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《-・・・ --- -- -・・・(BOMB)[爆弾だ]》
「……まじ?」
ヘイゼルはボブの髪で隠れた耳を撫でて、思わずつぶやいた。その後、慌てて口を塞ぎ、周囲に誰も聞いていないのを確認してほっと胸を撫でおろした。それから、袖口のボタンを操作し、モールス信号で返事する。
《・-- ・・・・ ・ ・-・ ・(WHERE)[どこに?]》
《・-・ ・-・ --(RR M)[男性お手洗い]》
まさか、事前に聞かされていたシナリオをここまで正確になぞっていくとは思わず、首筋に冷たく汗が伝うのを感じた。
《-・・・ -・・(BD)[処理しろ]》
「ええ……?」
この状態から、どうやって爆弾を解除しろというのだろうか。まったく彼女は無茶を言う。今は女性……というか、年頃の少女の恰好で、しかも仕事中だ。抜け出すのも、男子トイレに入るのも、見つかってしまえば理由を説明できない。ただでさえ犯罪まがいのことをしているとも言えるのに。……いや、これに関しては、既に前科があるので気にしないでおこう。
《--・ ---(GO)[行け]》
《・- ・・・ ・- ・--・(ASAP)[早くしろ]》
ちっ、と容姿からは想像できない治安の悪い舌打ちをすると、ヘイゼルは左右を三回ほど念入りに見回し、誰もがピークに向けてせっせと料理を作っている背後を静かに通り過ぎた。繁忙時にキッチンを抜け出すことにこうして罪悪感を覚えられるのであれば、彼は案外簡単に表の世界へ戻れるのではないかと思うが、それは一旦置いておこう。
客たちがおしゃべりに夢中になっている隙に、ヘイゼルはこっそり男性トイレへ駆け込んだ。勢いあまって扉がバタン、と少し大きな音を立ててしまったが、無事に誰にも見つからずにたどり着けたようだ。普段ならいつもこちらに入るはずなのに、格好のせいで妙に罪悪感がのしかかる。
そんな余計な思考を振り払い、目的のそれを探すと、便器の影にひっそりと黒く四角い機械のようなものが置かれているのを発見できた。
「これが言ってた爆弾か。んー……うん、なるほどな」
数日前にミドルの伝手で爆弾に関するあれこれの手ほどきを受けたが、まさか本当に実践の場がやってくるなんて思いもしなかった。
爆弾を観察したところ、素人が作成したのか、あまり貴重な材料は使われておらず、動線も比較的シンプルだ。精度はまあまあ。しかし、この程度の規模では、せいぜいこのトイレが爆破されるくらいだろう。そこからもう少し大規模な崩落、あるいはガス管の破損に繋がって火災が発生すればラッキー、といったところだろうか。つまり、今これが爆発したところで即死する人物は恐らくいない、ということだ。……爆弾をまじまじと見つめる、その人以外は。
「犯人は殺人予告を出してきたんだろ? 八割がた死人が出ないなら、目的は達成できない可能性の方が高いわけだ。あとは、犯人の動揺の瞬間を狙ってポリスが突入してくるのを待てば良くないか……?」
そう思い、袖口のボタンを押して連絡を試みる。
《・・・ -・ ・--・(S NP)[小規模だ、問題ない]》
すると、すぐさま返事が来た。
《-・・ ---(DO)[やれ]》
「…………そーですか。ったく、わかりましたよ……!!」




