寒露
「えっきしっ」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
家の中心である居間に、高校2年で双子の姉の井野嶽桜と弟の幌が昼ご飯を食べていた。
ちょうどくしゃみをした桜に、熱い番茶を差し出す。
「ありがと」
「ん」
そう言って、ラーメンをいっきに啜る。
「しかし、寒くなってきたよねー」
「今日は寒露だから。仕方ないさ」
「カンロ?のどあめか何か?」
「寒い露と書いて寒露。菊が咲き、コオロギが鳴いて、冬鳥がやってくるころのことを言うんだ。そろそろ露が凍りだすこともあるから、このように言われるんだ」
「やっぱし寒くなって当たり前なんだね」
「暦が進めば、現実も進んでいくものさ」
幌がスープを言い終わると飲みほした。