間違いない。

 ただ、オレの横にはリティアさんに比べれば一段下かもしれないが、十分な美女が六人いた。美女が六人いれば、女神にだって対抗できるということだ。

 んで、化粧品も大量に買うことになった。

 家具を買った時ですらそうそう見なかった、金貨が数枚消えていくのを見た。

 なにしろ、うちの女性陣全員分なのだ。

 共通で使える化粧水や乳液はお得サイズで、各人の皮膚や髪の色に合わせたファンデーションにアイブロウほか。

 大量の荷物はフェリシダの空間保管庫を利用してしまってもらい、金貨を四枚と銀貨も何枚か支払った。

 これも本日二度目の感想になるが・・・女性って大変だ。

 マジで。

 『レマ・ティコス』はちょうど夕食時で、そこそこ席が埋まっているのが、外からも見えた。空いてはいないが、混んでもいない。

 「いらっしゃ・・・きゃあぁぁぁ!!!???」

 鈴を鳴らしながら扉を開けたら、扉の向うで迎えてくれたアリシィアが悲鳴を上げた。

 何事!? と店内にいた人々、客も従業員も、こちらに目を向けて、時間が止まった。

 シーンと静まり返った店内で、すべての人が動きを止めている。

 そこまでの・・・ことだよなぁ。

 ちらっと後ろを見ると、マティさんが口を押えて肩を揺らし、リティアさんが後ろ頭を掻きながら笑っている。

 どちらも悪夢のように美しい。

 「えーと、なるべく奥の部屋頼めますか?」

 悲鳴を上げた体勢と表情のまま固まっているアリシィアに、恐る恐る声をかけた。

 「・・・はっ!? え、ええ。もちろんです。どうぞ」

 口元と目元とを引きつらせたアリシィアに案内されて、奥の目立たないテーブル席へ。20人ぐらいが座れそうな席だが、オレたちだけで独占させてもらった。

 「『レヴィアタンのなんでも盛り』と飲み物を人数分ね」

 先日耳にしたパーティー料理を頼んだ。

 前回のように、個別に頼むのもこの人数だと大変だ。「なんでも盛り」と言っているのだから全員、どれか好きなものを見つけられるだろう。

 ・・・と思う。

 飲み物はノンアルコールだ。

 元世界の我が家は田舎だから、祭りなんかがあると未成年でも酒を勧められることは少なくない。何度か飲んだことはあるし、それで酔っ払って前後不覚になったなんてこともないが、好んで飲みたいと思うものではないと思っている。

 オレがそういう考えなので、周りの大人も安心して勧めてくる感じだ。勧める行為が楽しいのであって、飲ませるのが目的ということではないのだ。

 酒を飲ませるとすれば、ミーレスとかアルターリア、メティス辺りを酔わせてみたいというのはなくもない。が、それはいつかそのうち、家でやろう。

 個別に指定せず、「飲み物」と言った場合『レマ・ティコス』ではその日に多く仕入れた野菜と果物のミックスジュースが供される。多く、というのは旬なので需要があると判断して仕入れた、という意味で安いのを大量にということではない。

 「我が家にフェリシダが加わったことと、『アルカノウム連合』の発足を祝して、乾杯!」

 全員にグラスがいきわたったことを確認して、乾杯の音頭を取った。

 乾杯という風習がないかもという不安はない。『レマ・ティコス』で食事をしていた時に何度か乾杯という掛け声を聞いている。

 世界が違っていても、何もかもが違うわけではない。

 「乾杯!」

 それでも、応じてくれたのはミーレスとシャラーラ、リリムだけだった。

 あれ?

 「あのね」

 頭の痛そうな顔で、リティアさんが笑っている。

 「普通乾杯って、最後にするものよ?」

 え?

 「宴席で、食べ始める前のきっかけとして行われるんじゃないの?」

 「ハルカ様のところではそうなのですわね。こちらでは、終わりましたって意味で行われるのですわ。『いつまでも飲んでないで、盃を空にして帰りなさい。』という意味になります」

 マティさんが解説してくれた。

 おお。

 なるほど。

 元世界での飲み会ってグダグダと続くイメージだが、一定のタイミングで切ってくれるのか。画期的だな。

 それでも飲む人はダラダラと飲むんだろうけど。

 こちらでの乾杯はある意味、一本締め的な意味合いが強いのかもしれない。

 「そうか・・・こっちだと料理が運ばれてくるから食べ始めるきっかけはそれでいいんだな。オレのところだと料理がすでに置かれていて、そこに座る形式だから・・・」

 考えてみると西洋も日本も、宴席というと料理はすでに出ていることがほとんどだ。それで飲み物だけはふるまわれていて、宴会の始まりを象徴するのが乾杯ということになるが、こちらの世界では始まったあとに料理が運ばれてくるのだ。

 だからこその違いなのかもしれない。

 『レマ・ティコス』で宴会をする場合と、貴族なんかのパーティーとの違いというのもある。立食パーティーなら、料理はすでに並べられているはずなのだ。

 まぁいい。

 違いの理由なんかはどうでもいいことだ。

 元世界での乾杯も、地域によっていろんなしきたりがあった気がするし、明確な決まりがあるとは聞いたことがない。

 これも、我が家ルールとしよう。

 「うちでは始まりと終わりの二回、乾杯するってことにしよう」

 そう言うと、ミーレスが心得顔で頷いた。

 「ご主人様ルールですね」

 そのとおり。

 「では、改めて・・・乾杯!」

 「乾杯!」

 今度は全員が唱和してくれた。

 「おまたせしましたぁ!」

 と、そこに満面の笑みでアリシィアがやってきて、取り皿とかを置いてってくれる。

 そして・・・。

 「うおぉぉおぉぉ?!」

 思わず仰け反った。

 テーブルに載せきれないほどの大皿が次々に運ばれてくる。

 しまった!

 本気で満漢全席並みの料理だった!

 肉、魚、野菜に果物。ありったけの食材を盛り込みました! とでもいうような感じだ。

 「噂には聞いていたけど・・・」

 途轍もない、とメティスが溜息を落とす。

 他の者も程度は違うが似たような様子だ。

 「み、見た目は迫力あるけど! 結局は食べ物、食べればいいのよ!」

 自棄になったのかリティアさんが怒鳴った。

 でもまぁ、その通りではある。

 「よし。みんな、とにかく片付けるぞ!」

 右拳を突き上げた。

 「おおっ!!」

 全員が唱和した。

 メティスだけ、ちょっと遅れていたけれど・・・。


 家に帰ると、フェリシダがリティアさんを除く全員のメイク落としをしてくれた。

 リティアさん以外、というのは、リティアさんだけ帰る家が違うからだ。

 メイク落としようの化粧品も、もちろん買ってきてある。

 何度も言うが、女の人は大変だ。

 メイク落としがずいぶんと上手い気がしたので、フェリシダに聞いたらなぜかわからないが体が自然に動くのだそうだ。

 もしかしたら、男爵夫人時代のメイクを体が覚えているのかもしれない。

 記憶は消されていても、体に染みついた技術は消えていないということなのか。

 たぶんそういうことなのだろう。

 ちなみに、メイク落としはメティス以外全員、オレと軽くスキンシップを取ってからとなった。せっかく綺麗になっているのだ。ゆっくりと、ただし軽く、堪能させてもらった。

 思わず前日同様朝まで思想になったが、何とかこらえた。

 ある意味、前日がほぼ徹夜だったことが幸いした。

 ただ、メティスはメイク落とし用の化粧品を少し受け取ると、一人治療院に行って戻ってこなかった。

昨夜ほとんど寝ていないので、治療院で寝るつもりのようだ。

 明日は仕事が入っているからな、休んでおきたいのだろう。

 オレも寝ておくべきだと思うが・・・ミーレスたちメイクアップした顔が脳裏に焼き付いているせいで眠れそうになかった。




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