面倒事のようです。
ぞろりぞろりと奇人変人の塊である一団は、ようやく校庭が見渡せる場所に着きました。…一応念のため最重要事項なので断っておきますが、私は奇人変人の中には当然含まれていませんよ。この花田雛、親からもらった立派な名と体を、畜生道に身を堕としてなるものですか。
……ええはい現実逃避ですが何か。
「こっ、こらーお前たち! 整列しなさい!」
げっ、つむじぇんが来たー、きゃー吉良様ー、とか聞こえますがほぼ全員居る教師でも何故治められないのか。校庭に集まった生徒たちは整列なんて全くしていませんでした。まあ予想はしていましたけどね。
教師の何人かは懸命に声を上げたりしていますがそれ以外の教師は少しおざなりですね情けない。その頑張っている何人かの何人かはあらまあ頭部が真っ白ですね。
なんとか整列しかけている列はまばらにあるものの、騒がしい生徒の方が圧倒的に多いですね。それにしてもせめてお喋りだけに高じていればまだ可愛いものを、走り回って遊んでいる生徒までいるではないですか。……ふむ、場所と雰囲気的に、どうやら一年のようですね。
ちなみに生徒会の面々はほとんど動いていません。……え、私ですか? 私一人が行ってどうなるってんですか、事態の収拾は教師にお任せしますよ。無理そうですけれど。
……げっ、会長がニマニマしてる。何か企んでますよこのキラウザ野郎。
「まあまあ先生。落ち着いて下さいキラッ」
「…お、おお大久保! 何かいい考えでもあるのか?」
嫌な考えならあるでしょうよ。というかつむじぇん、『お』が五つ連なってますよ。
「ここは一つ、何かイベントを催して生徒たちの気を引き、それを済ませた後にさりげなーく全校練習に誘導する、というのは?」
おそらく全校練習なんてやる気ないですね。訂正します、この流れ、絶対やらないです。
「おお、いいじゃないか! それで、どんなイベントをやるんだ?」
そう言ってしまうあたり、この人も教師向いてないですよね。しかも生徒任せですか。
「そうですね……」
会長がそう呟いて無駄に真剣な顔で悩み始めた時、校庭の方から悲鳴が聞こえました。
ってうるさい。何人も……というか何十人も、というかこの悲鳴、というか黄色い歓声、というか聞き覚えがありますよ。ああ、面倒事の気配が……。かすかに内容が聞こえてしまいました。
「ちょっとー! 真紀ちゃんに何してるのよー!」
「そうよ、真紀君になんてことを!」
「この汚らわしい男子どもがァ、こちらの瀬本真紀様に泣いて土下座して謝らんかいゴラァッ!」
「瀬本に何するの、やめなさいよ! …べっ別にあんたを庇ってるわけじゃないんだからねっ」
「あたしの真紀を巻き込まないでちょうだーい」
「あんたどさくさに紛れて何言って……」
ああうるさい。そんな無駄な個性はいらないです。
「あれー、雛先輩、あれって『瀬本真紀ちゃんファンクラブ』の奴らですよねー?」
特に全くありがたくはないですが、いまだに私の片腕にしがみついたままである後輩の憲子があの個性派集団について答えてくれました。この前のクイズ大会の折、ファンクラブについて調べてみたら私の脳内で関わらない方がいいグループ認定されたので、出来れば騒がないで欲しかったです。にしたって何かあったんでしょうかまったく。
「新見。調べて来てくれるかい? キラッ、拒否権はないけど」
「喜んで!」
会長の傍に控えていた新見さんがダッシュして一年生の集団に特攻していきました。……可哀想に、が正しい見解なのかわからなくなってきました。彼の命令された時の表情、なんていい笑顔なんでしょう…。
「ただ今戻りましたっ!」
早っ。
「どうだった?」
「はっ。どうやら一年生男子が鬼ごっこをしており、調子に乗った約一名が鬼ごっこに参加していなかった一年A組の瀬本真紀に鬼を無理矢理押し付けたことによって瀬本真紀のファンクラブ会員が暴走、この騒ぎになったようです」
あの一瞬でどうやって調べた。あんた書記だろうが。関係ないか。
あっ、このキラウザ野郎なんか思いつきやがったようです、笑い方が悪戯小僧のそれになっています。
「よし新見。波多先輩を呼んで来い。 キラッ」
「喜んでえぇっ!」
ああ、嫌な予感。
あれ、新見君こんなキャラの予定じゃなかったのにな…。
もはやこの小説、キャラ小説と化してますよね。ふ、今更か…。
一回投稿してから会長の「キラッ」を忘れていたことに気づいて追加しました。
本気でウザく感じ始めた今日この頃。