石じじいの話・薪で儲ける
石じじいの話の話です。
昔の山村では燃料の確保が重要でした。
まわりは山なので、その木から薪を作ればいいのですが、持ち山の樹木には限りがあるし、山が禿山になってしまうと困ります。
とくに、山から離れていたり、山を持たない農家は燃料の確保に苦労しました。
炭を購入することもありましたが、それは高価でした。
薪も安くはありませんでした。
乞食が薪屋になって、財産をなしたことがあったそうです。
彼は、流れが急な大きな川で、上流の山から流れてくる木の枝を拾って、それを河原で乾燥させて薪として売ったのです。
しかし、川の急流に入って、流れてくる大小の木の枝を拾うので、命がけの仕事でした。
彼の真似をして、流木にあたって溺死した人も何人かいました。
そのような流木は、シダミと呼ばれていました。
上流から流れてくるものは、枝木だけではありませんでした*。
ときには、死体が流れてくることもあったそうです。
また、櫛や櫃、杖、編笠なども流れてきました。
おそらく、上流で旅人が溺れ死んだのだろうということでした。
彼は、流れ着いた死体を河原に手厚く葬り、櫛などの品も売り払うことなく、村の寺に収めていたそうです。
そのような彼は、村人からも尊敬されていました。
朽木や風倒木も薪として利用されました。
茅の落ち葉や桑の枝(養蚕が行われていましたからね)、籾殻、豆がらや藁も燃料として蓄えていたそうです。
煮炊きに、石炭や泥炭を使うこともありました。
「うに」と呼ばれる亜炭がよく使われたそうです。
これは、石炭の中で、もっとも石炭化度が低いものです。
また、沼地から泥炭を掘ってきて、それを陽に乾かして燃料にすることもありました。
泥炭には、硫黄分が多く、燃やすと非常に臭く、その燃焼ガスで頭痛がしたそうです。
*川の上流から、仏壇が流れてきたという話を以前書いたことがあります。




