石じじいの話・ほだが話しかける
石じじいの話です。
みなさんは、囲炉裏を使ったことがありますか?
じじいの家にも私の家にもいろりはありませんでしたが、昔の農家ではよく使われていたそうです。
ほだ、と呼ばれる大きな木を、囲炉裏にくべていました。
太い木だと、何日も燃え続けるので便利です。
夜になると、灰や籾がらをかけておくと、火は消えないで朝までもつのです。
朝になると、ほだを掘り起こし、ホエなどをそえて火をしつけます。
こうして、一年中、火を絶やさないのだとか。
家によっては、正月の七日間だけ、ほだを燃やすところもあったそうです。
ある時、ほだが、姑に話しかけてきたそうです。
嫁には、話しかけません。
その「ほだ」が言うには、「燃やさないでくれ。私は、おまえの母親だ」と。
その「ほだ」に、いろいろとたずねると、自分の母親しか知らないことをしゃべります。
でも、燃やさないわけにはいかないので、その「ほだ」の話しかけを無視して、姑は、ほだを燃やし続けたそうです。
その後も、彼女がいろりを使うときには、かならず「ほだ」がしゃべりかけてきました。
そのうち、その姑は発狂したそうです。
「ほだ」が喋ったから発狂したのか?発狂したから喋ったように思ったのか?




