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●短編集、裏(問いをかける小著)

豆本

作者: 黒十二色
掲載日:2026/06/16

 私は虫眼鏡を手に取った。


 両親の寝室、その押入れの前に、豆本らしきものが落ちていたからだ。


 指先にのせても指の大半が見えてしまうような、極小の書物だ。


 何も書かれていないように見える表紙をめくってみると、全体的に白いが、黒い部分もある。単に汚れているようにも見えるし、模様が描かれているようにも見える。


 文字情報かどうかもわからない。虫眼鏡で見ようとしても、なおわからない。


 これは一体何だ。


 家の誰にも、小さな人形ハウスを作る趣味はないはずだ。


 私は極小の豆本を手に取り、学校に持って行った。


 理科準備室にしのびこみ、顕微鏡を借りてのぞいてみると、読めた。


 でも、大部分が判読不能で、読める部分もとぎれとぎれになっていて、断片的にしか読めない。


「ええと、『第九季より……途絶……続を試みるも……突如として空が開く。言い伝えの光を確……。……壊滅す……DB地区第十三道との……解と同盟が成立。空の果てとの……べき闘争に……』なにこれ」


 次々にページをめくっていくと、最後のページに、明らかに手書きで走り書きされた文字があった。


『智者どもは、空の果て、巨大世界の存在を認めない。だが私は信じている。この本が読まれているならば、私が正しかったことになる』


 どういうことなのかと考えようとしたとき、


「誰かいるのか」


 先生らしき人の声がして、あわてて微小の豆本をポケットに入れて、逃げた。


 家に戻って、ポケットに入れたはずの豆本をさがしたのだが、二度と見つかることはなかった。


 夢にしては鮮明に記憶に刻み込まれているけれど、もし現実だとしたら一つ腑に落ちないことがある。


 なぜ私は、あの文字を読めたのだろう。それは見たことのない言語のはずなのに。



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