0・7
僕はこのセカイに来て、どれくらいたったかわからなかった。
なぜなのかもわからない。
此処はいつでも柔らかな光で満ちていた。
太陽はなかったから、自分の感覚でしか時を数えられない。
それでも疲れはしなかった。
彼女のまわりは、神々しくさえ見えて。
「ルカ、教会にいかない?そろそろお祈りしなきゃね」
そういった彼女は、微笑んでいて。
細い下り坂を行くと、ほかの街並と同じように、白い教会。
「なんか、此処の建物はみんな似てるだね」
「そうだね、いままであまり気にしなかったから・・・」
教会はステンドグラスで細工がしてあった。
ドアは、重そうな石だろうか?
彼女と僕でやっと開けられた。
「もしかして、いままでこれを一人であけてたの?」
疑問を口にしたら、
「違うよ、いままでは此処はずっとひらいていたんだけど」
なにかの拍子にとじちゃったみたい、と笑った。僕には、そうはみえなかった。
「ルカ、開けるの手伝ってもらっていいかな?」
申し訳なさそうに問う。
二人で開けるのにもちょっと、重いくらいだった。
「ふぅ、こんなに重かったんだね」
私なにも知らないからと、寂しそうに。
教会の中は、空気が違った。
シィンと澄んでいるようで。
真ん中の聖堂には、『黒い』十字架。
それがあまりにも、此処には合っていなくて。
一瞬違う場所に感じた。
彼女はその十字架に向かって祈りはじめた。
ときどき、眉根を寄せて。
僕も急いで祈った。
神を信じない僕は、祈らないハズ、なのに。
何故かそうしなきゃ、と思ったんだ。
彼女のため・・・?
「なんでなのかな、」
急に彼女が顔をあげて僕に話しかける。
「ルカは早く還らなきゃいけないのに、」
遠くをみるように。
「ひとり。はいやだよ・・・!」
初めて聞いた、荒げた声。
泣いてはいないけれど、悲しい声。
聞きたくなかった、『彼女』の声。
「大丈夫、リリスも一緒にいけばいいんだよ」
とっさにいったその言葉は、彼女にとっての希望になった。