収束世界のコスモス
番外編ー旅人による世界の調査ー
輪廻の森が存在する目的、偶発的に誕生した彼についてのお話
稚拙な説明回、特に読まなくても大丈夫なお話です。
昨日、私はとても興味深い存在に遭遇した。
私は現在、ほぼ全ての領域が樹海に覆われた世界に来ている。ちょうど気持ちよく数千年の昼寝から起きた時に、大規模な世界の力の流出を検知した為だ。
まるで風船に穴を開けたような力の流出は、複数の世界を崩壊させる危険性がある。また愚かな創造主が自分勝手に力を搾取して、己の世界を発展させているのだろうか。それとも管理者が接続を誤り、高位世界に直接繋げてしまったのだろうか。いずれにせよ調査して、原因を確かめなければならない。
樹海の中に入り、流出した力が収束する中央領域へと足を踏み入れる。草原の中央、目の前には淡い光を放ち天高く聳える大樹が存在した。どうやら全ての力が最終的にこの大樹に集積し、蓄えられているようだ。
現在の肉体の性能では大体の機能しか分からず、その目的まで見透かすことはできない。大樹に意識を接続すれば、その存在情報を解析して、原因を突き止めることができるだろう。
大樹の根元で意識を繋げようした時、この世界では出会った事がない明確な知性を持つ生物を感知する。
大きな蜘蛛のような外見をしており、これまでこの森で見てきた単なる装置として存在する物体とは、一線を画する生物のようだ。挨拶を交わして、会話をしてみると、とても友好的で調査の協力を申し出てくれた。
彼の協力により少々のアクシデントが発生したが、この世界についての情報が全て集まった。
彼の見た光景を、順を追って解析しよう。
彼の見た淡く光る樹海は他の世界から力を奪い取り、自らの世界に取り込む役目を担っている。太く長く伸びる根は時空間や次元などの法則、根源的な理の壁を超えて侵食し、別世界の力を強制的に奪い取る。奪った力はある程度分解して、霧状にしてから散布される。
樹海に存在する生物のような物体は、大木によって分解された様々な力を取り込む。取り込まれた力は体内でさらに分解、圧縮、純化が行われ根源に近い力へと変化する。
この物体は生物の形を取り、皆樹海と共に生きているような振る舞いをしているが、単に樹海のモデルとなった地域の生態系を真似ているだけである。そこに意思はなく、ただ装置として全く変化がない作業をしているだけの物体。外見だけを取り繕った機械と言ってもいい。
純粋な力となった物は、彼が巌石大蛇と読んでいた自動回収装置によって草原の大樹に運ばれる。大樹の根元に着くと鱗として固形化した力を振るい落とし、空となったら回収作業へと戻る。このサイクルを延々と繰り返している。また巌石大蛇は緊急時には体を戦闘用に作り変えて襲いかかる。
彼を排除しに来た時は、完全に分解して大樹に偽造情報を送る事により事なきを得た。
大樹の周辺に漂う綿毛は、黒核が作り出す擬似生命体の種。巌石大蛇により減った装置を補充する為に、常に樹海へ撒き散らしている。分体である樹海の樹木に触れると、機能を設定されて動植物の形に整えられて産み落とされる。綿毛の状態だと、本体の黒核に近い性質を持つ。
本体の大樹、もとい黒核にはこの世界に集まる全ての力を集約し、極限まで凝縮されている。この黒核に集められた莫大な力は、ある目的の為に使用させる。
創世――――力は大いなる世界創り上げる為に使われる。
それは彼が黒核に触れた時、僅かに残っていたある残留思念から得られた情報。一人の科学者が宇宙を我々と同じ生命と仮定し、組み立てた理論。
最初に宇宙は長い時を掛けて、周囲のエネルギーを吸収して、限界まで膨張、成長する。限界を迎えた宇宙は、収縮して今まで蓄えたエネルギーを圧縮する事で、寿命を迎えて消滅する直前に、幾つかの小さな宇宙を子孫として残す。簡単に説明するとそんな理論だ。
その理論を実証する為に科学者は、宇宙空間の一部を圧縮、膨大エネルギーを注入する事で宇宙の種とも言える存在を誕生させた。
だが、実験で作り出された種子は、とても不安定で発芽すらしない不完全な物だった。本来数え切れない年月を掛けて生み出される種子は、特殊な環境下で尚且発芽に必要なエネルギーが存在しないと数分と経たずに崩壊してしまうのだ。
科学者が用意できる環境では発芽の条件を満たす事は出来ない。なんとしても自らの理論を証明したい科学者は、種子に機械を取り付けて別次元、異世界にばら撒く事で発芽を観測しようとした。
撒かれた種子はその殆どが崩壊したが、一部は科学者が立てた理論通りに宇宙へと発芽を果たした。めでたく科学者の理論は証明されたのだ。
しかし想定外の環境からか、科学者の観測域を離れて特異の変化を遂げた種子もいた。
想定外の環境によって種子は他世界の力を無差別に搾取する根源的な理を発現した。それが宇宙のみならず世界を、大規模な創世を果たそうとする樹海に覆われた世界の真実。
樹海は最初の種子が造られた際に、宇宙空間の圧縮に巻き込まれた惑星を参考して展開しているのだろう。樹海に広がる樹木や生物も惑星と一緒に巻き込まれたものを、模したのだろう。
この樹海に覆われた世界の事は全て理解した。
この世界を崩壊させる程のシステムを生み出したのは、周囲の事を一切顧みない無知な科学者が行った無謀な実験だ。偶然で、知らなかったとしてもこれは複数の世界を巻き込んだ重大な犯罪。恐らく、科学者は近い内に管理者に処罰されるだろう。
この世界は管理者に連絡を送り、庭師を派遣してもらおう。樹海は管理され、二度と他の世界から力を搾取しなくなるだろう。
彼についてだが、生まれたのは単なる偶然だろう。
世界の壁を超える根が開けた隙間から死亡した彼の情報、魂とも言える存在が樹海に流れついて、黒核が生み出した擬似生命体の種と融合したのだ。種は本体の種子とほぼ同一の性質を持つ綿毛の状態、力を受け止める空の器に魂が入り込んだ結果、本来生まれる事がない生命が誕生した。
彼の自我が装置として形を持つ事を拒絶した為、生まれた時点では不定形の体になったのだろう。排除されるべきバグのような存在だ。だが彼は融合した種の性質、創世の能力を使う事でここまで生存してきた。
人としての意識のせいか、能力はとても小規模な範囲に収まっている。世界から力を奪う性質、大いなる世界を創る性質は人として理解できず、彼が望む体の変異にしか用いられていない。
特に害がなく、面白い人物なので過度な干渉はせずに、新たな友人として接した。最強の力が欲しいなどと言っていたが、自らの性能を全て発揮すれば、勝負にもならず大抵の生物は、塵も残さず破壊できるだろう。
やんわりとその事を諭しながら、変異の参考になるだろう品物を送り、皮肉を込めて、盲目白痴の混沌アザトースと言う名前を送った。
調査を終えて一息ついたが、次はどの世界を行こうか。
昼寝から目覚めてすぐ調査に出かけた為、明確な目的地を決めずにここまで来たが、彼と話す事で彼の住んでいた世界に興味が湧いた。
次は彼の来た世界に向かおう。
彼は自分に影響されてか、旅に出かけるらしい。新たな旅仲間という事で、簡単な通信機を送り、見送った。
アザトの事だからどんな世界でも適応して生きていけるだろう。心配になったら時折連絡を取ってみよう。
とりあえず樹海の真実と彼のお話でした。
樹海を分かりやすくまとめると。
宇宙は生命に似ている(科学者並感)
なんやかんやあって実験で宇宙の種が作れた。
芽吹かないのでそこらへんにばら撒いた。
予想外の変異で世界がやばい。
です。四行に無理やりまとめましたが大体そんな感じです。
科学者の世界は創造主達の世界と違い、文明が発達しておらず多元宇宙又は、無限の平行世界くらいしか観測できません。科学力がまだ未熟な為、宇宙を創ろうとしても失敗するはずなのですが、その世界ではある程度理論が正しかった為にほんの少しだけ成功しました。甚大な被害を出した成功ですが。
次回は人物紹介をする予定。アマラのプロフィールはそこで公開。
次次回に第二章が始まります。楽しみに待っていてね。