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邪神を奉る暗黒教団の教団長は、管理職から逃げてきた俺です  作者: 安威要


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【第24話 連鎖、アレは評判——支持と反発】

 朝いち、門の柱に紙が貼られていた。

 「白い軍勢、町へ侵入」「子どもを“犠牲”に」——雑な煽り文句。角度の合ってない焼印が赤で押されている。雑にもほどがある。


「ビラ回収。証拠として3枚だけ残して、あとはたき火へ」


 壁板に今日の欄。

 ・小市:規模“半分+α”へ拡張(通路広め)

 ・公開“見える化”ブース:骨の運用図/品質票サンプル/護送文の掲示

・評判対策:質問コーナーと通報箱(匿名)

 ・安全:骨は林間“視界外”固定、境界タグを二重巻き(青布×2)


「今日は“言葉の日”。数字はでかい字で、声は柔らかく」


 鹿角印の品質票を刷る。

 ・品目(炭“上”/薪規格束)

 ・日時・窯番号・乾燥度チェック欄

 ・検品音“コン”の印(合格なら二重丸)

 ・責任者の名(片仮名でOK)

 これを袋と束に付ける。人は“顔が見える”と、ちょっと信じる。


 午前、小市が始まると、人が波のように寄せては引く。

 支援の声はある。「炭が長持ちした」「水がきれいになった」。

 同時に、刺す視線もある。ビラを手に、眉間に皺の助祭が来た。


「骨を使うな。禁令が出る」


「“草案”は届いた。読んだよ。——『骨の運用を一律禁止、違反は処罰』。

 こちらの条件は『視界外・町内投入ゼロ・用途は物流土木限定』。ぶつかるね。だから“公開”をやっている。見た上で、話そう」


 見える化ブースの前で、運用図を指す。

 “骨=林間5m並走、町は境界で止める”“班長骨に青タグ二重巻き”“誤侵入時は木笛2で全停止”。

 助祭は図を追って、口ごもる。「……恐怖は、残る」


「そこは否定しない。だから“見せない”。

 ——代わりに“品質票”と“事故ゼロ”で信頼を積む。今、67日目。今日を足して、68日目にしたい」


 そこへ、縄に転がった元“外套男”が日雇い札をぶら下げて割って入った。

「俺、最前線で穴掘ってる。骨は横で黙って枝を運ぶ。怖いが、怪我は減る。冬を越す薪が積める。……俺は、昼の雇いを続けたい」


 助祭は口をつぐみ、人の波に混じって離れていった。反発はゼロにはならない。けど、ひとつずつ“割る”ことはできる。


 昼、事件。

 護送のために荷車を並べたら、片方の帆布に赤い焼印が押されていた。例の角度のズレたやつ。

 ざわつく前に、現場検証。拓本、角度の重ね、押印の下の煤の“新しさチェック”。新しい。今押したな。


「“偽旗”は、数字で剥がす」


 周囲半径5mの足跡を写し、靴の幅と歩幅で該当者を特定。

 角の曲がりと足の癖が一致した青年を、俺は人の輪から呼んだ。怒鳴らない。

「証拠は揃った。——謝るなら今だ。謝らないなら、監査の記録に移す」


 青年は肩を落として、地面に膝をついた。「……煽られた。怖かった。すまない」

「謝罪を受ける。帆布は交換。——通報箱を置く。怖かったら、そっちに書け。読んで返す」


 通報箱。蓋付きの木箱。投函口は細い。鍵は二つ。俺と査察官カリスの“二重鍵”。

 箱の横に“よくある質問”の札も置く。

 Q:骨は町に入るの?→入らない。境界で止まる。

 Q:骨は人を襲う?→襲わない。命令は“運ぶ・掘る・止まる”。

 Q:事故は?→作業事故ゼロ68日継続。襲撃は“別記”で扱う。

 Q:責任は?→鹿角印の品質票に記名。責任の所在を明記。

 Q:罰は?→自罰7日+納品停止。違反時は壁に掲示。


 午後、黒外套。査察官カリスが来た。今日は外套を開け、顔を見せて立つ。


「教会は、近く評定を開く。“一律禁止”の草案はある。

 ——だが、暫定の護送文と“視界外運用”は、私が責任を持つ。通行と救急は護る。

 通報箱の鍵は二つ。私の鍵はここにある」


「助かる。今日の偽旗も記録に」


「記録する。角度は43度か」


「43」


 短い会話。十分な重み。

 カリスは人々に向き直り、いつもより少し長く話した。


「恐怖は、祈りを壊す。だが、数字は祈りを守る。

 ——“見せない運用”と“見える数字”。それで今日、道が一本続いた。私はそれに立会う」


 午後の小市は、思ったよりも売れた。

 炭“上”10袋、薪50束。救護院の便も出し、鍛冶組合に“上”2袋。品質票が話を早くする。

 値下げ要求は出なかった。代わりに「次は“特上”まだか」と笑われた。急ぐと割れるから、急がない。


 夕方、通報箱に手紙が3通。

 1通は「骨がこわい」。それはそうだ。返事は「見せない。境界で止める。声に出して安全を数える」。

 1通は「鹿角印の袋、丈夫」。ありがとう。二重縫いが効いた。

1通は「助祭が怒っていた」。怒るよ。怒ってもいい。板の前で話そう、で締めた。


 門の横に、新しい札を1枚。

 『評判は資産。偽旗・落書きは“記録→是正→掲示”で返す。数字は逃げない。』


 骨が胸を張りかけて、看板の角で自分の胸を“コツン”。

「どやは看板で代用。賢い」


 板に今日の数字を足す。

 ・小市:規模“半分+α”、炭“上”10袋/薪50束完売

 ・品質票:導入(鹿角印/記名/“コン”印)

 ・評判:ビラ2種(回収)/偽旗1件(現場検証→謝罪)/通報3件(回答済)

 ・護送:暫定継続、教会・商会各2名

・安全:境界タグ二重/骨=視界外固定

・事故ゼロ:68日

・奇跡:未使用(Clause1〜3未発動)


 夜風が、糸鈴の切れ端を揺らす。

 評判は連鎖する。悪いほうも、良いほうも。だから、毎日、板に打つ。声に出す。

 明日は“調停の下準備”。紙を増やす。道も増やす。——戦うのは、数字で。


(つづく)


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