表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この生徒会長キラキラしてる。  作者: フレジェ
第一編 キラウザクイズ似非番組
2/11

横槍の中始まったようです。

 古臭さが若干目立つ体育館に、パイプ椅子と教室の教卓、マイクなどを勝手に拝借して作られた簡易的な会場。

 そこでは今まさに、宴が始まろうとしていました。


「問題は雑学から学問的なものまで千差万別だ! ランダムに出てくるので惑わされないように頑張れよ! キラッ」


 ……ちっ、うざい。

 横目で睨みながら問題文の束を整えます。書記の女の子と二人でせっせと作った問題です。ちなみに立案者であるこのキラウザ野郎は手伝いもしませんでした。そのくせ「正解したときのピンポーンと外したときのぶっぶーと答えだけ言いたいんだけど、いいかな? キラッ」だなんてのたまいやがったので解答だけ渡してあります。しかも「なるべく面白い問題作ってね。キラッ」だとか注文までしやがりました。

 とんでもない自己中です。


「また、正解するごとに一ポイントが贈られる。次のチャイムが鳴るまでに多くとれた選手の勝利だ! 準備は良いかな?」


 こいつ、無駄に美声なんだよな。やっぱり軽く舌打ちして、いつでも読めるようにスタンバイします。


「では、第一問! キラッ」


 会場が静まり返り、参加者たちが緊張した様子でボタンに手を添えました。

 私は小さくため息をついてから、一問目の問題文を読み始めました。


「……チョコレートの原料は」


 ピンポン!


 早くもボタンを押した音が鳴りました。お馴染みの音ですね。ピカピカとランプを点灯させた席に座っていたのは、私の友人Aでもある木島亜美でした。


「カカオ豆っ!」


 勝ち誇った様子でそう短く叫んだ亜美は、よっしゃ、とかなんとか呟いていました。

 そんな亜美を見た会長は、バカにしたようにニコリとしてから言いました。


「ぶっぶー、残念でした不正解! キラッ」


 えぇー!?という亜美のブーイングと会長に対する女子の黄色い歓声が響く中、私は最初から読み直そうとしました。一応の決まりです。


「ちょ」


 ピンポン!


 はやっ。回答者の席を見ると、前生徒会長の市川さんが口を開くところでした。


「バナナの葉」


 簡潔にそういう市川さんに私は驚きました。隣に座る会長はおお、と驚きを露にしたあとにニッコリと笑って言います。


「正解です! キラッ、さすが市川先輩だ!」


「そ、宗一に負けたあああぁっ!! くそっ、何故だ!? 何故バナナの皮なんだ!?」


「そーよ、何でよ!?」


「バナナの葉っぱですよ、先輩方。…でも、何でですか? 僕も知りたいなぁ」


 三者三様の反応を見せた回答者たちは、口々に聞いてきました。ただ、一年の瀬本さんが首をかしげて聞いたとき、観客で女子の一団が悶絶しかけていたのには目を瞑りましょう。

 隣の催促するキラウザ視線を無視して私は問題文を最後まで読むことにしました。


「チョコレートの原料はカカオ豆ですが、発酵させて実から種子であるカカオ豆を取り出す際、実を包むのに使用する葉の果物はなんでしょう? という問題です。限られた温暖な地域でしか育たないカカオの」


 また横の野郎に紙を引ったくられた。この野郎。


「カカオの木はバナナの木と生育条件が似通っているのさ! 近場で手に入りやすく、それに長くて大きい。独特の芳香もあって遥か古来からバナナの葉は使われているんだ。キラッ」


 それだけ言って紙を捨てるように返してきやがりました。この野郎。


「そんなん分かるかぁっ! 雛ちょっとこれ、難しくない!?」


 友の声ですが、無視します。


「……他にも理由はありますが省略をば」


「無視するなっ、」


「えー、見事正解しましたエントリーナンバー一番の市川さん、」


「一ポイント獲得です! キラッ」


 この野郎、人の台詞まで取りやがった。どこまでやれば気が済むんでしょうか。

 それにしてもさすが前回覇者。無駄なことにも詳しいようです。確かに普通は知りません、多分。

 他の方々、特に波多さんと亜美は音が聞こえてくるほどに歯軋りしたり教卓を叩いてへこませたりして、悔しさをぶちまけていました。


「ではどんどんいきましょう! 第二問! キラッ」


 流し目で次を読めと催促するキラウザ野郎。

 …ああ、怒りで手が震える。武者震いってことでお願いします。


「…法律で労働衛生法規に分類されている労働基準法ですが、一週間を通して」


 ピンポン!


 鳴りました。誰かと視線を動かせば、押したのはなんと瀬本さんでした。ファンクラブの方々からの悲鳴もとい歓声が上がる中、あどけなさがにじみ出る顔で瀬本さんは言いました。


「四十時間!」


「正解っ! キラッ」


「やったぁ!」


 なんと正解でした。

 そして可愛らしく微笑んだ瀬本さんは確かに、天使でした。

 ……ファンクラブの方々に、ティッシュ配った方がいいですかね。おっと、隣からウザキラ光線送られる前に読んでしまいましょう。


「法律で労働衛生法規に分類されている労働基準法ですが、一週間を通しての総合労働時間は何時間まででしょう? という問題です。一週間で四十時間までなので、正解です。なのでエントリーナンバー三番の瀬本さん、」


「一ポイント獲得です! キラッ」


 確信しました。狙ってやっていやがる、こいつ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ