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とけてつながるグリルドチーズ…… B$7.00

 ひゅい、とルビーは突然口笛を吹いた。それを合図に、待ってましたと言わんばかりに赤いストライプのシャツと白いエプロンがざわざわと動き出す。そして、彼らの集まるテーブルの上には、ハンバーガーやホットドッグ、ポテトにコールスローにアップルパイ……と、大量の食事が積み重ねられていく。いくらジムが生粋のハンバーガーマニアだとはいえ、事務所内にこんなジャンクフードの山が築かれたことは無い。きっと、グレイなら見るだけで胃もたれするに違いない。


「この店で働いてもらうにあたって、まずはうちの魅力を知ってもらわないとね! ささ、たーんとお食べ!」


 ルビーの声を皮切りに、生徒たちはわいわいと紙包みを手に取り、開き始めた。


「え~!? サニーちゃん、悩んじゃうんですけど~!?」

「俺はやっぱり王道のロケットバーガーだな!」

「イーサンはそれ好きだよねえ」

「コールはポテト食うか? ……って、もう喰ってるし」

「んむ」

「イーサンくんは、うちに来てくれたことがあるのかな?」

「はい! 部活終わった後とか、みんなで飯食いに来たりしてます! いつ来てもマジ美味いっす!」

「ほんと? そんなこと言われたら、店長喜んじゃうよ~! ……って、店長は私か! えへへ」


 一人でツッコミまでこなしてしまう店長に、リオードは感心すらし始めていた。確かに、グレイの言う通り、治安の影響でこの街の店舗は入れ替わりが激しいから、ここで店を続けられている彼女を見習えば、この街で生きながらえるヒントが得られるかもしれない。

 一方、視界の片隅で、女性陣が固まって話しているのが見える。


「ねえねえ! ヘイゼルちゃんは何食べる?」

「わ、私……そんなに、食べないから……」

「え~、じゃあサラダいっとく? あ、甘いの好き? シェイクもあるよ!」

「じゃ、あ、シェイクで……」


 ヘイゼルがそう言っておずおずとシェイクの紙カップを受けとると、サニーはにっかり笑って、更に一歩距離を詰めた。すると、ヘイゼルはさらにきゅっと両膝を縮めて、どうやら少しばかり気圧されているようである。


「おい。辛味ソースはないのか?」


 レックスの発言に、店長がぱち、と瞬きして反応する。


「お! レックスくん、よく知ってるね? 辛味ソースはかなり通な人のアレンジなんだけど」

「まあ、俺は一歩先を行く男だからな」

「それ、美味いのか?」

「人に聞くより、自分で確かめてみればいい」

「それもそうだな」


 レックスは、ぶっきらぼうな口調のまま、店長から受け取った辛味ソースを開けて、イーサンの方に差し出した。イーサンは片手に摘まんでいたナゲットをそこへディップして、口の中へと放り込む。


「……っ!? 結構辛くね!?」

「ふっ、お前はまだまだお子様舌というわけだ。俺と違ってな」

「え~、そうかあ? なあ、班長もちょっと食べてみてよ」

「え、僕ですか!? でも、僕は普通のバイトで……」


 ちら、とルビーの方を伺い見れば、ぴた、と視線が噛み合って、綺麗なサムズアップが飛んできた。どうやら、今はこの空間が大事らしい。


「僕までいただいちゃって、すみません……」


 リオードがそう言って首の後ろをかきながら小さく頭を下げると、途端にルビーがピタリと動きを止めた。それから、リオードの近くにすとんとしゃがみ込み、真っ直ぐに見つめた。


「リオードくん。『すみません』より『ありがとう』の方が嬉しいよ?」

「……ありがとう、ございます」

「うん! それでよし!」


 一連の会話の後、ルビーは満足そうに笑って去っていった。店長に指導されると思うと緊張が走ったが、確かに、それはとても大事な考え方だ、とリオードは素直に感心した。

 ふと、「班長」と呼ばれた声で、そういえば途中だった、と意識を引き戻される。目の前には、白いプラスチックの容器を満たす、真っ赤なソース。リオードは小さく息を飲むと、近くから摘まんできたポテトをそこに突っ込んで、躊躇なく口に入れた。


「……うん、美味しいですね」

「だろ? 俺の舌に狂いはないんだから、当然だ」

「え~、まじかよ!? 俺、普通に食った方が上手いかも」

「僕もそうだなあ。やっぱり、班長って大人なんだよ~」

「そんなことないですよ! ほら、同い年ですし……」


 そんなふうに謙遜しながら、リオードの頭には一つの疑問が浮かんでいた。

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