2話
「カナハ様ー!!」
私は主の名を叫ぶ。
どうやらカナハ様は屋敷を脱走したようだ。
「はぁ……。」
思わず溜息がでる。
無理もない。
これで脱走は四日連続。
「……しみず 美夜様。」
廊下で掃除をしていたメイド達が私に声をかけた。
そして少し申し訳なさそうに
「私共の失態です。
私共がカナハ様を探しますので、今はシェラード様の護衛に。」
勿論有難いが……
「大丈夫?」
首をかしげて心配するとメイドは顔を赤く染め、
「はいっ!
必ず見つけます。」
元気よく返してきた。
私はメイド達にカナハ様を任せ、シェラード様の居る部屋に向かう。
コンコン
「シェラード様、美夜です。」
小さくノックし、私がそう言うと
「んっ……」
と返してきた。
部屋に入り、パタッとドアを閉めると
「シェラード、カナハが脱走したよ~。」
さっきまでの態度は一変し敬語を外し呼び捨てになる。
シェラード。
私とカナハの幼馴染み。誰の目もないと敬語がなくなる。
所属しているマフィアの忠誠心としていつも黒い狐のお面をつけている。
暗器使いでもあり毒使いでもある。
金色の瞳が印象的な綺麗な顔立ち。
マフィアに所属しているからか、よく怪我をする。
両親が実業家のため育ちがいい。
しかし、子であるシェラードを監禁していたためシェラードの所属するマフィアと交戦になり、その際母親は✕され父親はこの家の地下牢に幽閉されている。
「またか……。」
呆れた表情で見るからに高そうな白いティーカップに入れてある紅茶を口にする。
私はシェラードの座っているソファーの向かい側のソファーに座り足を組む。
「四日連続だよ。」
シェラードにそう言うと、ヤレヤレという表情になる。




