0・3
リリスは、悲しかったんだ。
ひとりぼっちで、いることが。
僕たちはそれから、少しの坂道をのぼり天にそびえる塔の前に立った。
「この街でね、いちばん高い塔なんだよ」
そういって彼女はまた微笑んだ。
トクンッと、胸が暖かくなる。
「上まで、行く?」
「うん・・・、けっこう高いんだね」
「あ、見た目よりも低いよ、高いとおもうと高く見えるだけだよ」
いいながら、彼女のその白い指で塔の、扉を開ける。
中はステンドグラスの光が交差していた。
「ルカ、こっちだよ」
光に見とれていた僕の手をとってリリスが階段を昇りはじめる。
あったかい、
リリスの手は柔らかくて、細くてすぐに壊れてしまいそうで。
彼女は階段をのぼっている間、唄を口ずさんでいた。
僕には、わからない言葉の唄は流れるように旋律を紡ぐ。
ときどき、高音になったり
ゆっくりと、のばしてみたり。
彼女が唄を歌っているだけで顔が綻んで。
「ルカ、そろそろ着くよ!」
そして彼女が一番上の扉をあける。
「うわっ!まぶしぃ・・・?」
「眩しいね、もう慣れたとおもったけど此処は光がよくあたるんだね」
扉の先には、白い街が。
ひとつひとつが凝った、繊細な作り。
僕たちがいた、
建物は何処だろうか。
あぁ、
見つけた。
たぶんだけど、
なんとなくだけど。
「綺麗でしょう?」
「うん・・・。あっちに見えるのは、海?」
「そうだよ、キラキラしていて、光ってみえるでしょう?」
彼女はそういうと、手すりを掴んだ。
僕には、彼女の横顔しか見れないけど。
細くて、掴んだらすぐに折れてしまいそうで、儚げで。
でも、本当はとてもつよくて。
好き、というよりは、憧れに近い感情で。
それでも。
いまの位置よりも、彼女のそばに居たい。
一緒に、なんていったらきっと微笑んで誤魔化すのかな。
だから、せめていまだけは隣に。