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奥歯でサクサクと音がする。
この身体の8割は、もう彼のお菓子で出来ているのではないだろうか。
そして1割は彼の淹れた紅茶だ。
思った事を口に出すと、僕の正面に座るヤンキーは何故か耳まで赤くしてどもり始めた。
「あ、そ、そうっスかね」
「うん。僕、子供の頃お腹弱くてさ。今でも物食うのあんまり好きじゃないんだけど」
「はあ」
「横溝の菓子は、食いたいって思う。美味しくて、幸せだなって思うよ」
「はあ」
気の抜けた返事をした男はそのままうつむいた。
覗く首筋まで朱く染まっている。
まるで脳天から湯気まで出そうだった。
「う…嬉しいです。ありがとございます」
「お前は、そんななりして本当素直で可愛いな」
「可愛くはないっス」
窓から差し込む夕焼けに、彼の金髪がきらめく。
根元は少し黒くなり、所々まだらになっていた。
そういえば、僕は彼の金髪姿しか知らない。
「お前、地毛は真っ黒?」
「え? ああ、そうっス」
「ふーん。見てみたいな」
「……のびたら、止めます。金髪」
うつむいたまま、横溝はちらりと視線だけ寄越した。その瞳がやや三白眼な事に気付く。
今まで、知らなかった。