第2話 入社式
「以上を持ちまして、株式会社林檎、第27期入社式を終わります。」
結論から言うとなんとか入社式には間に合った。周りには知らない人ばっかりで隣の人と話すこともなかった。
切っていた形態の電源を入れる。いつもより起動に時間がかかった。
『着信16件』『留守電1件』
「うわ……」
一瞬にして朝の出来事がよみがえる。痴漢に間違われたという事実を。恐る恐る留守電を聞いてみる。
『多田さんの携帯で間違いないでしょうか。東京駅鉄道警察隊の森脇と申します。今朝痴漢騒動の件で少しお話を伺いたいと思っております。東京駅内の我々の本部まできていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。』
入社式は午前中で終っている。折り返しの電話を入れ、今から行く旨を伝えた。
「森脇さんはここにいらっしゃいますか?」
鉄道警察隊の本部について入り口にいる女性に尋ねた。
「少々お待ち下さい。」
会議室のような場所に通されて待つこと数分。街によくいるような細身の男性が入ってきた。
「はじめまして。森脇と申します。わざわざすみませんね。今日は入社式だったそうで。」
「ええまあ。それで朝の件はどうなったのですか?」
「単刀直入に申しますと、あなたは無実です。犯人は別の人だったようです。」