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異世界で家を買いました。  作者: 月下美人
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おかいもの


 「さてと、んー・・・メイド用の装身具ってありますか?」

 横に立っていながら目に毒、とそっぽを向いている店員に話しかける。

 「もちろんございます。もっとも、奴隷専用ということではありませんが」

 奴隷でなくても使える、便利装身具があるようだ。

 というより、この店での買い物の経験から言って、需要がなくて激安となっている部類の商品が、だ。

 「『家政婦シリーズ』のブレスレットとアンクレットがございます」

 おおっと。

 とうとうシリーズ物が出てきましたよ。

 「機能はごく小規模の空間保管庫となっております。一般的には、調理道具を収納しておくブレスレット、掃除道具を入れておけるアンクレットとなります」

 いつどこにいても、主が飲み物をこぼしでもしたら即座に拭き掃除ができるというわけだ。調理中にあと一さじお塩を、なんてときにも調味料を取りに行かず手先で足せる。

 便利そう!

 「値段は?」

 「ブレスレットが一つ4000ダラダ。アンクレットが6500ダラダでございます」

 安い!

 理由はわかる。

 メイドのいる主ならば家事は丸投げだ。

 現場でメイドが苦労していたとしても、どうでもいい。

 自分では必要のない機能しかついていない装身具を、奴隷や使用人のために買い与えようと考える人間は多くない。

 そもそも奴隷を手に入れるたび、必ず何かしら装身具を買い与えているオレが、常識的には異常なのだと思う。

 だから、安くなっているのだ。

 両手足に着けても21000ダラダ。

 ミーレスたちの約三分の一。

 不公平かな?

 とはいえ、メイドに『伝心』や『伝声』はいらないし。

 いや、いらないとは限らないな。

 インフルエンザで寝込んだ時、声が出なくて「水」と言いたいのにリンゴジュース飲まされて丸二日機嫌が悪かったことのあるオレだ。

 メイドにも『伝声』はあっていい。

 『伝声のジェム』は6000ダラダだから、27000。これでも半分以下か。

 「あの・・・」

 考え込んでいると、店員が奥を指さして声をかけてきた。

 「?」

 なにを言いたいかわからなくて、疑問符を浮かべかけ・・・。

 歩き出した。

 奥で話があるということだと理解が及んだのだ。

 何かおすすめでもあるのだろうか?

 「もし違っていたら失礼ですが・・・彼女を性奴隷として扱うご予定はございますか?」

 ぴくっ・・・。

 恥ずかしながら、食指が疼いた。

 記憶の中では何度か肌合わせてはいるが、オレ自身の感覚ではない。

 つい数時間前まで人妻だった女性を、というのは結構な背徳感が出る。

 もうすでに四人と経験があるが、15の小僧には刺激が強すぎる。

 でも・・・。

 「ある、と言っておこう」

 当然そのつもり、とは言い辛かったのでぼかして答えた。

 店員は心得顔で目礼して・・・。

 店の奥へと案内された。

 結構歩いた先には、なにか退廃的な空気があった。

 内装が変わったとか、妙な音楽が聞こえるとか、お香の匂いがするとかはまったくない。ないのに、空気が違う。

 割と広い部屋に、ごく小さな小物が並べられている。

 イヤリング?

 はじめ、そう思った。

 小さな輪っかが多かったからだ。

 だが、見ていくにつれ、その二つがチェーンで結ばれたりしているのを見て何かが違うと感じた。

 あと、一個だけというのもある。

 「えっと・・・これらは?」

 わからないながら、なにか期待というか予感があって声が震えた。

 「服の下に着ける装身具となります」

 服の下?

 「ニップル、ラビア、マロン。性奴隷を彩る装身具でございます。効能は強弱がありますが、感度の上昇と使用頻度が増えることで起こる色素の沈着やたるみの予防などとなっております」

 ニップルってなんだっけ?

 冗談ではなく本気で考えてしまったが、答えが出た途端に意味が分かった。

 うっわ、それか?! という思いがある。

 そういうアクセサリーがあることは知識としては知っていたが、本物を見る機会はほぼなかったので思いつきもしなかった。

 でも、ここは異世界。

 性奴隷のいる、異世界。

 あって当然の品物ではないか。

 さっき買ったばかりのエプロンと一緒だ。

 いや! そうか!?

 それを見越しての大き目のエプロンだ。

 あれは、これらのアクセサリーを付けたあとで着るものなのだ。

 「お安いものですと400ダラダからお求めいただけます」

 安っ?!

 「お安いものは掛かっている魔法が薄いので感度の補正などは効きませんが、普通にアクセサリーとしてつけるのであれば十分かと」

 な、なるほど。

 補正の魔法の効きによって値段が変わるわけか。

 「よ、四万ダラダぐらいのだとどれになる?」

 その金額のがあれば、悩みは解決だ。

 「その金額帯であれば、すべて込みのスリーインワン。・・・こちらなどいかがでしょう?」

 そう言って、店員が指し示したのは・・・。

 ネックレスのように首に掛かっている鎖。それがそのまま左右のニップルと、下のマロンにまで繋がっているというものだった。

 「『エロスの彩シリーズ』、『マロンクリップダイヤモンドゴールド』です」

 おお・・・。

 ついに神の名のついたものに出会いましたよ。

 エロス関連かぁ・・・そりゃエロイよな。

 鎖には、ダイヤらしき透明な宝石がついている。多少の長さ調整もできて、余った分の鎖は首の後ろに垂らせるようだ。

 すごく、エロい。

 これをつけているフェリシダを想像して、クラクラした。

 「これと、さっき言ってた家政婦のブレスレットとアンクレットを両手足分もらおう」

 これ見せられたら買わないわけにはいかないだろ。

 おもわず、ミーレスたちにも買いたくなるが、こらえる。

 まだ早い!

 フェリシダは年齢的にも経験的にも大人だから、許される。

 ミーレスたちには・・・もう少ししたらにしておこう。

 うん。

 もう少しだけ。

 「毎度ありがとうございます」

 店員が、にこりともせずに頭を下げた。

 「うん」

 オレも慇懃に頷いて、ミーレスたちのところへと戻った。

 支払いは、ミーレスたちもいるところで行う。

 60000ダラダ。

 買うものは違っても金額は同じことを、ミーレスはわかってくれているはずだ。

 そこにプラスで『レフレクトチョーカー』も買って、買い物は終わりだ。

 プレゼントというわけでもないので、人目を避けるべき『アレ』以外は包装はされていない。その場で装着する。

 ブレスレットもアンクレットも、金色の鎖状のものだった。ブレスレットには三か所、アンクレットには一か所。サイコロのようなチャームが付いていて、そこに空間保管庫がある。

 開けて見せてもらったが、ブレスレットのほうは30角のボックスタイプが五つ。両手だから10個。アンクレットは高さ180、奥行き50、幅50。・・・なんというか、学校の教室にあった掃除用ロッカーな感じだった。それが一個ずつ二個。

 い、意外に大容量だ。

 「あ、待て! そっちのは帰ってからだ」

 ブレスレットとアンクレットを付けたフェリシダが、スリーインワンの入った包みを開けようとしていたので慌てて止める。

 かわりに、『伝声のジェム』がついたダイヤの指輪を左手薬指にはめさせた。

 はめてはやらない。

 オレがはめてやったのはミーレスだけだ。

 この辺は差別しておかないと、ミーレスが気分的に面白くないだろう。・・・というオレの勝手な気遣いだ。

 対になる指輪は、もちろん『傀儡の首飾り』とセットの指輪がはめられている右手中指にはめる。

 ・・・このままでは、両手の指全部に指輪を二連で付けることになるかもしれないな。

 自分の両手を見て、そんなことを考える。

 元世界なら絶対にしないことだ。

 まぁ、いいけど。

 女性を何人も侍らすこと自体がありえないのだ。いまさら過ぎる。


 家に帰ると、メティスとリリムにフェリシダを紹介しながら夕食を食べた。

 フェリシダがさっそく給仕をしてくれたし、後片付けもした。

 ただし、コーヒー・・・ネル方式に戻ってしまった・・・を淹れるのはミーレスが譲らなかった。

 最初にメティスが風呂に入り、そのあとでオレとミーレス、シャラーラ、アルターリア、リリムが一緒に入る。そのあとで、後片付けのすんだフェリシダを呼んで二人で入った。

 前の家の・・・または前の夫の汚れを洗い流す気持ちで執拗に磨き上げてしまった。

 そのあとは、お楽しみタイムだ。

 フェリシダはもちろんミーレスたちにも、入浴後にエプロンを付けさせた。ただし、ベッドに入る直前に なって、フェリシダにだけエプロンを外させた。

 「いい・・・」

 それだけしか言葉がなかった。

 『レフレクトチョーカー』も付けさせたので、暗闇にすこぶる映える。

 そのまま、そこに立たせておいて、ミーレスたちと軽く交わる。

 今夜の主役はオレ的にフェリシダだが、裸エプロンのミーレスたちも味わわずにはいられなかった。

 そのあとで、フェリシダをじっくりと楽しんだ。

 ミーレスやシャラーラが羨ましそうな眼になっていたから、やりすぎたかもしれないが、完成された28の女は一味違っていたからしかたがない。

 装身具の効能が効いているのか、男爵の記憶よりずいぶんと嬉しげに鳴くものだから、こっちも調子に乗ってしまったせいでもある。

 明日からは、この償いとしてミーレスたちをも可愛がらねばなるまい。

 などと思ったものの、明日にお預けすることは難しそうだった。フェリシダを貪った勢いに乗って、ミーレスたちのことも食べつくすべく頑張ってしまう。

 リリムの精力回復には頼らなかったが、それぐらいの数と量をこなしてしまった。

 ・・・明日は迷宮行くのやめよう。


 翌朝。

 正確には昨夜の就寝時にだが。

 一つ、問題が発生した。

 なにか?

 ベッドが足りないというのだ。

 曰く。メイドがご主人様と一緒に寝るのはよくない、と。フェリシダが言い出した。

 昨夜はなだめて、ミーレスたちともども大きなベッドで寝かせたが、端っこで寝ていた。

 オレとしては命令してでも一緒に寝たいところなのだが、本人が絶対に譲らない姿勢を崩そうとしない。

困ったものだと思うが、フェリシダがこだわる理由はわかりやすいものだった。

 家人の誰よりも早く起きて家事をするべきメイドが、主人と一緒に寝ていては主人に気兼ねしてゆっくり休めないというのだ。

 言いたいことはわからなくもない。

 それはそうだとも思う。

 しかし!

 うちでは朝の買い物はオレとミーレスの管轄になっているし、メイドがオレたちより早く起きなくてはならないということはない。

 そう説明したのだが、どうにも納得してくれなかった。

 ということで。

 「ベッドをもう少し部屋の中央に寄せるぞ。階段側に新しくベッドを置くことにする」

 オレたち用のベッド群を中央に寄せて、空けた空間にフェリシダ用のベッドを置く。これなら文句はあるまい。

 特別扱いになるが、ミーレスやシャラーラにとってみると、オレのそばに引っ付く特権が自分たちにあって、フェリシダが離れるということなので、全く異論が出なかった。

 明け方までやりまくりだったのでさすがに眠いが、いつもの時間に起きて最初の仕事がこれになった。

 「そうですね。それならフェリシダも安心でしょう」

 ニコニコしながらミーレスが言う。

 「んだな。そうすんべ」

 訛りがひどくなっているシャラーラが、見ていて怖くなるほど恍惚とした顔で腕に力こぶを作ってみせる。

 「お、お手伝いしまふ」

 ミーレスとシャラーラは元気だが、リリムは眠そうだ。

 「一度ロープをほどいて、二人で一つ運べはすぐに終わります」

 「・・・ち、ちかく、なるわね。そ、それでなくても・・・ゆ、昨夜、眠れなかったんだけど」

 アルターリアとメティスは通常通りにふるまっているが、やはり少し眠そうに見える。メティスには抗議の視線を向けられてしまった。

 うん。ちょっとだけ悪かったと思う。

 あの環境で手は出されないし、自分で何かするわけにはいかないしでは、そうとう辛かったのではなかろうか?

 まあ、我慢できなかったのなら言ってくれればいつでも受け入れる用意はしているのだが・・・。言ってくるわけはないか、メティスの性格で。

 なんにしてももうすぐ期限は切れるし、知ったことではない。

 ベッドを再び縛り付けるのをアルターリアとリリムに任せて寝室を降りて行ってみると、そのフェリシダは、風呂場の掃除を済ませてキッチンでお湯を沸かしていた。

 「おはようございます、ご主人様!」

 「おはよう。早いな」

 「当然です。・・・ですが、朝食の用意などの段取りがつかめなくて少し困っています。どうすればいいでしょうか?」

 ほとんど寝ていないはずなのだが、なにかすっきりした顔をして聞いてくる。

 肌もモチモチだし、髪もツヤツヤ。

 なんか、見違えそうだ。

 「朝は、オレとミーレスで買い物に行っていたんだが・・・。そうだな。フェリシダも一緒に行くことにしようか」

 「え?!」

 おっと。

 驚いたというかショックを受けた声が背後で上がった。

 ミーレスだ。

 捨てられた子犬のような目をしている。

 「な、なにか問題が?」

 「・・・せっかく・・・ご主人様と・・・」

 うつむき加減になって、上目遣いで見つめてくる。

 ああ、そうか。

 朝の買い物は、この街に住み始めてから変わらない二人きりの時間になっていたわけか。

 たいした時間でもないのだけど、だからこそ貴重だと、そう思ってくれているのだ。

 オレと二人きりの時間が無くなってしまうと思ったわけか。

 「あー・・・フェリシダには毎朝恒例の買い物を任せて、オレたちは今まで足を運ばずにいたところを見て回ることにしよう」

 日々の生活に追われて、住んでいる街だというのに決まった店でしか買い物をしてこなかった。街にはもっとたくさんの店があるのだし、新しい発見を求めて探索してみるのもいいだろう。

 買い物ついでの早朝デートを持ちかけてみる。

 とたんに、ミーレスの顔がパぁッと明るくなった。

 「そ、それなら・・・問題ありません」

 恥ずかしそうに、もじもじしながら言ってくる。

 あー! もぉっ!

 可愛すぎるっつうのっ!!

 「よ、よし。ともかくでかけようか」

 「はい、ご主人様」

 上機嫌のミーレスと、一晩経って垢抜けた様子のフェリシダを連れて歩く。

 ミーレスとオレはいつもの冒険者用の服に長剣、フェリシダは白地でところどころに花の刺繍の入った服にエプロンと膝丈スカートという姿だ。足には、オレの作ったサンダルを履かせている。

 ミーレスたちのための予備のつもりで作りためていたものだ。

 靴と違ってフリーサイズなので、誰でも履ける。・・・というか、履けないような女が我が家の一員になることはないと思う。

 女性に関しては何かとストライクゾーンの広い男のつもりだが、横への広がりには許容範囲があまり広くないので。

 もちろん、履けない女が一律にダメということではない。

 横の広がりには少々厳しいが、縦には広い。身長があっての大足なら、どんとこいだ。

 いつも通っているパン屋に着くと店主と二言三言挨拶をして、いつもより二個多くパンを買う。

卵と牛乳はメティスが近所の農家から買ってくるので、ここで買うことはない。

 サラダ用の葉野菜も菜園でとれる野草をシャラーラが集めてきて作るので基本必要ないのだが、それだけだとさすがに物足りないので少し先の八百屋で鮮度のよさそうなのを見繕って買う。

 そのあとは、肉屋に寄ってハムやソーセージを。魚屋で、これまた良さそうなのを仕入れて毎日の買い物は終わる。

 ただ、肉はともかく魚に関しては明らかに高いのでよほどいいものでないと買うことはしない。

 肉は近くに牧場もあるので、比較的手に入りやすく安いのだが、海が近くにないエレフセリアでは魚は贅沢品だ。なにしろ『移動のタペストリー』で運ぶ運送費がかかっているから非常に割高になってしまうのだ。

 そう言ったことを説明しながら、フェリシダにお金を渡して実際に買い物をさせる。

 貴族の令嬢で、夫人だったからもしかしたら自分で買い物なんてしたことないのではないかと不安だったのだ。

 「幼い頃には、お小遣い握りしめて街のお店に買い物に行ったこともございます」

 というので大丈夫だろう。

 普段の買い物で買っていた値段を知らせておいて、それをはるかに超えるようだったら買わずに帰るようにも伝えたので騙される心配はしなくていいだろう。

 そもそもそんな大金を預けるわけでもない。

 「それより、わたくしがお金を持つのはどうかと思うのですが・・・」

 大金ではないというのに、それでも気になるらしい。

 「かまわん。それを言ったら、全部の買い物をオレがしなきゃならんことになる。それはめんどくさい。余計な心配しないで仕事をするように」

 少し強めに言っておこう。

 いちいち不安を口にされても困る。

 「そう・・・ですね。わかりました。落としたりしないよう気をつけます」

 買ったばかりのハムを、右手の空間保管庫にしまって、フェリシダは真顔で一礼した。

 「うん。明日から、この買い物は君に任せるから」

 「はい。確実に務めます」



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