調子に乗ってきたようです。
たけとう。
竹刀を高校生で、しない、ではなくたけとうと読むとは。しかも、まさか、高校三年生で。驚きの域を超えて引きますね。
「ざ、残念不正解ですよキラッ」
しかもこいつ、声がいまだに上擦っています。その所為か盛り上げるのを忘れているようです。……まずいですね。またテンションだだ下がりは避けたいところです。
これは参加者の皆さんに賭けるしかありませんかね。
「剣道で使用する」
ピンポン!
さあ誰が救世主か。
「し、しない、竹刀よね?」
亜美でした。不安なのでしょうか、声が震えています。心配しなくても滑ってはいませんよ。
「えーと、ぶっぶー、不正解キラッ」
よし、微妙ですがこいつも持ち直してきたようです。一方、亜美は恥ずかしいのか座った状態で地団駄踏んでますね。座りながら地団駄踏む人はじめて見ました。
そしてだんだんと空気が浮わつき始めました。イベントは浮わついてこそなんぼです。テンションも上がり気味で良い兆候です。この調子で行きましょう。
「剣道で使用する防具の」
ピンポン!
鳴りました。おお、市川さんです。前に比べると随分と押すのが遅いですね。市川さんでも警戒するのでしょうか。それにしたって一問目の驚きの早さはどうした。
あら、なんだかさっきの不正解者の方々がわめいておりますね。防具ですけど、ええ何か。
「……、籠手」
「おおっ! 正解です、キラッ」
何と正解。調子が戻ってきたのでしょうか、それともエスパーなんでしょうか。普通そこまで読めねえよ。
「剣道で使用する防具の一つで、手につける防具をなんと言うでしょう? という問題です。籠手ですね、正解です。というわけでエントリーナンバー一番の市川さん、」
「一ポイント獲得ですねっ! キラッ」
ね、をつけたか。まあいい、最初ほどでなくとも盛り上がってますし。あっ、女子の歓声も復活してるウザい。
……ふうむ、そろそろ引っかけ問題いきますか。今までも十分引っ掛けでしたけど。ここからが本番なのです。
「さあっ、次に行くぜ! 第六問目だっ、キラッ」
「フランス語で黒」
ピンポン!
鳴りました。しかし早いですね、流石にここで押す人がいるとは思いませんでした。読んだ部分は三問目と同じ文なんですからね。
しかも亜美じゃありませんか。反射的に押したのでしょう、困惑してますね。
「……えっ? やば、っとー…。シュバルツ?」
「ぶっぶー! ふっせいかーい! キラッ」
「あう…。」
やっちまったなって言いたくなりました。訂正、言ってあげたくなりました。ああ見えて素直な子なんです。見た目女王様中身純情。これってギャップ萌え? というのでしょうか。
「フ」
ピンポン!
はやっ。この早押しは市川さんですか。なんか懐かしい早さですね。……うわ、隣のキラウザ野郎が間違いを期待してキラキラキラしてる。キラキラはデフォルト。ああいつものことながら眩しいウザい。
ですがさすが市川さんと言ったところでしょうか、悪意と期待半々の視線をさらりと受け流して平然と答えました。
「ノワ」
なんと。
「ちっ、ぴんぽーん! よくわかりましたね正解です、キラッ」
本当によくわかりましたね、調子が戻ってきたんでしょうか。にしたって早いです。舌打ちにはあえて触れません。ウザい。
「フランス語で黒はノワールですが、フランス語でナッツや木の実のことを何と言うでしょう? という問題です。ナッツはノワ、正解です。なので、」
「エントリーナンバー一番の市川先輩、一ポイント獲得です! これで三ポイントめだぜ、キラァッ」
こいつ!
剣道のとこ、ちょっぴりかじっただけでよく知らないんで・・・。籠手で合ってます?
ちなみに実はたけとうって自信満々に問題集に書いたの、中学生のときだったり。
フレジェは大いに笑われました。以後、気をつけているのです・・・。