ひっこし
やたらと短くなっていますが、ここで一応ストーリーとして、ひと段落着く感じなので後ろを切ったのでこうなりました。
次回から大きくストーリーが転換する・・・なんてことはないのですが、節目、ということです。
「さて、と。フェリシダ、おいで」
年齢的には、一回り。14歳・・・って、年齢差は二倍か?!
ちょっとびっくり、もとい!
ともかく、オレの方が年下・・・まてまて。
八年前ってオレ。6歳のときから性奴隷を使っていたことになるのか?!
うーん。なんかいろいろと破綻しているような・・・。
まぁいい。
わざわざ照魔鏡提示して、年齢欄とか見せたりしなければバレることはないはずだ。
うん。自信をもって、主の威厳を保って、フェリシダを手招く。で、さっきまでラーホルンが座っていたソファに座らせた。
いくつか確認も取らないといけないし、説明も必要だ。
「なんでしょう?」
「うん。ちょっとした確認だ。オレのものになってどのくらい経つ?」
確認というのは記憶の改ざんがどの程度うまくいっているかというものだ。
タグでは記憶までは見ることができない。が、嘘をついていればそれはわかる。本人を尋問すれば、記憶がどう形成されているのかの実像を知ることができる。・・・はずだ。
「14節ぐらいだと思いますが?」
え?
と、あぶないあぶない。
危うく声を出すところだった。
にしても・・・14節? って七カ月ってことだよな?
そりゃ、穴だらけだったのを無理やり埋めたんだから、目減りするのはわかる。でも、7年半分も消えるものなのか?
「ご主人様。あの・・・監禁されていた時間が消えているのではありませんか?」
そっと、背後からミーレスが囁いた。
吐息が耳に掛かって・・・シャラーラじゃないがフーフー言いたくなるが、それは置いといて。
監禁か。
確かに、地下室に閉じ込められていた記憶も見た覚えがある。
それに、ケガをさせられて寝ているのも。
なるほど。
覚えていたくない。記憶するような思い出のない。印象の薄い。そういう記憶が軒並み圧縮処理されてしまったのだ。
この場合は圧縮した結果、8年分のデータが7カ月分にまでまとめられてしまったのだろう。どんだけ、無意味な時間を過ごさせられていたのか。
部屋にこもったまま、一人で壁を見つめる日もあったのではないだろうか。
「オレとの関係は?」
「ご主人様とか・・・奴隷です」
とか?
ああ!?
「よく聞こえなかった。もう一度、言ってごらん?」
最大限に柔らかな微笑みを浮かべて促した。
俯きかげんのフェリシダが上目遣いにオレを見ると、はにかむような顔で口を開いた。
「ご主人様と家族、です」
うん。
そこはさんざん強調していた部分だから、きっちり植え付けることができたようだ。
洗脳が効いているという証でもあるので、あまり褒められたことではないが、そこは洗脳が溶けても同じ顔、同じ気持ちで言ってもらえるよう努力するつもりだ。
「よろしい」
頷くと同時に、『それでいいんだよ』とばかりに頭を撫でた。
まるっきり飼い犬と接する時のような感じになってしまうな。
「家族は他に誰がいる?」
「ミーレスさんと、シャラーラさんと、アルターリアさんです。私とは違ってご主人様のお力になれる方々です」
迷宮メンバーの方が、奴隷内での序列が上。というのもしっかりと伝わっているようだ。メンバーが誰かも。
「うん、そうだね。そこに、もう二人家族が増えるから、そのつもりでね」
「まぁ! そうなのですか? それはよいことです」
パぁッと顔を輝かせて、フェリシダは音がしない程度の力加減で拍手した。音をさせないのは、心から喜んでいないことを示すわけではなく、メイドの嗜みらしい。
「それに伴って、引っ越しもする。別の家に住処を移す。二度とこの家には戻らない。この家は別の誰かの物になるよ」
「?!」
突如、フェリシダから表情が消えた。なにか、感情とか命とかが途切れたようになってしまった。ゾンビの顔でしばし停止する。
なにかの地雷を踏んでしまったのか?
慌てて何か言おうとして言葉を探す。だが、その必要はなかった。
「もうこの家には来ない? のですか?」
何か震えるような声音で、聞いてきたのだ。
「そうだ。ここは他人の家だったが、オレたち家族用の家を買ったんだ。そっちに移るんだよ」
「わたしたち・・・かぞくの・・・いえ・・・」
うわごとのように呟いて、フェリシダは子供のように無垢な微笑みを浮かべた。
「いつですか?!」
食い気味に聞いてくる。
「フェリシダの準備が整えばすぐに、だ。服なんかは全部新調するから古いものは全部置いてっていい。絶対に置き捨てにできない物だけとっておいで」
「ありません。この身体だけです! 必要なのは! この服もいりません。移動は全裸でもいいですか?!」
おい・・・。
そこまでか!?
そこまでこの家でのことは捨て去りたいのか?!
捨てさせた主犯であるオレが言うのもなんだけど、記憶がないのにそこまでって。
「あー。待て。そのドレスを脱ぐのはいいとして、全裸じゃさすがに連れて歩けないから、なにか目立たない服を着とけ。家に行く前に服を新調しよう。そこで着ていった服は捨てるといい」
「そうします!」
ルンルンな様子で立ち上がって、なんかくるくると回り出した。
本当にうれしいらしい。
さっと、部屋の奥に行って着替え出したので、そのあいだに騎士の一人を介して執事を呼び出した。
執事と警備の騎士たちに、彼らのことはアウダークス公爵のところで引き受けてもらうことにした、ことを 伝えて身辺整理を済ませておくよう言いつけるためだ。
彼らはなぜかすごくほっとした顔で、オレの話を聞いていた。
口封じに殺されると思っていたのかもしれない。
雑事を済ませて戻ると、フェリシダはごくごくオーソドックスなメイド服を着て待っていた。
ドレスとメイド服しかもっていないらしい。
「あー・・・うん。それでいいだろう」
どうせすぐに捨てることが決定しているし、とりあえず男爵夫人には見えない。これでいいだろう。
そう結論付けて、その足で帝都へと飛んだ。
自分の能力で転移したのではなく、男爵の家にあった帝都行きの『移動のタペストリー』を使ってのものだ。
執事が用意してくれた。
彼はやはり有能なようだ。
男で初老、欲しいとは思わんが。
いつもの店で服を買い、いつものところで装身具を買う。
我が家に、専属のメイドがやってきた。
生活に、さらなる潤いがもたらされる期待に、心が躍るようだ。
明日からも頑張ろう!
・・・そう言いながら、まずは今夜の営みから頑張らねばなるまい。
しっかりと、一家の主の存在を示すつもりである。
次回更新は9/30です。




