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人が歩けば死体に出会える街、それがバーニーズ・タンド。この街は、今日も今日とて物騒な事件に踊らされている。
「殺害予告、か……」
そんなバーニーズ・タンドの治安維持組織「ポリス」の庁舎の一室。ユエ・ヤジマは机上から拾い上げた資料を睨みながら、眉間をつまんだ。
こんなにも物騒な街ではあるが、子どもたちへの教育というものは確かに存在している。グランド・ジャンクション・メモリアルハイスクールの高校二年生のカリキュラムに含まれている職業体験、それが今回の問題だった。ポリス宛てに、職業体験に参加する生徒を殺す、という予告状が届いたのだ。学校ではなくポリスにこの予告状が届いたということは、生徒に対する恨みではなく、おそらくポリスへの果たし状のようなものなのだろう。ポリスへの報復に一般市民を巻き込むなど、言語道断である。ただのはったりと断定できればこんなことに時間を割く必要性は全くないのだが、あいにくここはバーニーズ・タンド。やると言ったらやるような人間もいる。
はあ、と深くため息をついて資料を机上に戻すと、ユエは天井を仰ぎ見た。いざこざの多いこの街ではただでさえ人手が足りていないというのに、三日間もこの事件のために動かねばならないと思うと、先が思いやられる。何しろ、予告状から読み取れる情報が少なすぎるのだ。グランド・ジャンクション・メモリアルハイスクールの生徒が訪問する職業体験先は、数十カ所に及ぶ。これでは対策の打ちようがない。だからこそ、こうして片っ端から動ける人間を捜査メンバーに加えているのだろう。しかし、それぞれの職業体験に一人ずつ監視をつけていては、それこそ不審に思った犯人が逆上して思わぬ暴挙に出る可能性だってある。であれば、当番制で重複しないように複数個所を監視するほうが良いだろう。
さて、その指揮は、果たして一体誰がとるのか。
「……考えるだけ無駄だな」
ユエは黒い革張りのソファから背を起こし、冷めきったブラックコーヒーを飲み干すと、立ち上がった。人が動かないのであれば、自分が動くほかない。彼女の言葉を借りるのは癪だが、この街は「パワー・イズ・パワー」だ。幸いにも、ユエはポリスのトップから直々に単独任務が課せられるほどの実力者である。あまり気は進まないが、その権威を使えば多少は効率的に対策できるに違いない。
ポリスの任務は、一般市民の平和を守ることである。瞼の内でそう思い返しながら、冷たい廊下にヒールの音を響かせた。




