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この生徒会長キラキラしてる。  作者: フレジェ
第二編 かけっこ鬼ごっこ
8/11

不憫な高校のようです。

 似非クイズ番組を開催した二日後。それは、秋の香りが漂い始めた時期でした。

 そして今この学校で、面倒事というのは、私にとって避けられようのないものだったのです。

 今更ですが。


 +*☆*+


 少し偏差値が高めの都立継波つぎなみ高校では、普通の授業が行われ、普通じゃない生徒会役員がはっちゃけると言う普通の高校にはない異常さをふんだんに発揮している可哀想な高校です。

 この高校に配属された堅物な教師は、大抵の方が転属の時には涙を流し、いつの間にか頭を灰色か白に染めて去っていきます。気のいい熱血系だったりてきとーな性格の、生徒に気に入られる類の教師は楽しむ方もいらっしゃるようなのですが。

 その原因はここ数年の生徒会長又は生徒会役員は最低一人、似たような価値観と同じテンションと似たような容姿と同じ苗字の人が必ずいるからなのです。子沢山のようです畜生。


「ひなー、次体育だって。着替えちゃいましょ」


 友人Aがやってきたようです。私にとって変人ではない大事な友人です。同じクラスでありがとう。

 …まあ、なんだかんだありつつも授業妨害はあまりありませんし、イベントが盛んにあるせいか高校の知名度も上がってきています。偏差値が高めにしては面白い高校だという生徒がここ数年で増え、被害を受けるのは過ぎた行動だと何度宥めても聞いてくれない生徒のトップに対するなんかもうやってられるかと屋台で酒をがぶ飲みしている先生を……話が逸れました。


「亜美。今行きます」


「あ、そういや今日合同授業なんだってー。体育祭の練習らしいわよ」


「…合同?」


 被害を受けるのは教師だけでなく、生徒にも少なからずいるのです。実は細かいことが苦手な今期生徒会長は、その筆頭である生徒会役員をこき使うのです。特に仕事を一緒にやることが多い、副会長を中心に。

 全くとんだ極悪人ですよね。


「それはつまりB組とも…?」


「ドントマインド」


 しかももう一人の副会長はなんと引きこもりになりやがりました。選挙終わったばかりだろうがよこん畜生。

 と言う気分で着替えて校庭へ行くと。


「宗一ぃぃ!! 勝負するぞおおおぉ!!」


「……」


「負けるかあああぁ!!」


 なんと、ウォーミングアップなのか軽く校庭を回っている集団の中でひとり、前生徒会長である市川宗一さんの自称ライバルである波多光司郎さんが全速力で何週も走っていました。


「ははははは!! どうした宗一ぃ!!怖気づいたかははははは」


「……」


 驚くほど完璧な無視ですね。だからでしょうか、一人で何週もしている波多さんにどこか生ぬるい視線が注がれているのは。 

 それにしたってまさか、全校合同だったとは。つまりは三年も一年も一緒ですよね…。


「あら、可愛い子が来たわよ」


 そう言ってニヤニヤしながら亜美は昇降口の方を見やりました。私も視線を追って見たのですが、なるほど。確かに可愛い子でした。ええそれはもう、体育着の可愛い男の子に年齢問わずの女の子達が大層興奮しています。…いや、流石にちょっとやばいのでは。おいおいあなた保健室の先生でしょう、保健室で待機していて下さいよ。いやいや給食のおばちゃんちょっと待て!


「相変わらずきゃいきゃいしてるわねー、この学校大丈夫なの?」


 ごもっともです。でもそれを言うと私まで不安になるので、ひっそりと得た情報でも開示しておきましょうか。


「確かに三年女子の三分の二はファンクラブ会員ですが、二年と一年は会長と市川さんに寄り気味なのでギリ調和は保たれています」


「…雛。あなたってやっぱり苦労性なのね…」


「…わかってはいました」


 転校生で更に帰国子女である亜美はとてつもない面食いではありますが、眼福だとしか言わないしどうやら本命がいるらしく狂っていない貴重な友人です。実に貴重な友人です。癒しといっても過言ではありません。

 と、その時一年生のグループの中から小柄な影が走ってきました。


「雛先輩ー!」


 その少女はボブカットで明るい人畜無害そうな面持ちの、小動物の血肉を喰らい毛皮を幾重にもかぶった、私の生徒会の後輩でした。


「あら、憲子ちゃんだっけ?」


「…ああ、そういうあなたは自称マドンナかっこ笑かっことじの木島亜美先輩ではないですか。私の雛先輩に何の用ですかけっ」


「……」


 私に腕を絡めてきた生徒会メンバーの書記である滋野憲子しだのりこは、正直に言いますキモいです。


「相変わらず宗様のあの無視っぷりはたまらないですね! それでね先輩、つむじぇんが生徒会集合だって」


「そうですか。知らせてくれてありがとうございます」


「えへ、早く行きましょうよー! 今日こそはあの罵詈雑言聞かせてくださいっ」


「では亜美、また後ほど」


「…あ、うん。気をしっかりね…」


 気を保つのは得意なので安心してください。とりあえずその視線をやめて、涙ぐまないで。こんなのは序の口ですよ。なにせ私が最も迷惑がるのはこの子ではないのですから。


「あ、雛ちゃーん! キラッ」


 ほら来た。

ちなみに継波なんて名前の高校は多分存在しません。ぱっと思いつきの名前ですので、ネット検索しても確か出てこなかったしきっと大丈夫でしょう。


そして「かけっこ鬼ごっこ」編、書記ののりこちゃん新登場です。これからも副会長をどんどん不憫にしていきます。学校含め。

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