第1話 痴漢!?
「ち、痴漢です!」
電車内で叫び声が聞こえた。
叫んだのは僕の目の前に立っている女性だ。慎重は155cmぐらいだろうか。僕が160cmぐらいだから僕より小さい。
声を聞いて周りの女性たちが声を上げた女性に集まった。心なしか、男の人たちは少し下がっている。
そうこうしているうちに、次の駅に着いた。声を上げた女性が数人の女性に囲まれて降りていった。僕はその様子を黙ってみていた。
数秒間だけは……
「ちょっとあなた!降りてください!」
スーツをうまく着こなしている女性が僕に指を指してきた。
「え!?僕ですか?」
僕は本当に何もしていないので素で驚いた。
「早くしてください。」
冷たく女性は僕に言い放った。僕は以前テレビ番組で「痴漢に間違われたら身分を明かして逃げろ」といっていたのを思い出した。仕方なく僕は電車を降りた。周りの視線が冷たい。
鞄の中から今日から使う社員証を出した。そう。今日は入社式なのだ。
「私は株式会社林檎の多田と言います。大変申し訳ございませんが、これから入社式なのでなにか御用がありましたらこちらにご連絡ください。」
といって名刺を差し出した。それを見ていたさっきのスーツの女性が言った。
「あなた、ひどいことをしているのに逃げる気?男として最低ね!」
ここまで言われれば僕も意地になってしまう。
「こちらは身分を明かしましたので、これ以上の拘束はいけないとおもいますよ?では、失礼します。」
そういうと回れ右をして改札に向かった。自分で言うのもおかしなことだが、僕はとても心が弱い。こういうことするのは本当に心臓に悪い。ずっと心臓がバクバクしていた。
でも今は、入社式に間に合うことを第一目標に急ぎ足で会社に向かった。