【第23話 再建、アレは兵站——灰からの立ち上げ】
今日は“兵站デー”。道、倉庫、容器、運行表。派手さゼロ、でもこれが効く。
「拠点は一段奥へ移す。場所は用水路250m地点の肩、小尾根の風下。火が登りにくい地形。見通しは確保、道は一本だけ通す」
板に地形図。風向、避難線、物資線、見学線。糸鈴ノードを新規6つ、段差で高さを変える。“チリン・チリリン・チリンチリン”で方角と距離が取れる。
「住居は規格物。幅2.4m×長3.6m×高2.1mを6棟、今日は4棟まで上げる」
骨は土台、俺とテッサで治具。壁はボルンの治具で“カチッ”と嵌める構造。
ニナが見張りを交代で回り、セラは救急と水の導線チェック。ルークは新しい“倉入れ→倉出し”の帳簿を右揃えで準備。
「窯は仮を2基先に。土台は粘土強め、排気2。歩留まり“上”55%を目標——次週60%。」
「上げすぎると割れる」とテッサ。
「割らないギリを攻める。検品は“コン”三拍で」
午前の終わり、仮窯1号に細薪を詰め、天井を粘土で押さえ、排気を半分。煙は白から薄い青へ。良い呼吸。
「次、容器の規格。炭袋は“並”“上”同じ寸法。肩口を二重縫い、封は木栓+縄。印は“どや印”じゃなく“鹿角印”。どやはNG」
骨が胸を張りかけて、看板を抱き直した。“どや禁止”。学習は進む。
昼、護送の打ち合わせ。
週二の便は“便名A/B”で運行。A=炭10袋+薪50束、B=炭10袋+資材回収。護送は教会と商会で各2名。通行証は今朝の分を更新。
「契約先を分散する。商会に加えて、救護院、鍛冶組合の三本柱で行こう」
「私?」とセラ。
「救護院は水と炭が要る。歩留まりが安定すれば“煮沸用の上”5袋を週で供給。代わりに薬草の仕入れ枠をもらう」
鍛冶組合には帆布越しに面談。テッサが前、俺が後ろ。
「炭は“上”基準、週2袋から。乾燥材は長さ60cm×直径20cm規格で50束。刃の替えは相対見積もり。値は商会に準じるが“規格遵守2回”で上げる」
「女の鍛冶も来るのか」と組合の親方。
「来る。治具からつくる。火のルールは厳しい。——守れれば、長い」
親方が鼻を鳴らし、短くうなずく。契約は紙一枚、印は二つ。これで“依存一本”から脱出。
午後は“骨=物流・土木限定”の張り紙を新拠点の門に掲示した。
『骨は視界外。町内投入ゼロ。用途は物流・土木に限定。違反時は自罰(供給停止7日)。』
自分で罰を決めて掲げる。信頼はそこから。
道を一本通す。
オーシに湿った曳き布を装備、荷車の車輪をボルンが見て、段差は土で均す。
途中の浅い渡りに丸太を“置かない”。流れに沿って石を組んで“渡し石”にする。洪水で流れないからだ。
ルークが運行表を描き、時刻と“積載目安”を書く。炭10袋で約70〜75銅の重量感、薪50束で140銅の見た目。——目安は言葉より伝わる。
「今日の小市は、再開の告知だけ。規模は半分、通路を広く。公開監査の線を共用する」
手伝いの顔が増えた。15話で縄に転んだ外套男が日雇いの札を下げて来た。「2銅で働く」
「じゃあ植え戻しは3銅、今日の苗は150。穴掘りは骨、植えは人、仕上げの足踏みは二人一組。——声を出せ。『植えた』『踏んだ』『よし』」
「声、出すのか」
「出すんだよ。笑われるけど効く」
夕方、仮窯1号の煙が細くなった。蓋を閉じ、冷ます。
同時に、用水路の延長作業が今日の分で終わる。250m、沈殿槽は石積みの常設。
セラが濾過の流量を見て、頭を上げた。「三基交互で午前220L、午後220L。合計440L、持った」
「配水は?」
「今日は170L配った。残りは備蓄。手洗い実施率は85%」
夜前、商会の使いが来る。公文(暫定護送)の更新印。
救護院からの返事も届いた。「煮沸用の上、週5袋。対価は銀貨の半分現、半分相殺(薬草)」。
鍛冶組合も「週2袋から試す、規格の紙を置け」。
「道はつながった。次は“一定運転”だ。事故ゼロは続ける。——骨、どや禁止継続」
骨が看板を持ち替えて、自然体に戻る。今日は完璧。
板に今日の数字を書く。
・新拠点:用水路250m地点へ移転/糸鈴+6で合計22
・住居:規格棟6のうち4棟完成
・仮窯:2基稼働(“上”55%目標)
・容器:炭袋規格化(鹿角印)/封=木栓+縄
・運行:週二便(A/B)/護送=各2名/運行表導入
・契約:商会+救護院(煮沸用“上”5袋/週)+鍛冶組合(“上”2袋/週)
・雇用:日雇い2銅/植え戻し3銅(今日の苗150)
・衛生:濾過440L/配水170L/手洗い85%
・作業事故:ゼロ継続67日
・奇跡:未使用(Clause1〜3いずれも未発動)
リベルティアが袖をつついて、小さく言う。「けい、いまの、うごき、すき」
「地味だが強いんだよ、兵站は」
オーシが角で肩をコツン。
灰の匂いはもう薄い。夜風が冷たくなって、糸鈴が一度だけ、静かに鳴った。
(つづく)




