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ざく切りがいい感じのコールスロー…… B$3.00

 それから数組の客の応対を終えたところで、サニーがリオードの肩を叩いた。


「班長、お疲れ! 休憩交代だよ~!」

「お疲れ様です、サニーさん。……あれ? 休憩にはちょっと早くないですか? それに、てっきりレックスさんが声をかけてくれるのかと……・」

「実はね……、賄いがめっちゃ美味しくて、だいぶ早く食べ終わっちゃったんだよね~! えへへ。 だから、『私が声掛けてくるよ~!』ってレックスくんに言ったんだ。……あ! ちゃんと休んでるから大丈夫だからね! 安心してね!」


 そう言うと、サニーはガッツポーズをして笑った。これが常習化している社畜なら大きな問題であるが、職業体験に来ている生徒たちが純粋にやりがいを感じているのであれば、無理に止めるのも違うだろう。


「それに、『社会人の基本は五分前行動! 早め早めの行動が信頼を作る!』って、どっかの本に書いてあったからさ!」

「……そういうことなら、わかりました。ありがとうございます」

「それにしても、お昼過ぎでも意外と人いるね~。……って、ん?」

「どうかしました?」

「あの人さ~、昨日もお店来てなかった? ていうか、今日の午前中も来てなかった?」

「え、どの方でしょう?」

「ほら、あそこの……二人掛けの席の、壁際の奥から二番目のところ。グレーのスウェットの人。キッチンからもちらっと見えたんだよね」


 サニーの言ったあたりを見てみれば、確かにスウェットの男が座っている。しかし、はっきり言ってしまえば、どこにでもいそうな男だった。


「昨日は入り口近くの席座ってて、確かあれは……クラシックバーガーの包みだった気がする! で、今日の朝はダブルバーガー頼んでたよね。さっきはクラシックチーズバーガーじゃなかった? 一回来るたびに隣のメニューに動いてて、しかも、毎回ドリンクセット! 多分次来るときはアボカドバーガーじゃないかな~?」

「へえ。よく覚えてますね」

「え、注文取ったの班長だよね?」

「へ?」


 ただただサニーの記憶力の良さに感心していただけなのに、突然自分に矢印を向けられて思わず固まる。まさか、相対的に自分の記憶力の無さが露呈することになろうとは、思いもしなかったのだ。


「班長って、お客さんとしゃべる時は結構はきはきしてるし、最後の注文の整理がめっちゃわかりやすいんだよね。それをさ、あれだけ煩い中でもヘイゼルちゃんが正確に聞き取って、ちょっとだけ早く教えてくれて……。あ、これスタッフさんたちとの秘密ね~! ……って、逆に覚えてないの?」

「えっ……!? す、すみません、ちょっと……」

「まったく。常連客の顔も覚えていないなんて、おもてなしの心ってやつが足りてないんじゃないか?」

「え、レックスくん!」


 サニーの後ろから、呆れた表情のレックスが現れた。レックスは左手で髪をかきあげながら、右手の親指で休憩室のあるバックヤードの方を指さした。


「おい、いつまで駄弁っているんだ。あんたが戻ってこないせいで、俺がサボっていると勘違いされたらどうする? 完璧な俺の評価が下がっては困るだろ」

「ご、ごめんね!? じゃあ、休憩いただきます!」

「安心しろ。俺がいればこの場は問題ない」


 レックスが自分のこぶしを胸にとんと当てたところで、「レックスくん~」とコールの呼ぶ声が聞こえる。どうやら、複数の客に声をかけられて困っているらしい。レックスは「今行く」と少し声を張って返すと、リオードの方を見てふんと息を鳴らし、一足先に三人の輪から抜けて行った。

 残された二人は、ぱちくりと目を合わせる。


「……レックスくんって、意外と優しいよね。さっきはさ、『時間いっぱいまで、俺は美しい髪を整えてから戻る』とか言ってたのに、わざわざこっち来てリオードくんが休憩入ってるか確認しに来てくれたんだもん」

「そうですね」


 良い子たちばかりだな、と思って、リオードはしみじみ感動を覚えていた。事務所や街中ではいつもリオードの方が希少種なので、人と人の助け合いというこんなにも温かい空間は随分久しぶりに感じられて、気が緩むと涙がほろりと零れそうである。本当に、この若い芽が摘まれることなく真直ぐに育ってくれることを願うばかりだ。


「じゃあ、私もそろそろ持ち場に戻らなきゃ。班長もちゃんと休んでね!」

「はい! ありがとうございます」


 リオードが礼を言うと、サニーは明るい笑顔を振りまきながら、キッチンへ続く扉の奥へ消えて行った。

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