7 レイン視点
リアの話を聞いた瞬間、頭にきた!
どうして彼女の家族は分からないの? リアがどれほど素敵な子か、どうして誰も気づかないの?
リアは、もっと胸を張っていい。
いつも遠慮して一歩引く彼女も好きだけど……それが、歯痒くて仕方ない。
美術室の窓辺で、絵も描かずにぼんやりしているリア。
奪われた招待状のこと、きっとまだ気にしているんだ。
雑貨屋に誘ったけど、一人で帰ってしまった。
おばあ様に頼めば、また招待状を貰えるはずなのに。
――もう、こうなったら私が動くしかない!
親友のプライベートに踏み込むのは、よくないのかもしれない。
でも、あのティオラが好き放題やってるの、黙って見ていられない!
それにメルキオも、あんな優柔不断じゃリアがかわいそう。
リアのお祖父様? 宮廷絵師だかなんだか知らないけど、完全に老害よ。
私はその足で、雑貨屋へと向かった。
店にはおばあさんと、エプロン姿のジークさんがいた。
「今日はひとりなの?」
「おばあ様、お願いです! リアに招待状をもう一度送ってあげてください!」
私は深々と頭を下げた。
「それなら心配いらないわ。リアにそう伝えてちょうだい」
「うん。僕が直接オーレリア嬢に届けるから」
「本当に? お願い、早く届けてあげて! ……でも」
「でも?」
「リアのお祖父さんが、また反対するかもしれないの」
「どういうこと?」
私は悪いと思いながらも、リアの置かれている事情をすべて話した。
「そんな可哀想な……」
おばあ様は顔を曇らせた。
でも、きっとリアはこういう同情を受けたくないと思っている。
だから、何も言わないんだ。
「どうか、リアには話したことを言わないでください」
「もちろんよ。それより、少し相談があるの。協力してくれるかしら?」
「はい! リアのためなら何でもやります!」
だって、私たちは親友なんだもの。
◆◆◆
翌日、授業が終わると、私はリアを我が家に連れて帰った。
「ジャーン!」
差し出したのは、公爵家の招待状。
「レイン、これ……どうしたの?」
「公爵家がね、間違えて、招待状をティオラ宛てにしちゃったんだって。それで我が家に届いたの!」
「本当? 嬉しい……私も参加できるのね」
「もちろん。一緒に行きましょう。ドレスも私とお揃いにしよ、ね?」
太っ腹なおばあ様が、私たちにドレスまで用意してくれた。
今日は洋服屋さんが採寸に来る予定だ。
「いいのかしら……?」
「いいのいいの。リアの家には内緒ね。またティオラが邪魔してくるかもしれないもの」
そう言って、私はジークから預かった手紙をリアに渡した。
「手紙、なんて書いてあるの?」
「ジークさん、私にパートナーになってほしいって」
「いいじゃない。彼、おばあ様の身内なんでしょう? 堂々と参加できるわ」
リアはふっと笑って言った。
「ティオラには絶対に秘密って、書いてあるわ」
「そう、パーティが楽しみね」
そう言うと、リアは少し真剣な顔になった。
「ねえ、レイン。あなたが……やってくれたの?」
「え? 知らないわよ?」
「嘘ばっかり。……ありがとう。ごめんね、私、弱虫で」
「何言ってるの。……でもね、もっと強くなってほしい」
「強くなりたい……」
「なれるってば!」
気づけば、抱き合って、二人して涙をこぼしていた。
リアはずっと“恥”だなんて言われ続けて、自信をなくしていた。
でも、そんなリアをちゃんと認めている人はいる。
――その筆頭が、この私。
「ここから大逆転よ! 二人で幸せつかむの!」
「もう、レインったら大げさなんだから」
泣き笑いのリアを見て、胸が熱くなった。
本当のことを打ち明けたい気持ちをぐっと飲み込む。
当日までの秘密。――きっと、最高のサプライズになるから。
読んでいただいて、ありがとうございました。




