喋ってたらなくなるフレンチフライ…… B$3.50
「……班長? どうかしたの~?」
「ああ、いや。僕、レッド・ロケット・ダイナーにご飯食べに来たことないはずなんですけど、なんかこの味知ってるような気がして……」
「そう、なんですか……?」
「そう、なんですかね……?」
ヘイゼルが首を傾げると、それにつられてリオードも同じ方向に首を傾ける。それを見ていたレックスは、「おい、疑問に疑問で返すな。答えはいつだって己で決めるものだろう」と言って、また髪をかきあげた。
若者の食欲というのはすさまじく、それから数十分で二つのテーブルいっぱいに並べられていた料理たちは、跡形もなく消えてなくなってしまった。もちろん、このダイナーの食事が美味しいから、というのも理由の一つに違いない。ルビーはきれいになったテーブルを見つめて、嬉しそうに微笑んだ。
パチン、と両手が叩かれると、場の空気が引き締まる。皆口を閉じ、静かにルビーの次の言葉を待っている。リオードはその様子を見て、なんて素直で従順な良い子達なのだろうと内心感動した。
「じゃあ、アイスブレイクもできたし、うちの料理を知ってもらったところで、これから実際に担当してもらうお仕事について教えます! レクチャーを通してみんなのやりたいこととか得意なこととか見つつ、明日からの分担を決めていくね!」
ルビーの説明に、「はーい!」と芯のある返事が店内に響いた。
その後、生徒たちとリオードは客席を離れ、バックヤードでレクチャーを受けた。結果、サニー、コール、ヘイゼルがキッチン、イーサン、レックス、リオードがホールの業務を担当することになった。中でも特に、サニーは即決だった。自分で記憶力に自信があると言っていただけあって、各メニューの作り方を覚えるのが一番早かったのだ。その出来についても、もちろん店長のお墨付きである。一方、リオードが意外に感じたのは、レックスがホールの担当ということだった。彼は初対面があの性格だったこともあって、てっきり客とのコミュニケーション役には向いていないのではないかと思ったが、そんなことはなかった。あの砕けた(?)態度は、同年代の友人や親しみを感じている人物に対するものらしい。実際には最低限の節度を持った言動ができる上に、彼は今回のメンバーの中で一番頭の回転が速いらしかった。コールもなかなかに視野が広く、落ち着いて様々なことに対処できるようだったが、レックスはその上でさらに合理的といった感じだ。彼がホールを担当すれば、回転率がぐっと上がるに違いない。
残念ながら、リオードの初めの予想とは反した分担だった。しかし、ルビーの生徒たち一人一人に対する説明を聞いていれば、確かにと頷ける理由ばかりだった。実際、本人たちも、緊張した面持ちながらも、自分の素質を活かして働けることに対する期待の眼差しが隠せていない。ジムは「適材適所」という言葉をよく使うが、目の前のこれはその典型的な成功例に違いなく、ここまで店舗を着実に運営し繁盛させてきたルビーの手腕は確かなものだった。
「じゃあ、明日からよろしくね! 期待の新人さんたち!」
ルビーはそう言って、パチリとウインクした。




