亀
六階層に出る。
出てきた魔物は『ナナス』。
漬物でおなじみ「丸」ナス、非常に長い「長」ナス、やたらと長い「大長」ナス、大きい「米」ナス、一般によく出回っている「卵」型ナス、それより面長な「大卵」型ナス、白い「白」ナス。
七種類のナスがぶら下がった二メートルはあろうかという苗が、根っこで歩いて襲ってくる。
キュキュッ!
「なんだこんの野郎。鳴くでねぇ!」
殴りつけたシャラーラの拳を受け流したナスが、キュッキュッと鳴いている。それにイラ立ったのかシャラーラの言葉のなまりがきつくなっていく。
殴っても、殴っても、ぶらぶらするだけで一向に落ちないし裂けもしない。
なんかボクシングジムで、ダイエット目的の主婦がサンドバッグを殴っているような光景だ。
うわぁ、とか思っているとミーレスの剣がナスをサクサク切っていく。切っていくのだが、切られたナスは落ちて新しいナスがすぐに生ってくるのできりがない。
難敵か?
と少し焦り始めたところで事態は急変した。
シャラーラが殴ったナスの反動が本体に伝わって、グラグラと揺れ始めたのだ。それによって、ナスの向こうの茎が少し覗けるようになる。
そこへ、ミーレスの長剣が突き立った。
だけでなく。
「ふっ!」
たんっ、とステップしたミーレスの体が、ナスの隙間をすり抜けていき・・・バフッ。
ナスは魔素になって消えた。
『ドロップアイテム』の苗を残して。
「なにかしかけがあんのかとおもったんだがぁ、なぁんもながっだなぁ」
これこれ、シャラーラさんや。なまりがひどくなっとるで?
気を抜くとなまるようだ。
そういえばベッドでもたまになまった喘ぎ声を聞くことがある。そういうとこもかわいいので、もっとなまらせたくなって、ついいじめてしまうのだが・・・。
そのせいか、最近なまる頻度が増えている気がする。
「種を飛ばすとか、実そのものが飛んでくるとかがあってはならないと思ったのですけど。心配は無用だったようです」
ミーレスがスッ、と身を引きながら言った。
なるほど。
オレの身を案じて、とりあえず相手の反応を見ていたということのようだ。
たしかに、七個の実を一斉に撃ち込まれてはアルターリアの護衛では足りなくなることもあり得る。確認は必要だっただろう。
・・・オレってなんてお荷物。
「『フラムマクリス』!」
おおっ?
びっくりした。
見れば、今まさに湧いた『ラッカセイ』が燃えながら消えていく。
コンパニオンプランツはキュウリと同じものが出るようだ。
なら、問題はない。
六階層を驀進した。
ゲートキーパーは、『ブブタ』。
OLが見たら、ペットにしたがりそうなミニブタだ。
ポンポン弾みながら突っかかってくる姿は、ゴムまりのようでもある。
「とんどけ!」
シャラーラが上から拳を叩きつけて弾ませる。
「避けられますか?」
落下地点に入り込んだミーレスが下から突き、突いた長剣で地面に叩きつけて斬るというかえぐる。
えげつない。
ブタは破裂した。
『レアドロップアイテム』は『農用フォーク』。
堆肥の積み替えとかに使う三本刃のフォークだ。農家というより牧場で見ることの方が多いかもしれない。
「重くないけど・・・運ぶのが不便だな」
さっきの鍬といい、もうちょっと「迷宮」だということを考慮してほしい。
鍬をリュックサックには入れられなかったので、左手に持って運んでいたのだ。そこに、このフォーク。左右の手で持って迷宮を探索することになる。
どんだけ邪魔くさいかって話だ。
時間は・・・まだ10時過ぎ。
「一度戻ろう」
早すぎるが、これはだめだ。
持ったままで探索なんてできん。
「あ・・・」
家の移動部屋。
玄関脇の、転移で家に帰るときの出口にしている部屋に出ると、思わず声が出た。
家の外から、大勢の人の声や、楽器の音が響いてきている。
「えっと、祭りですね」
何事かと耳を澄ます僕に気付いて、ミーレスがさらりと呟いた。
なるほど、と思う。
言われてみれば聞こえてくる楽器の音は、どこか祭囃子を思わせるものだった。
「種付けなどの野良仕事が一段落つくのを待って行われる、豊作祈願祭ですね。仕事の慰労という名目で公然と酒が飲めるイベントです」
なにか、酒飲みに対して含むところがありそうな発言を、高貴な家の生まれというエルフが吐いていなさる。
「うちの父と親交のあったドワーフがよく稼ぎの倍もの酒を飲んでは飲んだくれていたものです」
酒飲み全般にではなく、祭りの日に羽目を外すドワーフへの毒だったようだ。
ちなみに、ドワーフとはドヴェルグ族の略称だ。
この世界でもエルフとドワーフは仲が悪いのか?
だが、アルターリアの発言には無視しえない単語があった。
仕事の慰労。
「よし。今日はもう探索は店じまいだ。祭りに出かけよう」
「いいんすか?」
「こっちの祭りは見たことがない。少し覗いてみたい」
異世界のお祭り。
なんだかすっごく興味がある。うきうきしてきた。
「祭りなんてどこのもそう変わりはないと思いますが・・・夏の本祭りならともかく。仕事の合間に行われる春祭りでは」
なにやら期待感丸出しで紅瞳をらんらんと輝かせるシャラーラ。冷めたような口調のアルターリア。だが、そそくさと装備を外すアルターリアの姿に、冷静な理性などは感じられなかった。期待にワクワクの様子のシャラーラは言わずもがなだ。
メティスとリリアも誘おうと治療院の様子をうかがってみるが・・・なんか人が大勢いたので、声をかけずに迷宮探索のパーティだけで出かけた。
始まったばかりらしく、ちらほらと大道芸を披露する人たちの間を縫うようにして中心街を目指す。
周囲はやがて、持ったまま食べれるような形態の料理を出す店や、どこか胡散臭いアクセサリーを売る店、射的のようなゲームが楽しめる店など、いろいろな屋台が所狭しと並ぶようになっていく。
そのなかに、川魚だろうか、串に刺さって塩焼きにされている魚が見えた。
「らっしゃい、うまいよらっしゃい」
ネコミミのおばちゃんが声をかけてくる。
「四匹くれ」
どことなく、鮎に似た魚の塩焼き。ちょっぴり郷愁を誘われて即座に買いを入れた。オレの地元では夏場、川に簗場が作られて採れた鮎が塩焼きで売られていたものだ。
好きだった食べ物の一つになる。
まあ夏限定、せいぜい一年に二匹程度食べるか食べないかの好きなもの、だ。同様の食べ物としてはウナギ、あるいはクリスマス限定のケーキ、といったところか。
名も知らない塩焼きされた魚を手に、そぞろ歩く。
見た感じ、異世界といえど祭りは祭りだった。
ただ、歩きながら耳に挟んだ話によると今はまだ準備期間中で、本当の祭りは八日後らしい。けれど、熱気はすでに祭り真っ只中、という感じだ。
先日の街全体に治癒魔法をかけて回った話が、神の奇跡として周辺地域では広まっているのでここ数年で一番という人出と盛り上がりが起きているのだとか。
・・・知らないことにしよう。
お面屋のお面がアニメキャラクターではなく魔物だったり、射的他ゲームの景品が魔物のドロップアイテムだったり、といった違いはあるにしても。
地味に換金性の高い景品だな、おい。
オレにとっての一番の違いが、女の子を引き連れての祭り見物、というのはいまさらか。
あと違和感としては、綿飴屋がまったく見当たらないという点か。こちらの世界では砂糖が割と希少らしい。高過ぎて砂糖しか使わないお菓子などあり得ないのだ。
あとは・・・金魚すくいがない。
いや、なにかの卵らしいのをすくうゲームはあるが・・・なんの卵なのやら。
見た目は黒と白の斑・・・鶏の卵二個分くらいの大きさのウズラの卵、といえば近いだろうか。それが水の中でぷかぷか浮かんでいる。
「マグルマグルですか・・・まだあったのですね」
見るとはなしに眺めていると、アルターリアがなにやら不愉快そうな顔をしているのを発見した。オレが見ているゲームが気に入らないらしい。
そういえば、周囲にも似たような人たちがいる。
だからなのか、ひどく客足が鈍い。
「えーと、あれはなにか不愉快なものなのか?」
「・・・命を軽んじすぎるのです。数日で死ぬと分かっているものをあんな風に玩具にするなんて」
数日で死ぬ。日本の祭りでも、すくった金魚の生存率が極めて低かったことは有名だ。最近では割とそうでもなくなったとは聞くが、生き物を景品にしている時点で眉を寄せる人は多そうだ。
「そんなに死にやすいのか?」
「いえ、確実に死にます」
うげ。
それは確かにどうかと思うわな。
「マグルマというのは生体が謎の生物です。迷宮を住処にして生きていると思われています」
「思われる?」
「迷宮が存在する近くの地表に卵の群れが張り付いているのはよく見受けられるのですが。その先が分っていません。昔観察した偉大な学者が卵から産まれた生き物が、明らかに迷宮の入り口と同質と思われる黒い壁を作り出して入って行くのを見たと言っています。ですが、迷宮内でそれと思しき生き物が見つかった例はありません」
なるほど。確かにオレも迷宮内で魔物以外の生き物なんて見た覚えがない。
「ですが、卵を手に入れてどんなに観察しても孵化した生き物が迷宮の入り口と同じようなものを作り出すところも、中に入るところも確認した人がいないのです」
「再現実験はうまくいかなかったわけか」
「そうです。ああやって、祭りになると誰かがゲームにします。これまで何千もの子供が観察したでしょうに、そういう目撃例はゼロです」
愉快な話ではないな、確かに。
「学者の中には、あれは命の揺りかごではなく。死に行く命の棺桶ではないか、という説を唱えた者もいます。つまり、これから産まれるものが入っているのではなく、死に行くものが最後の時を過ごす安楽の地なのだ、と」
「卵なら、これから産まれてくる命に対する軽視。棺桶なら、死に行く命への冒涜。そう考えられてるわけか」
棺桶って。とは思うが、元世界でも猫は死体を晒さないという。
これにも諸説あるが、事実オレの飼っていた猫も年老いたなぁと思っていたらふらっといなくなって二度と姿を見せなかったものだ。
それをさらに進化させたのが、自分を膜で包むことというのは・・・あるかもしれない。
「帝国国内では禁止になった遊びのはずですが・・・」
「そのとおりです」
ガチャガチャと音を立てて近付いてきた一団。その中から見知った顔が飛び出してきた。緑髪に可愛い顔のアダーラちゃんだ。
・・・祭りで応援に派遣されているらしい。
左腕にマクリア騎士団所属であることを示す腕章を巻いている。
男の騎士団員が先行して、店を見事にたたんでしまった。
うん。いろんな意味で。
「マクリアでは撲滅に成功しているんですけどねー。迷宮の遠ざかったエレフセリアなら予想外で警戒が甘い、とでも思ったのでしょう。わざわざ迷宮のある地域から卵を運んでくるなんて、そこまで手間かけるのならまともに働きなさい」
うんうん。
まったくもってその通り。
周囲の大人な方々も、しきりにうなずいている。
店を開いていた男を男性騎士が引きずっていくのを見送った。なんか後味の悪い祭り見物になってしまった。
「ぁあー。え、えと、は、ハルカさんって、め、迷宮に入っていますよね?」
そんな風に思っていると、アダーラさんがなにやらおどおどと言い出した。
「え、あ、ああ。入っているけど?」
「ちょっとボランティアをお願いしていいですか」
そう言ったアダーラさんは、店の方からやってきた騎士の一人からなにやら受け取り、その受け取ったものをオレの前に差し出してきた。
いやな予感。
「この卵、どこかの迷宮に置いてきてください」
予感的中。
でも・・・。
「なんか気分悪いし。マクリアの五階層あたりで魔物狩りでもするか」
水から上げた卵数個を乗せたザルを受け取り、振り返る。
「えっと。はい。分かりました」
「いくっす」
「そうですね・・・口直しにはよさそうです」
ミーレスたちもあまりいい気分ではなくなっているようだ。オレが提案した気分直しに二つ返事で賛同してくれた。
うん。こういうときは低めの階層でバシバシ魔物を狩るのがいい。
アルターリアのリュックサックを作ったことで革の在庫がなくなっているしな。
速攻で家に帰り、装備を付け直すとマクリア迷宮の五階層へと転移した。
「で、と。この卵はとりあえず迷宮のどこに置けばいいんだ?」
「どこでもよいのですよ。生態のわからない生き物なので正解はこの生き物しか知りません。わたくしたちの置き場所が悪かったなら、不幸中の幸いで助かったけど、幸いちゅうの不幸がおきた。と諦めてもらいましょう」
預けられた卵を持って途方に暮れると、アルターリアが思いきり突き放した口調でそう言い切った。言いたいことはわかる。
植物だから太陽が好きだろうと外に出したら、直射日光が苦手な種類で葉が焼けてしまい枯れた、ということはよくあるし。
「そうか、じゃあ・・・」
卵を迷宮の床に置こうとして、気付いた。
卵が孵ろうとしている。
「生まれ、ますね」
「うまれるっす」
「生まれるようです・・・ね」
数個ある卵のうちの一個が、カタコトと動いたかと思うと、殻にヒビが入っていく。
ペキペキ、と中から何かが殻を叩いているらしい音がして、それに合わせてヒビが拡大していった。
棺桶説はあっけなく否定された。
死にゆく命の断末魔には見えない。新しい命の誕生だ。
見守っていると、ヒビはやがて卵の半分以上に広がり、その次の瞬間中に向かって崩れ落ちた。
ふわっ、黒い煙が卵の中から溢れ出て、直後、周囲にあった卵が全て砕けた。同じような黒い煙が舞う。いや、舞ったと思ったと同時に中心に向けて収束した。つまり、最初に生まれようとした卵、その開いた穴に向かって。
時間にしてわずか数秒、卵があった先には全身真っ黒の奇妙な生き物がいた。
楕円形の硬質な毛も何も生えていない背中、四方から飛び出た小さな四肢、同じくちょこんと出ている尻尾、・・・って、亀じゃん!
そこにいたのは、シルエットからすると明らかに海亀の赤ちゃんだった。一回りか二回り大きいようではあるが。
ただ、元世界の亀と違うのは首がやたらと長い、そう蛇のように。そう見るとあるいは恐竜の首長竜に近いかもしれないが・・・オレ的には亀に一票を投じたい。
その長い首が、ゆっくりと持ち上がって、オレに顔を向けた。
妙に人懐っこそうな黒目がオレの顔を映し・・・飛びついてきた。
肩のところに短い四肢でしがみつき、首を伸ばして頬ずりをしてくる。
・・・ふ。モテる男は種族を選ばぬのだな。
前髪を掻き上げる仕草で・・・頭を抱えた。これは、明らかに懐かれている。
「えっと。危険はない・・・のでしょうか」
「かわいいっすよ?」
「生態は不明です」
三人の意見が一致することはあり得ないのか。
思わずツッコミを入れたことで、正気を取り戻した。
こういうときこそのタグである。
【 ? マグルマ ♀ 0歳 未定Lv1】
・・・なんだよ。やっぱりメスか・・・モテる男は・・・はもういい!!
ジョブが未定って。なに?
久しぶりにタグの深度を下げる。
普段は使わないようにしているが、その気になればオレは相手のことを結構深くまで掘り下げて鑑定できるのだ。ここが使いどころだろう。
【未定Lv1 効果 未定 スキル 未定】
はい?
まてまてまて、落ち着け。
なんだ、この思い切った白紙状態は。
なにもわからないってことか?
いくらなんでもそれは・・・。
「来ます」
考えに没頭していたオレを、ミーレスの警告が現実に引き戻した。
魔物が襲ってきたのだ。
タグの深度を下げていたので接敵警報を見落としていた。
といっても所詮は低階層の魔物だ。
ミーレスたちの連携が『樫の子』を即座に屠った。
いつものにように、魔物が黒い煙となって・・・喰われた。
空中を泳ぐようにして移動したマグルマが口を大きく開けて、消えようとする煙を吸い込んだのだ。
けぷっ・・・。
かわいらしくゲップまでしている。
「・・・もしかして、こいつらって魔物の煙、つまり魔力を栄養源にしているとか?」
「はっ・・・そ、そうです。そうだとすればすべてつじつまが合います。祭りに使われたものが確実に死ぬのは魔力を吸収できなかったからなのですね」
「迷宮から長く離れては生きていけないわけか」
オレに懐くのはこの中で魔力保有量が一番高いからだ。
わかっていたさ。一目惚れされるような容姿じゃないってことぐらい。
しくしく・・・。
ん? ということは、迷宮から離れてもオレの側にいれば弱ることはないわけか。んで、迷宮探索に連れてくれば餌には事欠かない、と。
いやいや、野生動物を連れ歩いてはいかんだろ。
とりあえず、そのままで魔物狩りをしてみる。
「来るぞ」
声を飛ばす。
『樫の子』が走ってきて、シャラーラに砕かれた。
すでに何度目かの光景だ。
マグルマは常にオレたちの頭上にいて、魔物が煙になる寸前に降りてきてはその煙を吸っている。
頭を悩ませていた問題も、どうやら解決したようだ。
どうやって転移で連れ出すかと考えていたのだが、どうやらマグルマの方でオレを自分のパーティに組み込んであるらしい。感覚的なものではあるが、パーティに組み込まれることに対する諾否を求める問いかけがあったから多分間違いない。
それによってミーレスたちがパーティからはみ出すということもないので、パーティ編成とは異なるスキル・・・いや、スキルは未定なんだったな。群れを作る能力のようなものがあるのかもしれない。
まあ、今のところ何の障害にもなっていないので、放置して魔物と戦っていく。
その間、どこかに去るのではないかと半分期待し、半分畏れていたのだが、マグルマはずっとオレたちについてくる。
まぁ、パーティーなのか群れなのかはわからんが、そんなようなものに加入していたのでは当然か。
「こいつ、うちで飼おうと思うんだが、どう思う?」
思い付きで聞いてみた。
得体のしれないものをペットにというのは怖すぎるか?
「えっと。ペットですか? ご主人様がそうなさるのであれば問題ないかと」
「飼うっす」
「生態研究ができますね、わたしは賛成です」
満場一致。本案は承認されました。
「よし。全員、夕食までに名前を一つ考えておくこと」
「名前、ですか。はい」
「あー・・・」
「・・・その問題がありましたか」
「シャラーラ、食べ物とか性的な名前は駄目だぞ」
「あー・・・いや、そんな名前は付けねぇっすよ」
無念そうにうなだれるシャラーラを除き、みんなやる気だ。
どんな名前が挙がってくるかちょっと楽しみである。
昼食で顔を合わせたメティスとリリムにも宿題として出題した。
『デスモボロス』の迷宮は九層目と八層目を踏破して午後の部を終える。
出現したのは大玉トマトが球体でもないのに転がろうとしてふらふら移動してくる『トンマトマト』とモアイみたいな顔のついたピーマンがピーピー泣きながらなついてくる『ピーピーマン』という魔物だ。
トマトには『ニラ』、ピーマンには『エダマメ』と『サツマイモ』が、コンパニオンプランツとしてついてきていた。
ゲートキーパーは、『ウシシ』と『モミモミ』。
妙に丸っこいミニ牛と、パサパサな藁でできた俵だ。で、『レアドロップアイテム』は『草刈り鎌』と 『稲刈り鎌』。
この世界にもコメはあるということなのだろうか?
ちょっと期待しつつ探索を終えた。
その夕食時。
マグルマの名前論争は大いに盛り上がり紛糾した。リリムとシャラーラが取っ組み合いをはじめ、メティスにアルターリアが毒を吐き、ミーレスがオレに気を遣いまくった挙句自爆したりという一大スペクタルが繰り広げられた結果。
「この子の名前は、カロンとする」
ネタを使い果たしかけたオレがふとこぼした名前、三途の川の渡し守の名「カロン」に決定した。
カロンを両手でもって頭上にかかげる。当のカロンは、意味が分かっているのかどうなのか、しきりに首を振って楽しそうだった。




