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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・シベリアの雪男

石じじいの話です。


いわゆる「雪男」は、世界の各地に目撃例があります。

ヒマラヤのイエティや北米のビッグフットなどが有名です。

シベリアにも「雪男」のうわさがあり、それは、「ウラハン」と呼ばれていたそうです。


これは、じじいの知り合いのロシア人が話してくれたものです。


地元の猟師のグループがウラハンと遭遇したそうです。

猟師たちは、金になる毛皮をとるために、夏の間、野営しながら狩猟をしていました。

彼らが、マンモスのものと思われる骨が散乱した川岸で野営したとき、早朝にウラハンと遭遇したのです。

朝もやが晴れていく中、川岸を大きな人間が歩いていました。

その身長は、3m弱。

体は青い毛で覆われていましたが、体毛は短かかったそうです。

ただ、髪の毛は長く、白髪がまじり、風にたなびいていました。

恐れた猟師の一人は、警告なしにウラハンを銃撃しました。

弾は命中し、そのウラハンは、がくっと片膝をついてこちらを見ました。

その目は小さいが、水色に輝いていたそうです。

彼は、猟師たちに向かって腕を伸ばしました。

猟師は、恐れてもう一回銃撃しましたが、弾はそれました。

ウラハンは、よろめきながら歩き去りました。

猟師たちは、警戒して、近くの狩猟小屋までもどり、そこで一晩をすごすことにしました。

深夜、そのウラハンはやって来ました。

外から、声をかける者がいます。

低く太い、男性と思われる声でした。

そのウラハンは、人語で話しかけてきます。

「なぜ、私を撃ったのだ。」

「私は、あなたたちに、危害をくわえる気はないのだ。」

「私は、これで死ぬだろう。撃たれた傷が深いから。」

苦しそうな息遣いが、沈黙のなかに流れていました。

猟師たちは、自分たちの軽率な行動を悔いて、彼に許しを乞いました。

また、神様にも、彼を救うよう祈りました。

「みなさんの謝罪の心はありがたい。私は恨みはしない。」

猟師たちは、その寛容な心にうたれました。

「私の願いを、ひとつ聞いてほしい」

「私には、家族がある。私が死んでも彼らが困ることはないが、彼らに私の死を知らせてくれまいか。」

「私は、私が撃たれた場所まで、もどろうと思う。もし、そこに向かう途中で息絶えたら、できれば私の死体を、そこまで運んでほしい。無理なら、そのままでいい。」

「そこで、焚き火をしてほしい。私を荼毘にふす必要はない。ただ、そのときに、私の死体が持っている草と髪の毛を一緒に燃やしてほしい」

「青い煙が立つから、それで、私の家族は、私の死を知るだろう。」

「それでいい。私は、その煙といっしょに空にのぼるのだ。」

「これが、私の最後の願いだ。私は、あなたちを恨まない。家族もあなたたちを恨まないだろう。」

翌朝、猟師たちは、彼の体を探しながら、先日の川岸まで戻りました。

川岸の手前で、彼は息絶えていました。

猟師たちは、その死体を皆で川岸まで運びました。

彼らは、まわりに生えている薬草や花、自分たちが持っている指輪などを、彼の死体に供えました。

そして、言われたとおり焚き火をしました。

青い煙がしずかにまっすぐに空に向かって立ちのぼりました。

猟師たちは、ロシア聖教のものでしたが、葬送の祈りを行い、少しの食料、獲物の毛皮、家族に許しを乞う手紙を彼の胸元に残しました。


この話には続きがあります。

それから10年ほど後、その猟師の一人がイルクーツクを訪れたとき、通りで、一人の青年に話しかけられました。

青年は、汚れて茶色に染まった一枚の書付けの紙を胸に当てて、「父の死を悼んでいただき感謝しております。」と言うと、悠然と立ち去ったそうです。

その猟師は、最初はその意味がわからなかったのですが、後で、10年前のことを思い出して、青年を探したそうですが、見つからなかったということです。

青年は背が高く、髪の毛が緑色がかった黒で、真っ青な瞳が美しい偉丈夫だったそうです。

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