~約束~
アハトは氷に覆われている王国、アインス王国にて18歳の誕生日をむかえる。
幼き日に約束した少女との思い出を胸に、幼馴染のノインを連れ、冒険の旅へと出る。
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『ねえ、アハト』
『なあに?リーベ』
『私のこの力の事、他の誰にも内緒にできる?』
『もちろん! 僕、リーベが大好きだもん! リーベとの約束、守れるよ!』
『ふふっ、ありがとう。 ・・アハトが18歳になったら、またわたしに会いに来てくれる?』
『! いいの?!』
『ええ。でもあと10年もあるわよ? 本当にこの雪が吹き荒れる雪山に来れる?』
『うん! 10年後、また、リーベに会いに来る!』
『ありがとう。・・これ、私のことを忘れてしまわないように』
『! 雪の結晶のペンダント・・?』
『そうよ。・・じゃあ、もうお帰りなさい、アハト』
『うん・・じゃあね、リーベっ』
『じゃあね、アハト―――――』
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「アーハートー! 起きてアハトーっ」
「ん~~、あと10分・・・」
「もうっ、今日はアハトの18歳の誕生日でしょ! もう子供じゃないんだからっ、早く起きろ!」
「うわ! ・・・ノインか。びっくりした・・」
「アハト、今日はおばさんがケーキを焼いてくれるって!」
「はいはい。 もう、母さんは本当にケーキ作りが好きだな・・」
「アハトのためだからって、嬉しそうに用意してたのよ? 早く起きて着替えなさい!」
どこもかしこも氷に覆われているアインス王国。
雪山のふもとの街、フースでは18歳を超えると『大人』として認められる。
「・・・ノイン、俺さ、懐かしい夢を見たんだ」
「?」
「確か、7,8才くらいの時の思い出・・・」
「ああ、いつも言ってる夢の話ね。 もう、いい加減大人でしょ。 過去にばかり縋り付いてないで現実を見なさい!」
「ああ、わかってるよ、ノイン。 ていうかお前、なに勝手に俺の部屋に入ってきてるんだよ」
「えへへっ、別にいいでしょ? 幼馴染だもんっ」
「・・着替えるから、出て行って? あとでまた来てくれればいいよ」
「! うんっ わかった!」
ガチャ
「ふう・・・」
アハトは、引き出しに入れてある小さな箱の中から、1つのペンダントを取った。
「・・・リーベ。 俺は、君との約束を忘れてないよ」
一人、呟きながら服を着、ペンダントをかけ大切にシャツの中へしまった。
そして、母親とノインが待つリビングへ向かった。
お読みいただき、ありがとうございました。
約束の物語はどうでしたでしょうか。
あなたも、思い出の約束はあるでしょうか。
では、また会うときまで。