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邪神を奉る暗黒教団の教団長は、管理職から逃げてきた俺です  作者: 安威要


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【第26話 戒厳、アレは徴募——武器より道】

 朝、町の掲示板に布告が貼られた。

 「戒厳。徴募。邪教討伐義勇、志ある者は集え」——起こしの悪い鐘みたいな言葉だ。響きは大きいが、音程が悪い。


「読む。次、動く」


 壁板に今日の欄。

 ・外勢:戒厳と徴募令(町内告示)/純化会が義勇の名乗り

 ・方針:“武器より道”。輸送路・避難路・野戦SOPで抗う

 ・渉外:査察官カリスへ“兵站従事者証”発行願い/救護院と衛生標章の取り決め

 ・運行:護送は継続、便は週二→週三へ一時増便(A/B/C)


「戦う、はやらない。守り切る。——こっちの土俵に引きずる」


 ルークに書面を渡す。「兵站従事者証」の案だ。

 ・身分:民間兵站従事/用途:輸送・土木・救護補助/免除:徴募対象から除外(教会評議の覚書に基づく)

 ・識別:腕章(白布に青二本線)/通行:暫定護送文に準ず

「右揃えで清書する」

「頼む。腕章は布在庫から。ミオとジュドに印字手伝ってもらおう」


 救護院の院母には別紙。「衛生標章の取り決め」。

 ・標章:白布に青の水滴1個(教会・救護院・当方の三者で相互承認)

・保護対象:救護場所・搬送路・水場

・違反時:監査記録に“衛生妨害”で載せる(評議へ提出)


「野戦SOP、今から書く。セラ、監修頼む」


 野戦SOP(簡易):

 1)集結点:門外広場/二次集結点:小尾根の陰(糸鈴2鳴りの地点)

 2)避難路:A=水路沿い下り、B=尾根裏回り(二重化)

3)トリアージ:布タグ4色(赤=緊急、黄=遅延、緑=歩行、黒=看取り)

4)衛生:手洗い→創洗→覆布。煮沸水は“上”袋優先で

5)搬送:オーシ+担架2/骨は視界外で“道を均す・石を除く”のみ

6)合言葉:コン/二重丸(夜警と共通)

7)記録:処置時刻・処置者・水量・出血量(だいたいでいい、でも書く)


「骨は“視界外・土木限定”厳守。今日は特に」

 青タグ班長骨が胸を張りかけたので、看板で自分の胸をコツン。よし、自然体に戻る。


 午前、カリス来訪。布告を見た顔は硬いが、声はいつもどおり低い。


「徴募令は本物だ。純化会が志願兵を煽っている。——だが、兵站従事者の除外枠は取れる。腕章と名簿を出せ」


「名簿、今日中。腕章は白布に青二本線。通行は護送文に準じるでいい?」


「ああ。救護標章も承認する。衛生妨害は監査で重く扱う」


「助かる。道を守る。武器より道」


「……おまえの言い回しは変わらん」


 渉外が通った。次は道。

 運行は週二から週三へ増便。A=炭10袋+薪50束、B=炭10袋+資材、C=救護院便(“上”5袋+濾過布・灰)。

 便の時刻を早め、日が高いうちに往復を終える“戦時ダイヤ”。荷車は2台、車輪はボルンの治具で点検。ボルンはまだ痛むが、座っての検査はできる。


「痛み、どうだ」

「まあまあ。禁酒、97。あと3つ」

「3つ勝ったら、輪の治具に名前入れよう。“ボルン式”って」

「やめろ、照れる」


 避難路の整備はオーシ先導、骨が“道を均す”。人は標識を立てる。

 A路は水路沿い。滑りやすい場所に砂利を撒き、渡し石を一枚増やす。

 B路は尾根裏。倒木を切り、枝を払う。糸鈴を一つ付け足して“二鳴り地点”を誰でもわかるように。


「訓練をやる。走らない、声を出す」


 避難訓練ショート。子どもは“緑タグ”で先に歩く。年配は手をつなぐ。

 木笛1で“ここまで”、2で“停止”、3で“集合”。指差し呼称を声に出す。「歩く」「止まる」「ここまで」。笑われても効く。


 昼、徴募の使いが拠点の前に来た。「志ある者は——」

「志はある。守る志だ。兵站従事だ」

 腕章と名簿を見せる。カリスの印も添えてある。

 使いは口を尖らせたが、紙の重さに勝てず、踵を返した。文書は剣より強い日がある。


 午後、救護院の便を出す。

 “上”5袋と濾過布。院母が受け取りに出てきて、腕章をじっと見た。


「この印、守る価値があると、私が言っていいのね?」


「言って。守れなかったら、俺が恥をかく」


「なら、言うわ。痛みは戦のものじゃない。人のもの」


 帰路、商会の荷溜まりに寄る。

 「戦が来たら、値は動く」と代表。

 「動く。でも“規格遵守2回”で単価上げる取り決めは生かす。数字は戦でも死なない」


 夕方、評議から回覧。

 「三日後の調停は場所を広く。衛生標章と兵站従事者の除外枠を議題に追加」

 橋脚に補強材が一本入った。割れ目は残るが、落ちはしない。


 夜前、野戦SOPの最終確認。

 セラがタグ束を胸に下げ、テッサが担架の留め具を締め、ニナが見張り台に上がる。

 骨は林間で自然体。腕章は付けない。付けるのは人だけ。

 オーシの角が肩にコツン。合図は一回。「準備完了」の音。


「宣言する。——うちは『戦わない』じゃない。『守り切る』。武器より道。

 避難路は二重、搬送は速く、衛生は声に出す。襲われたら“遅滞”。橋は落とさず、渡河点をずらす。

 奇跡は消火器。三箇条でしか使わない」


 風がひとつ抜けて、糸鈴の二鳴りが小さく重なった。

 火は弱く、夜は長い。だが、線は引いた。

 紙に今日の数字を書いて、灯を落とす。


 ・外勢:戒厳・徴募令発出/純化会の義勇煽動

 ・渉外:兵站従事者証(白布青二線腕章)承認/衛生標章(白布青水滴)相互承認

 ・運行:週三便へ(A/B/C)/戦時ダイヤ導入

・道:避難路A/B整備/糸鈴“二鳴り地点”設置

・野戦SOP:トリアージ4色/搬送=オーシ+担架/記録様式導入

・夜警:合言葉共通化(コン/二重丸)

 ・事故ゼロ:70日(作業)/襲撃は別記

 ・奇跡:未使用(Clause1〜3未発動)


「明日も道を増やす。——戦が来ても、道で勝つ」


 リベルティアが小さくうなずき、背がほんの少しだけ伸びた気がした。

 どや立ち? 今日は、看板で代用。骨は看板を胸に、自然体で立っていた。


(つづく)


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