石じじいの話・イスラムの幽霊
この話は、「イスラムの幽霊」というタイトルで、イスラム教における幽霊、霊魂について言及しています。
しかし、これは、非イスラム教徒の聞き伝えを子供の私が聞き取ったものであり、その内容の信頼性は非常に低いと考えられます。
この点をご注意ください。
石じじいの話です。
これは、知り合いのロシア人からじじいが聞いた話のようです。
イスラム教における「幽霊」というものを、アゼルバイジャン人が話してくれたことがあったそうです。
それは、バクー近郊の村での出来事についての話しから始まりました。
ある女性が、二人の孫にパンと牛乳を持っていこうと、別の村へ歩いていました。
その道中、かつて殺人事件が起きた場所に通りかかると、そこで、病気と思われる男が一人、「ああ、ああ、お父さん、お父さん」と泣き続けていました。
彼女は、その男の手をとり、元気づけて少し歩いたところ、突然、男は消えました。
彼女は恐ろしくなって泣いていると、たまたま同じ村に行く途中の男が通りかかり、彼女に何が起きたのかを尋ねました。
彼女が事情を話すと、その男は、自分も、ここでその幽霊に出会ったことがあるが、大丈夫だから心配しないように、と言ったそうです。
その幻影は、殺された男の幽霊だったのだ。
という話です。
ここから、そのアゼルバイジャン人は、こう付け加えました。
殺された人間の霊魂は、フクロウの姿で墓所の近くに現れ、その人のための復讐が行われるまで「飲み物をくれ」と叫び続けるのだ。
しかし、霊魂じしんが、その殺人者に復讐することはないのだ。
殺された人間の霊魂は、イリフトともジンとも呼ばれる。
人間の死は、肉体からの霊魂の分離であり、死の天使が、人間の肉体から霊魂を抜き取ることによって、人間に死が訪れるのだ。
また、人が死ぬと霊魂は頭から鳥となって離れるのだとも。
死者の霊魂は、復活の日まで鳥の姿をしている。
信心者の霊魂は、緑色の鳥の姿を、
不信心者の霊魂は、黒い鳥の姿をしている。
墓地でたくさんの小さな緑色の鳥をみると、それはそこに埋葬されている死者の魂である。
また、霊魂が犬や猫になることもあるのだ。
双子の場合は、死ぬと霊魂が猫に乗り移る。
また、霊魂は、木曜日か金曜日に、親類や友人の墓を訪れる。つまり、死者の霊魂が墓に戻ってくるのだ。
木曜日に死者が生きてきたときの自分の家を訪れることもある。
だから、その日は喧嘩するなと言われる。
なぜなら、戻ってきた死者が自分の家族が幸福でいることを見たがるからだ。
人の霊魂は、ナフスとルーフの2つがある。
ナフスは、眠っているときに一部が、そして、死ぬときに完全に消滅する。
つまり、その霊魂は、人が眠っている間にも、肉体から離れることがあるのだ。
眠りと死は兄弟なのだ。
もう一つの存在、ルーフは、生きている間は身体に付随し、死んだときに離れるが、それは存続するのだ。
このルーフは、風であるとも考えられていて、幽霊は風のかたちをしているのだ。
なんだか、よくわからない話です。
子供の私が理解できず、このような聞き取り内容になってしまったものと思われます。
実際に、イスラム教における幽霊、霊魂についての考えがこのようなものであるかどうかは不明です。おそらく、間違っているのでしょう。
ここでは、じじいのロシア人がイスラム教徒である(と考えられる)アゼルバイジャン人から聞いた話だ、ということで紹介しました。




