石じじいの話:望夫石
石じじいの話です。
これは、有名な話です。
ご存知のかたも多いでしょう。
恋人に死なれた女性が、その男性を慕うあまり、石になったという話があります。
望夫石という伝説です。*1
じじいは、望夫石をじっさいに見たことがあったそうです。
ある女性が、日露戦争で戦死した夫を慕って、近くの山にのぼって泣き嘆いていました。
家人も、彼女のことを哀れに思い、それを咎めることはできませんでした。
その日も、彼女は、山に行ったのですが、夕方になっても家に帰ってこなかったのです。
心配して暗いなか探しても見つからない。
次の日、明るくなって山を探すと、彼女が石になっていたというのです。
それは、完全な石像ではなく、どことなく人の体に似ている、とても硬い真っ赤な石でした。
婦人がしゃがんでいるように見える石でした。
表面は風化もせず、なめらかで、加工された形跡もありませんでした。
苔むしてもおらず、昔からあった石とは思えなかったそうです。
じじいは、その石を見たのですが、それは、珪石と呼ばれる岩石で、その周辺に分布するものではありませんでした。
真っ赤な「彼女」は、地域の人々によって祀られ、おまいりに訪れる人も多かったそうです。
*1 「老女化石譚」です。
これは、ひろく知られている話です。
じじいが、それを改変して、自分の経験として私に話してくれたのかもしれません。




