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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・売った妹

石じじいの話です。


じじいが、竹製の()を商う高齢の女性から聞いた話だそうです。


門付けの姉妹がいました*。

彼女たちは孤児でした。

町や村の人々には嫌われて、石もて追われることが多かったそうです。

寺のお堂の床下などで夜を過ごそうとしますが、人々は火事を恐れて、火を使うな出ていけと彼女たちを責めます。

もちろん、子どもたちにも、激しくいじめられました。

何度も死のうと思ったのですが、妹を見ると思いとどまったそうです。

しかし、どうしようもなく苦しいので、妹を人にもらってもらおうと思いました。

妹は、なかなか美人だったから貰い手があるだろう考えたのです。

ある農家に妹を売りました。

お姉さんは、お金が欲しかったのです。

妹は、この家で食べさせてくれる。

このあと、妹は売春宿のようなところに売られるかもしれないが、餓死をするよりはましだろう。

私は、このお金でご飯が食べられる。

妹と別れたあと、お姉さんは、死ぬこともできずあちこちをさまよいました。

そうして、長い年月をへて、とうとう、病気になって行き倒れになったのです。

もう、これで死ぬかと思いましたが、目を覚ました時には布団に寝かされていたのです。

そこは、大きな町屋敷の座敷でした。

状況がつかめず、横になったまま、まわりを見渡していると、若い女性が入ってきました。

その女性は、いきなり「おねえさん、会いたかった」と泣きながらすり寄ってきました。

お姉さんは、面食らいましたが、もしかしたら、この女性が小さい時に農家に売った妹かもしれない、と思ったそうです。

いや、そう思いたかった。

その女性は美人なので、妹かもしれない。それに、どことなく妹の面影があるようだ。

お姉さんは、生活が苦しかったとはいえ、おまえを売ってしまったのは悪かったと謝罪しました。

その女性は、そのことを怒りもせず、会ったこともない母親のように世話をしてくれたそうです。

その部屋は、屋敷の奥まった離れで、とても静かでした。

妹の親身の看病のおかげで、お姉さんの体調は回復しましたが、彼女は妹と別れようと決心したのです。

今さら、自分がぬけぬけとやって来て、妹に迷惑をかけることもあるまい。

一度、妹を捨てた私だ、縁が切れてるのだ。

この家の他の人たちは、この女性が私の妹であることを知っているのだろうか?

もし、それを知っているのなら、彼らと妹の関係が悪くなるのではないか?

まだ、会ったことがない、この屋敷の人々と妹のことを心配したそうです。

彼女は、彼女の決意を妹に伝えました。

妹は、姉を懸命におしとどめようとしましたが、お姉さんの決意はかたかったのです。

あきらめた妹は、家人を呼んできました。

お姉さんは今までの温情に感謝し、とくに、妹である女性の仁愛を讃えたのです。

家人が顔を見合わせて言うには、「そんな女性はうちにはいないよ。」

あなたを世話したのは、私たちであり、そのような女性ではない。

そのような女性はこの家にはいないし、いたこともない。

お姉さんは、混乱してとり乱しそうになりましたが、なんとか堪えました。

彼女は、後ろ髪を引かれる思いでその家をたちさり、二度とその町には寄りつかなかったそうです。

「その後も、わたしは放浪の旅を続けて、今では、こうしてミを作り売って、町から町へと渡り歩いています。でも、あれから、妹らしき女性には出会わなかったし、そのような噂も聞きませんでした。今でも、妹は私の支えであり、私の罪なのです。」

その女性は、じじいに竹細工の小さな盛り籠をくれました。

じじいは、その盛り籠に、お菓子を入れて私に食べさせてくれました。

*以前に、似たような話を書いたことがあります。門付の姉弟が流浪の生活をしていたが、弟が、ある農家にもらわれることになった。

弟は、姉と別れるのは嫌だと泣きましたが、まわりの人が言うには、「お前に姉などいない。ずっと一人だったじゃないか」、という話です。

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