告白:湊
「清、湊と二人だけにしてくれるか?」
不意に少女が言って(といっても実年齢は千年以上だけど)、ばあちゃんが驚いた様子で見返した。
「マナ様・・・」
納得いかない様子のばあちゃんに。
「お前の方が疲れるだろう? いい年なんだから無理するな」
確かに、このまま俺とこの神様のやりとり聞いてたら、ばあちゃん高血圧で倒れるかもな。
「お義母様、マナ様がおっしゃっているんですから・・・」
父さんも同じ心配をしていたようだ。
促されてばあちゃんは渋々といった様子でうなずいた。
「すみませんマナ様。失礼があったら遠慮せずにお願いします」
「ああ、大丈夫だ。体もだいぶ調子が戻ってきたしな」
そう言えばどこか具合が悪かったのかな?
ばあちゃんと父さんの気配が消えてから尋ねる。
「どこか悪いの?」
「いや、起きたばかりだから体がなまってるだけだ」
「神様なのに?」
見た目は少女としか思えないから変な感じだ。
座っているからはっきりとはしないが、自分より身長もなさそうだし。
でも確かに肌は驚くほど白いが病的な感じはしない。
「体は生身だからな。寝過ぎれば調子も悪くなるさ」
そう言えば母さんのことを知っている口ぶりだった。
「寝過ぎってどのくらい?」
「今回は24年だな」
ええと母さんが俺を産んだのが、30歳だったから・・・
ちょうど母さんが20歳の時か?
「そんなに?」
「これでも短いくらいだ。いつもはだいたい50年は眠るからな」
千年以上生きているといっても、実際は10年くらい起きていて、50年くらい眠るのを繰り返していると説明される。
てことは、本当なら俺が40歳くらいん時に起きる予定だったってこと?
今の父さんと同じくらいか・・・想像できねぇ。
「なんで眠る必要があるんだ?」
「まぁ、簡単に言ってしまえば・・・神とはいえ、人型を維持するには負担が大きいってことだな」
確かに、今まで実体を持った神様なんて聞いたこともない。
神様たちとのやりとりで、ばあちゃんや父さんとは違う意味で、俺もそれなりに神様には詳しい。
見ための判断でいうと、神様は綺麗で大きくて人間ぽい方が、力が強いのだ。
亀じいさんだってサイズがそこそこだから、この辺では力のある方で。
つまり、この目の前に居る神様はかなりの力を持った神だということ。
「まあ、珍しいよな・・・」
つい、こぼれた言葉にくっとまた堪えきれない様子で笑う。
どこか人を小馬鹿にしたような様子で、でもだからこそ、その近寄りがたいほどの美貌が親しみやすく感じる。
やっぱり・・・可愛いな。
思ったら、ずっと言いたかった言葉がこぼれていた。
「マナって呼んでもいい?」
さすがに驚いたのか、大きな目を瞬かせる。
「・・・ああ、好きに呼べ」
ふっと優しい笑みを浮かべて。
今までのどこか意地の悪い笑みではなく、ふわっと目元を緩めた微笑に、否応なしに鼓動が速まった。
あ、やべぇ、それ反則だ。
じわりと熱くなった頬と指先。
言うつもりはなかった、いや、さすがの俺も言っちゃいけないんだろうと自重するつもりだったのに。
「マナ・・・俺、お前のこと好きだ」
目を合わせていたから、マナの驚きに開かれた瞳をそのまま見続けた。
綺麗な朱金の瞳。
ゆらりと瞬く光が、彼女の驚きを表しているようだ。
「はあ?」
さっきまで余裕しかなかったマナが、今までにない表情で素っ頓狂な声をあげた。
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