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双盗技  作者: 桐島直千
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異世界の奇妙なスキル盗り

初投稿小説なのでお手柔らかに

技名は戦技先進国ではこうつけるだろうと、主人公達他国人が勝手に命名しているモノであり、正確な独〇語ではありません。ということで

プロローグ1


 とある辺境の村。老いた戦士は嘆きを隠せなかった。幾多の危機から彼と彼の故郷を守って来た戦技:ウムシュラーゲンアングリフを継承するに足る若者がいないのだ。傷つきながらも敵を倒す技であるがゆえに、おいそれと実剣で伝授できぬのだ。


 熱心に型をなぞる若者ならばいる。だが、才能はなさそうだ。敵の剣に皮を切らせ、逆転の一撃を放つ前に間違いなく死ぬだろう。


 広場での稽古中、その若者は不意にうずくまった。


「う、左目が・・・」

「どうした、ゴミでも入ったか」


「次第に大きくなる文字のようなものが目に。こすっても取れないのです」


 老戦士には覚えがあった。かつて負傷したとき、目の中を下から上に血が垂れる経験をしたことがある。その後も眼球の中で固まった血のせいで常時蚊が飛んでいるように見え、非常に困った。視野の左下が今も見えにくい。


 才能も無く、目を悪くした以上、この若者はもう剣を置くしかないだろう。説得したが、若者は頑として聞き入れなかった。


「破門されるのであれば死んだも同然です!命をかけて習得してご覧にいれます!必ず成功させて見せますから、私に切り込んでください!それで死んでも本望です!」


 若者は村の広場で騒いだため、人だかりができてしまった。老戦士は、仕置きが必要だと思った。役立たずの左目を切り裂いて鎖骨で止める。運悪く殺しても、若者が望んだことだと村中が知っている。


 老境。力と技の衰え。全力を出さねば若者の先は取れない。全力で止めなければ若者が死ぬ。が、そこで不完全であれウムシュラーゲンアングリフを出されたら?


 ああ、その時は若き日に試みたまま未習得の、ウムシュラーゲンドゥエットといこうか。若者よ、最後の習得の機会をありがとう。未熟な貴様がウムシュを出せるなら、わしがドゥエを出せないわけがあるまい。


 若者は馬鹿正直に待っている。戦いの機微の中で、己より強き者を超えるための技だと教えたはずなのに。鎖骨で止める気でやれとも言ったが、字面通りそこで構えろとの意味ではない。


 肉を切らせて骨を断つというが、筋肉を切られたのでは後の先は出せぬ。鎖骨よりも切り下げられれば肺腑をやられて命がなくなる。鎖骨とは、捨ててかかれる限界線を示す単なる指標であるが、わからぬらしい。見込みなし。老戦士は頃合いにゆらっと近づいた。


「きゃあっ」


 突然、若者の右後方にいた村娘が嬌声をあげた。見物人に押されて姿勢を崩したのだ。


 若者がそれに気を取られた。視線が右に泳ぐ。


 老戦士は全力で若者の左死角に踏み込んだ。縮地まがいの、老いたと思えぬ長大な一歩。右に行った若者の顔があわてて左に戻ってくる。もう遅い。はまっている。


 左目が止まった位置。そこは老戦士の剣の軌道の真下、予約座標。


(文字が極大になってッ、見えないッ)


 若者の左眼球は切り裂かれた。左頬に縦に真一文字の傷をつけながら、剣は鎖骨を両断するまで止まらない。許せ、これでも手加減している。円軌道で切れば頭蓋深く傷つくが、剣の先端だけを真下に落としている。苦しむが、生還し得る傷だ。

 

 だが。


 今、切り裂かれた眼球から噴き出しているのは血ではなく、朱き光。


 刹那の際に老戦士は見た。まばゆき光とともに眼球が再生してゆく。


(バカなッ、デア・ベーゼブリックだとッ!)

「ボグニモ、めたぁぁぁ!ウムシュラーゲンアングリフッッ!!!」


 若者の技が発動する。鎖骨の位置で受け止めた相手の剣の威力を、自らの剣に蓄える!


 愚直な精神が鍛えた重厚な下半身が、右へ行って左に戻って来た無茶な上半身を支えつつ、さらに左へ半回転!老戦士の剣を巻き込み無力化しつつ、若者の剣がうなりをあげて再度右へと反発発射される!


「おのれ若造ッ、ウムシュラーゲン・ドゥエッ!!!」


 つられたか老戦士も無理矢理覚醒した。巻き込まれた時間は、なすすべなき時間などではない。ウムシュ・ドゥエの初動時間でしかない。逆転技を再度逆転する究極の二重奏が発動する。


 剣と剣が同じ方向に切り上げられた。閃光と共振、金属音が広場を突き抜けて行った。


「せんぜいッ、ボグニモ、僕にも見えましたッ。ウムシュラーゲンアングリフの極意が!」


 若者は元気に、跳ね回って喜んでいた。


 老戦士は、力を使い切ってへたり込んでいた。ウムシュ・ドゥエを習得した疲労。方向を合わせて殺さない、殺されないように持って行った疲労。そして、ごっそりと何かが無くなった疲労。


(邪眼持ちめ・・・・)


 若者は、技を鍛錬によって習得したのではなかった。意図せぬデア・ベーゼブリックの発動によって盗み取ったのだ。本人は真面目だが才能の無い努力家で憎めない性格。小憎らしいが恨む気が起きなかった。極限の中でより上級の技を老戦士は得たのだ。


「渡すことは無いと思っていたが、用意していた紹介状をやろう。いけ好かない奴だがわしの師の孫で、クンストマイスターをやっておる男がおる。好きなだけ技を盗んで来い。わしの元へはもう戻るな」


「ありがとうございますうううう。御恩は一生忘れませんんん」

「傷に布を巻いてやる。向こうにつくまで外すなよ。路銀もやろう。泣くな。はよう行け」


「わがりました。ではいきますが、おなごりおしゅう・・・」

「男なら振り返ってはならぬ!前だけを見て進め!」


 歩き出した若者をすこし見送ると、あわてて老戦士は路地に隠れた。もう二度と会いたくない邪眼持ち。どこへなりとも仕官をも可能とする、老後を保障してくれる超絶技をくれたのだ。お互い別のところで幸せになろうではないか。


 ウムシュはわりと凄い技だが、他に使い手がいないわけではない。本当に強い奴は逆転技になど頼らない。邪眼で技だけ盗んでも恨みを買うばかり。邪眼を使いこなせるような性格ではなし。はてどうなることやら。


 そんなことよりも老戦士は自分の未来を見据えることにした。


技名が間違っていたので修正しました。


レイアウトを修正しました。

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