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この生徒会長キラキラしてる。  作者: フレジェ
第一編 キラウザクイズ似非番組
4/11

テンションはバカに左右されるようです。

 ピンポン!


 おや、このテンションの下がった会場でボタンを押した猛者はどなたでしょうか。


「えと…」


 なんと、瀬本さんでした。そういえばさっき知ってるだとか言っていましたね。

 それでもこのテンションだだ下がりの中ではしり込みしてしまうようです。発言するのを戸惑うように視線をそわそわさせる瀬本さんは、頬をリンゴ色に染めていらっしゃり、どこかの女の子達は鼻からトマトジュースを絞り出していました。


「はい残りさーん、にーい、いーち、」


 肘をつき、つまらなそうな声音でカウントダウンを始めた会長に焦ったのでしょう、瀬本さんは慌てたように言いました。


「わわっ、け、健康オタクでしょ?」


「……せいかーい。キラーン」


 とことんテンション下がってますね。こういうときにこそ上げて欲しいものです。

 さて、この問題の問題文は全部読みましたし、繰り返し読まなくてもいいですよね。


「『大豆しば』は健康に気を使いすぎる健康オタク、正解です。というわけでエントリーナンバー三番の瀬本さん、……。一ポイント獲得です」


 台詞を取るのならとことんやって欲しいですね。

 その所為か歓声も弱まっており、狂喜狂乱している一部の女子を除いて滑ってしまった展開に観客が楽しめていないようです。……仕方ない。気持ち悪いのですが我慢して、隣のだらけモードに移行しそうな会長に耳打ちをします。

 こんなんでも生徒会が直々に開催したイベント。生徒が不満を漏らせば信頼がた落ちになってしまいます。それだけは防がねば。


「会長。もう少し覇気を出して盛り上げてください。これでは交流もクソもないです」


 そう言いながら嫌々顔を近づけると、爽やかな柑橘系の香水を使っていたようでほのかに香りました。

 見た目的にはお似合いですね。あくまで、見た目的には。


「んぅ? そうは言っても雛ちゃん、なーんか乗んないんだよね。いつもの市川先輩の独走状態ならまだしも、なんでかあの猫かぶりっ子がリードしちゃってるしー。キラッ、ちょっとつまんないんだよねー」


 女子高生かおんどらあ。猫かぶりはあんたもだろうが。

 しかし確かに珍しい。いつもトップで走り抜ける市川さんが序盤とは言え、いまだ一ポイントとは。亜美も一ポイントですが、瀬本さんは今ので二ポイント獲得しています。書記の子が「宗様が分かりにくい問題作ってみよー! 雛先輩協力してぇ」とか言ってノリノリだったからでしょうか。

 だからと言ってこのまま続けるわけにはいきません。


「会長、我が儘言ってないで盛り上げなさい。…お姉さんに言いつけますよ」


「イエス、サー!」


 ……切り札を使ってしまった。週に一回しか使えないのに。まだ週の始め頃なのに…。

 しかし背に腹は代えられません。効果は覿面てきめんなのです。その証拠に会長はいつものごとくお元気になられてマイクを強く握りしめました。効果音は雑なバイブレーションと亀裂音です。大丈夫、あのマイクは特別製です、まだ持ちます。


「ごごほんっ! さあさあ次は第五問目だ、が! 瀬本真樹選手は既に二ポイント獲得している! 一方、マジ学校のトップ略してMGTこと市川宗一選手は何といまだに一ポイントォ! どうしたどうした前生徒会長!? 初の黒星いっちゃうかぁー!? はたまたマジ自称マドンナ略してMZMこと木島亜美選手がここで追い上げを見せるかぁー!? 脳筋野郎に期待はするな! さあ今までにない展開だ、改めて第五問! いくぜキラアアァッ」


 正に生徒会長効果。いや、キラウザ効果と言うべきでしょうか。皆さんもよく盛り上がられるものですね。これはもはや騒音です。マジ観声騒音です。略す気はありません。

 ついでに煽り文句もあったお陰で選手の方々もやる気満々です。さて、このテンションを崩さぬうちに。


「剣道で使」


 ピンポン!


 鳴りました。おや、なんと波多さんです。ですが様子がおかしいですね、額に青筋が浮き出ていてグロテスクです。なんか悪口でも言われたんでしょうかねー。


「マジ脳筋バカ略してMNBこと波多光司郎選手だぁっ! 答えは!?」


 このキラウザ野郎は忠実にまだ盛り上げようとしているようです。あら、波多さんの青筋が増えていきますね。


「のっ、脳筋言うなあ!! 気にしてんだぞ!!」


 まさかのまさか、気にしていたようです。バカってところには触れないんですね。


「ここで宗一を超えて、脳筋じゃないところを証明してやるっ!!」


 素晴らしくやる気満々です。それにしたって声が大きいですね。…ちょ、盛大に吸い込んでるし。咳き込んだし。耳ふさいどこ。


「答えは、竹刀たけとうだっ!!!」


 沈黙。

 声が響き渡りながらも、皆さんが沈黙しているのがよくわかります。どうしよう、折角盛り上がってたのに。

 そこで、珍しくひきつった顔をした会長が上擦った声で尋ねました。


「あ、す、すみません波多先輩。もっかい言ってもらえるかな? キ、キラッ」


「だから、たけとうだ!!」


 マジですか。

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