闘技場観戦3
「「「「は?」」」」
俺たち四人の同時に驚き、困惑した。
いくら何でもあっけなさすぎるだろう。
しかし、驚いていたのは俺たちを含む少数の観客のみで大半の観客は会場中を観察して何かを探していた。
ゴドムスもアルビムが光の粒子となって霧散し始めているにもかかわらず、喜び勝鬨を上げることはせず、油断なく周囲を警戒している。
「いったいどうなっているんだ?明らかにアルビムが負けたんじゃないのか?」
「さあ~?どうなんだろうね~。でも会場のこの空気、これはあれかもしれないね~リンウィはどう思うかい~?」
「ん。たぶん。私と一緒。」
「リンちゃんと一緒?どいうことですか?」
「リンウィのチュートリアル報酬の光魔法が古代魔法の一つっていうのは覚えてるよね~?古代魔法にはリンウィの光以外に闇・空間・虚実の合計四つがあるって言ったと思うけど~もしかするとあのアルビムは虚実の古代魔法を持っているかもしれないってこと~」
「そうか、同じ古代魔法使いということか」
そのあとのオートの説明では、虚実の魔法は特殊魔法の一つである幻影魔法の完全上位互換らしく、ベータ版では幻を見せるだけでなく、それを実体化することすらできたらしい。
幻の実体化、正直そんなのは反則級の能力だろう。
「まあ、斬られたアルビムが光の粒子になったのに勝負が続いている時点で虚実なのは間違いないんだけどね~さて、本物はどこかな~?」
たしかに、本物のアルビムはどこにいるのかわからない。
いや、あの斬られたアルビムも本物であることに変わりはないのだろう。虚実魔法でもう一つの本物を創れるなど、本当に戦うのが楽しみだ。
すると、ゴドムスの上空50mほどに蜃気楼のように空気の歪みが生まれた。
その歪みはゆっくりと上昇し、100mほどまで上昇した瞬間に今度は急激に下降し始めた。
30mまで接近した時、蜃気楼が掻き消え中からアルビムが現れた。そしてそのままゴドムスに向かって下降し続け、、衝突した。
ゴドムスのHPはその一撃で3割ほど減少し、ゴドムス自体もその場から弾かれ、50mほど吹き飛ばされた。
しかし、ゴドムスも飛ばされながらもしっかりと体勢を整えて着地している。
アルビムはまたも羽ばたいて上昇し、今度は全力の一撃を狙うのではなく、一撃加えたら距離をとるというヒット&アウェイの戦闘に切り替えて戦いだした。
ゴドムスの方も攻撃をさばきながら反撃しているが、アルビムは体をひねったり急制動をかけたりして巧みに動き一度もダメージを受けていない。
徐々にゴドムスのHPが減少していき、ついに一割を切った。
そしてアルビムも上昇し上空で隙を伺っている。次の一撃で決めるつもりだろう。事実アルビムの一撃はなかなか強力なので一番最初のような攻撃であればゴドムスの体のどこに当たってもアルビムは勝つことができるだろう。
アルビムが勝負を決めようと垂直に下降していく。
ゴドムスも一矢報いようとしてなのか、大剣を振りかぶる。
その時俺は視界の端に低空を高速で移動する空気の揺らぎを認識した。それは最初にゴドムスのHPを3割削ったときに見た揺らぎと同様の物だった。
そしてその蜃気楼のように揺らいだ部分が上空のアルビムよりも先にゴドムスに到達し、吹き飛ばす。
ゴドムスは吹き飛びながら光の粒子になって消えた。
アルビムはまたもやゴドムスに衝突した蜃気楼の中から現れ、寸前までゴドムスに突撃していた法のアルビムは地面に到達すると同時に煙のようになって霧散した。
決着が付き、全員が唖然とした後に大歓声が起こる。
〈勝ったのは怪鳥アルビムだー!!今回も観客全員の度肝を抜いたー!アルビムの戦法はいたってシンプル、スピードで相手を翻弄し、本命を希少な古代魔法の一つである虚実魔法を用いて隠す!しかし、強い!!決して魔法だけでない地力も持っているのがこのアルビムです!毎回予測できない攻撃を繰り出し観客を楽しませてくれます!〉
「古代魔法、、、流石に強いな。アルビム自身も強いが」
「そうだね~ムサシの目から見ても強いか~」
「ん。それに戦闘狂。まだまだ強くなる。」
「私にはあんな戦い無理です~」
「まあ、俺たちも強くなるがな、、頂点に至るのだからな!」
「まあ、対戦も終わったことだし、とりあえずミリアの商会にでも行こうか~」
そして俺たちはミリアの商会に向かうために闘技場から出た。
そして道中でさっきのアルビムの戦いについて話し合う。
「アルビム自身、本来の戦い方はシンプルなスピード型だな」
「そうだね~しかも虚実魔法が扱えてることから、おそらくベータ版経験者で魔法も使っていたプレイヤーだろうね~あの虚実魔法を使えることでかなり変則的なスピード型になっているけど~たぶん初期のステータスへ割り振るポイントはSTR、AGI、SPに偏って上げてるだろうね~その分MPは少なそうだからそんなに連発できるとは思わないけど~」
「ん。進化も速度系」
「確かに燕さんでしたね!少しかわいらしかったです、、」
ミリアの商会は闘技場のある中央近くにあるためすぐにたどり着いた。
「さて今ミリアは居るかな~?、、、」
店員に確認すると最上階の私室に居るとのことだったので向かう。
《バン!!》
「やほー。きったよー。」
「あはは、、帰ってきたよ~ミリア~」
「リンちゃんドアはもう少し静かに開けないと、、、」
ドアを見てみると鍵の金具がドアから外れかけていた。
「オート、ドア壊れてるぞ?」
「確かドアは鍵かけてたはずなんだけどなー?おかしいな?どうして開いたのかなー?」
「こじ開けた。むふー。」
むふー。じゃないだろと思わなくもないが、突っ込まないほうが良いだろう。
この扉の修理費はだれが負担するのだろうか?ま、どうせミリアのような気がするがな。
「扉を壊すんじゃないよーリン!まったく。で?なんで来たんだい?」
「ミリアはアルビムというグラディエーターを知っているかい~?」
「あーあの虚実のプレイヤーだね、私のお得意様だよ。もしかして闘技場で見てきたの?」
「そうなんだよ~びっくりしたよ古代魔法の持ち主がリンのほかにいるなんてね~しかもこんなに近くに」
「リンちゃんは光魔法だったね。実際チュートリアル報酬で古代魔法を手に入れた人は少ないけどある程度いるみたいだよ?私の主観だと全体の0.001%くらいかな?」
「そんなに少ないのか?」
「そうだよムサシ君!お姉さんは商売をやっているから情報は確かだよー!!古代魔法と同等にレアなものを当てたのは0.01%とかかね?そこのオート君とかねー」
ちょっと待て、リンウィやオートの当てたものがそんな低確率だとすると俺の当てた卵はいったいどうなるんだ。後で聞いてみるか。
「お姉さんの持っている情報だと、アルビム君は現役の中学生で空手部に所属しているらしいのだー」
「なんでそんな情報を持っているんだ、、、まさか、ストーカー?」
「ムサシ君は私を一体何だと思っているのかい!?リアルでご近所さんなだけだよー!」
「個人情報が出てきたね~あはは~」
ミリアとアルビムがリアルの知り合いなら戦うときは渡りをつけてもらえるだろう。もう少し成長してから戦ってみたいものだ。




